はじめに
近年、いわゆる「異常気象」が各地で起きていますが、その特徴的な現象としては、猛暑、台風の頻発と長期化、竜巻、ゲリラ豪雨、少雨、大雪などが見られます。これらの「異常気象」は、温暖化が一因とも言われています。けれども現時点では必ずしも地球温暖化が、それらの要因と言う確証は得られていませんが、その可能性の大きいことがほぼ認められています。 地球温暖化による具体的な影響としては、海面水位の上昇、台風・旱魃などの極端な気象現象の頻発とその強度の激しい変化、気候変動、森林・生態系の変化、水資源の枯渇、洪水・高潮の頻発、土壌の高塩分化による農作物への影響などがあります。 また健康への影響としては、熱波など温度上昇による循環器系・呼吸器系疾患や極端な気象現象の頻発による傷害や死亡などの損害、さらに生態系や媒介動物、伝染病寄生体の活動や生息範囲の変化により病気や伝染病が発生し、アレルギー疾患などが多くなり、マラリアなどの熱帯系の病気も発生する危険が予測されています。 そこで今回はこうした最悪の事態にならないようにするために、家庭の中で省エネを行ってCO2排出削減に寄与するにはどうすればよいか、について学習したいと思います。 地球温暖化対策が重要な理由 ところでいわゆる「環境問題」と言われる事柄には、図―1に示すように多くの事象があります。しかし、多くの環境問題の中でも「地球温暖化現象」は、人類はもとより地球に住む生き物にとってに破壊的な影響を与える現象であり、最重要の課題として早期の解決が求められる事象は他にありません。 図-1 環境問題の構図(人間活動と環境問題) 出典:藤井卓、「環境にやさしいコンクリート」、鹿島出版、2001年 なぜなら「温暖化現象」は、温室効果ガスの排出を止めても、すぐにはもとの状態には戻らない不可逆的現象だからです。また、「温暖化現象」は全地球規模で発生するので、自分だけあるいは特定の地域だけが、その影響を免れると言うことができません。しかも、地球上のすべての生きものの次世代以降への長期間にわたる影響は避けられません。 これらのことが、いわゆる「公害」と言われた工場排水とか自動車排気ガスなどの環境問題とは大きく違う点です。さらに悪いことに「地球温暖化現象」は、現在の最先端の科学技術を以てしても、まだまだ不確実な事柄が多いと言うことです。こう言う「不確実」な「不可逆的現象」の影響を受ける状況の中にあって、我々に必要なことは、やはり何と言っても「安全側の行動」をとると言うことだと思います。つまり元に戻ることのできない最悪の事態を避けるために、もしかしたら「ムダ」かも知れないけれども、最善を尽くすことだと思います。そのために家庭でもできることが沢山あります。 エネルギーの種類と省エネルギー 「省エネ」は「温暖化対策」そのものです。と言うのは エネルギーの種類としては、 〇化石燃料エネルギー:電気(石炭・石油・ガス火力)、ガス(天然ガス、プロパンガス、)、 石油(ガソリン、灯油、軽油、重油) 〇非化石燃料エネルギー: ・再生可能エネルギー:水力発電、太陽光発電、風力発電、地熱発電、温度差利用、バイオマス、太陽熱利用、地中熱利用、雪氷熱利用、その他 ・原子力エネルギー:原子力発電 などがありますが、 これらの種々のエネルギーのうち、省エネによって温暖化対策に貢献できるエネルギーは、燃焼によってCO2を排出する「化石燃料エネルギー」です。ですから電気、ガス、石油を節約して省エネをすることによって、温室効果ガスの排出を抑制し、地球温暖化防止対策と言う目的を達成することができる、と言う訳です。 ですが電気は、化石燃料に由来する電気だけを節約するという訳にはいかず、家庭で使う電気には化石燃料エネルギーと再生可能エネルギーや原子力エネルギーの非化石燃料エネルギーも混ざっています。けれども現在のところ電気全体に占める化石燃料エネルギーの割合は、前回のこのブログで学習したとおり88.4%(2012年)となっているので、やはり電気の節約は温暖化対策に大きな影響があると言えるでしょう。 家庭からのCO2排出割合と家電の電気消費割合 家庭から排出されるCO2の全体に占める割合は、図―2に示すように家電などから15%、自家用車から6%で合計の家計関連としては22%となっています。この割合は、産業関連の34%よりは少ないのですが、業務その他の20%を超えています。このことは家計部門の温室効果ガスの排出削減、つまり省エネがわが国の全体の温室効果ガス排出削減に大きく影響することを示しています。 図―2 CO2の部門別排出量の内訳(2011年度) 出典:国立環境研究所、「平成23年度の温室効果ガス排出量(確定値) について」2013年 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/ hrfba300000ar23o-att/honbun.pdf さらに家庭における電気製品毎の消費電力の割合は図-3のようになっていて、冷蔵庫14.2%、照明器具13.4%、テレビ8.9%、エアコン7.4%の順となり、冷蔵庫が最も電力を消費していることがわかります。 図-3 家庭における電気製品毎の消費電力の割合 出典:経済産業省 総合エネルギー調査会 省エネルギー基準部会(第17回)資料 「トップランナー基準の現状等について」(平成23年12月26日) 中部電力HP:http://www.chuden.co.jp/ryokin/information/ economy/hiketsu/chishiki1/index.htmlより 一般的に考えてエアコンが最も電力消費が大きいと思われますが、上記の調査結果では冷蔵庫の消費電力が最も大きいと言う結果になっています。しかし、上記は通年の場合であり、これが夏季となりますと図―4のように、当然ながらエアコンがトップの53%となり、冷蔵庫は2位で23%となっています。 図―4 夏の日中(14時頃)の消費電力(全世帯平均) 誠ブログ http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1107/20/news013.htmlより 冷蔵庫の省エネ対策 家庭で簡単にできる省エネとしては、以下のような方法があります。皆さんは、これらの幾つかについてすでに実行しておられることでしょう。 ①スイッチをこまめに切る→ スイッチオフで使用電力を必要最小限にして節電 ②待機電力をカット → 機器を使っていないときも消費される待機電力をカットして節電 ③冷蔵庫の省エネ → 扉の開閉回数を少なく開閉時間を短くし、詰め込まないで節電 ④照明の省エネ → 明るさや消灯時間を調節して節電!器具をLED照明器具に交換して節電 ⑤エアコンの省エネ → 設定温度を夏は高く冬は低くし、風向きを調節して節電!扇風機併用で節電 ⑥テレビの省エネ → 視聴時間の短縮、明るさ調節、主電源を切って節電 ⑦生活スタイルを見直して省エネ → シャワーの使用方法、お風呂、暖房便座、調理方法、等々を変えて節電 今回は特に「冷蔵庫の省エネ方法」について学習したいと思います。 以下は、「家庭の省エネ大事典」[1]からの引用です。(画像データから文字だけ転載し、一部加工しています。詳しくはここをクリックしてください。元のサイトにリンクしています) ************************************* 詰め込まず、開閉を減らして 省エネレッスン 熱い物は冷ましてから保存しましょう 麦茶やカレー、シチューなど、温かいものをそのまま冷蔵庫に入れていませんか? 庫内の温度が上がり、冷やすのに余分はエネルギーが消費されるのでご注意。 冷蔵庫に入れるものは? 冷蔵庫の中を整理しましょう。 ずっと前に食べ残した食品が、冷蔵庫の奥に眠っていませんか? 「とりあえず保存」は、結局食べずに捨てられることが多いようです。 また、常温で保存できるものを冷蔵庫に入れていませんか? 缶詰、ビン詰や調味料は、未開封なら冷蔵庫に入れないで! 省エネ行動と省エネ効果: ************************************* <以上で引用部分は終わりです> 上述の省エネ効果は、1台の冷蔵庫の1年間における結果です。わが国における家庭用冷蔵庫の年間出荷台数は、2001年から2013年の13年間で年間平均で約400万台[2]となっています。現在、実際に稼働している台数は、まだ調査できていませんが、冷蔵庫の耐用年数を5年としても予想される稼働台数は相当な数になると思われますので、1台当たりの省エネは僅かであっても全国レベルでは、想像以上の省エネになることは間違いないでしょう。 ちなみにわが国の総住宅数は5,759万戸、また総世帯数は4,997万世帯(総務省統計局、平成20年資料)となっていますので、1世帯に1台の冷蔵庫があるとすれば、これまた相当な省エネが可能と言うことになります。 おわりに 環境問題の多様性の中でも「地球温暖化問題」が最も重要な課題であり、わが国の温室効果ガスの排出量に占める家計部門の割合が22%と第2位であり、家計部門での省エネが温暖化防止効果の寄与に極めて重要なことを知りました。さらに家庭の電気器具のうち冷蔵庫からの排出量が最も大きいことを学習し、そのうえで冷蔵庫の省エネ方法について学び、省エネ行動とその効果についても学習しました。 今回は家庭でできる温暖化防止対策のひとつとして「冷蔵庫の省エネ」にしぼって学習しましたが、冷蔵庫の他に照明器具やエアコンも大切な省エネの対象ですので、これらについては、今後、引き続いて学習して行きたいと思います。 < 参 考 文 献 > 1.経済産業省・資源エネルギー庁のHP:(出典:「家庭の省エネ大事典」 (一財)省エネルギーセンター作成 http://www.eccj.or.jp/dict/index.html) http://www.enecho.meti.go.jp/policy/general/howto/kitchen/index.html 2.日本電機工業会、電気機器の生産見通し 資料、2013年3月 http://www.jema-net.or.jp/Japanese/data/mitoshi/pdf/2013mi_data.pdf
by wister-tk
| 2014-02-27 22:48
| 環境学習など
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