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電気自動車の時代が予想よりも早く来た!

はじめに

最近になって電気自動車の話題が多くなってきました。最も大きなニュースは、フランスが2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を終了すると発表したことでした。さらにこの発表の数日後に、イギリスがフランスと同じ内容の発表を行いました。

一方、わが国ではハイブリッド車がエコカーとして現在の主流であり、将来的には燃料電池車を究極のエコカーと位置付けているように思われます。
しかし、最近の欧米のニュースや中国の動向を見ると、わが国の動きはチョット違うのでは?と思うようになりました。そこで、改めて内外の動きを学習してみようと思い、主にインターネット上の報道を読んでみることにしました。


ところで、このブログ(ウィステリアの部屋)では、2014年10月18日の投稿記事「燃料電池車はほんとうにエコでしょうか?」において、すでに燃料電池車FCVのエコカーとしての不利な点と電気自動車EVの将来性について指摘しました。

上述のブログ記事から「おわりに」の箇所を再掲します。
なお、詳しくは下記のURLにアクセスして見てください。

  http://wisterwell.exblog.jp/20568323/

【・・・と言うことで結論はほぼ見えています。水素燃料搭載装置の安全性確保や水素燃料供給システムなどの技術開発や新規のインフラ整備を必要とする燃料電池車よりは、シンプルなメカとエネルギー利用効率の良好な電気自動車を目指して、高性能バッテリーの技術開発に全力を挙げるのがベストウェイと確信しています。

 米国ではすでにハイブリッド車をエコカーの認定から排除する方向で動いており、また欧州ではすでに電気自動車への転換を想定して技術開発が進んでいると言われています。わが国もこの方向に舵を切り国際基準に乗り遅れないよう積極的に関わって行くべきではないでしょうか。】

<図-1:HBV-FCV-EVの構造比較>
     <経済産業省資源エネルギー庁ウェブサイト>

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<図-2:真のエコカーは? - well to wheel - >
     <(財)日本自動車研究所報告書2011年3月 → Wedge2015年1月号>


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ところが最近になって電気自動車へのシフトが急激に世界の潮流になってきたのではないかと思われます。
内外の報道をみてみましょう。

★マークの説明:
 ●:出典、<・・・>:見出し、【・・・】:引用文、◆:投稿者のコメント、を表します。


1.フランス・英国の動向

●ザ・ガーディアン(英国 大手一般新聞)(2017/7/6)

<フランス、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止>
<マクロン政権の動き、ボルボが2019年からすべての車の生産を電気自動車またはハイブリッド車のみとすると発表してから1日後のこと>


【 マクロン政府は、パリ協定の下で目標を達成する野心的な計画の一環として、フランスは、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を終了すると発表した。
この発表は、ボルボが2019年以降完全に電気またはハイブリッド車を製造すると発表した1日後に発表されたもので、この決定は、1世紀以上にわたって自動車輸送を支配してきた内燃機関の終焉の始まりとして歓迎された。】


◆このようにフランスは、スウェーデンのボルボの発表の1日後に、直ちに2040年以降エンジン自動車の販売を禁止し、電気自動車EVへのシフトを表明しました。


●ロイター(ロンドン)(英国を本拠地とする通信社)(2017/7/26)

<電気自動車は勝つか? イギリス、2040年から新しいガソリン車とディーゼル車を禁止>

【 英国は2040年から大気汚染を減らすために、ガソリン車とディーゼル車の新規の販売を禁止する。これは一世紀以上にわたって依存してきた内燃機関の終わりを告げることになるかも知れない。
フランスに続く英国の措置は、もしもこの動きが世界中に広がれば、石油生産企業に打撃を与えることとなり、電気自動車の勝利につながり、自動車業界と20世紀の資本主義の象徴のひとつである自動車そのものを変革する。】


◆このように英国もフランスに続いて同様の方針を打ち出し、世界的な「ビッグニュース」として時代の変革を感じさせました。


2.ドイツはどうでしょうか?
●Carrent Life(2017/5/28)(日本 輸入車・外車情報提供メディア)
 http://current-life.com/

【ドイツ政府は4月に日本で開催されるサミットにおいて、ドイツは2020年までに100万台の電気自動車を普及させる方針を公表する。この目標を達成するため、2016年7月から10年間、電気自動車の購入に向けた補助金を導入することを発表するという。】

●日経電子版 (2017/7/26)

【 高級車に強いドイツの自動車大手、いわゆる“ジャーマン3[*]”が、電気自動車(EV)の開発に力を注いでいる。3社はEVを前提とした新しい車台を、2019~2020年にそろって投入する計画だ。EVを短距離用のニッチな車両と位置付ける日本メーカーは、EV開発でドイツ勢に引き離されかねない。メルケル首相が、エンジン自動車の販売禁止の方向に賛意を示唆した。】

*注:「ジャーマン3」とは? ダイムラー、BMWおよびフォルクスワーゲンの3大自動車メーカー

●日経電子版 (2017/8/16)

<脱ディーゼル「正しい」 独首相、英仏の販売禁止に理解>

【「方法は正しい」。ドイツのメルケル首相が欧州で広がるディーゼル車・ガソリン車の販売禁止方針を理解する考えを示し、自動車業界で話題を呼んでいる。ただ、併せて自国の雇用や産業競争力への配慮にも言及、「正確な目標年はまだ明示できない」として、英仏のような時期までは踏み込んでいない。9月に選挙を控えた自動車大国ドイツの置かれた難しい状況が浮かび上がる。(中略)

電気自動車(EV)普及との両輪もにらむ。充電インフラの整備が最重要課題だと言及し、EVシフト支援の考えも示した。もっとも英仏が7月に打ち出した2040年までの内燃機関で走る車の国内販売禁止に関しては、意味があるとしながら具体的な工程表は示したくないとしている。】


◆このようにドイツではフランスやイギリスとは異なり、EVへのシフトを示唆しながらも、メルケル首相の支持母体の一つ言われる自動車業界への政治的な配慮があるのではないかと言われています。事実、環境大国と言われながらドイツでは、2020年までに100万台のEVを普及されせる目標を掲げましたが、メルケル首相が達成できない見通しであることを伝えています。(2017/5/15)


3.ヨーロッパの他の国では?

●日経新聞(2017/09/05)
<EV、世界で200万台販売 中国がシェアトップに> (2017/6/8)

【 自動車登録の全体に占めるEVのシェアが高い国は欧州に集中する。首位はノルウェーで28.8%。次いでオランダの6.4%、スウェーデンの3.4%、フランスの1.5%、英国の1.4%などと続く。自動車大手が集まる国では、米国0.9%、ドイツ0.7%、日本は0.6%とまだ低い。主要国での最低はインドでほぼゼロだった。

ちなみにノルウェーとオランダでは、25年からガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する動きがある。ノルウェーは国内に発電コストの安い水力発電所を多く抱えており、内燃機関の車と比べても通常のコストは安くなるのが特長。国産の原油・天然ガスを国内輸送用燃料に使う比率を下げ、輸出による外貨獲得を図るユニークな国だ。オランダも沖合の洋上風力発電設備の整備を進める。発電段階からの温暖化ガス削減に取り組む。】

<図-3:マーケット別乗用車販売予測>
     <Broomberg・imacocollaboHP>

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4.米国の政策と動向は?
●IEA(International Energy Agency):
Hybrid & Electric Vehicle Technology Collaboration Programme

<米国 - 政策と法律>

連邦政府
【 連邦政府は、電動自動車EDVの米国市場を促進する政策と法律を制定している。地域社会に対して、これらの先端技術車を支援する社会資本への投資を促するために、現行法律において税額控除の改善、研究開発への投資および競争的なプログラムをとおして、先端技術車の採用を支援する新たな努力が提案されている。

2009年の米国復興・再投資法は、電気自動車(バッテリ容量に応じて、車両1台あたり2,500/7,500ドル控除)および従来のエンジン車を電気自動車に改装するためのコンバージョンキット(1台あたり最大4,000ドル控除)を購入するための税額控除を設定した。

新しい企業平均燃費(CAFE)基準[*]は、電気自動車技術の市場への参入拡大を促進する。より厳しいCAFE基準では、2012年モデル(2011年に販売を開始)の自動車と軽トラックに、前の年式の自動車と軽トラックに対する平均の25.5 mpg(マイル/ガロン)より16%高い平均燃費を要求している。CAFEはまた、2016年を超えるさらなる増加を検討中であるが、2016年に平均燃費が2011年モデルよりも33%大きくなることを要求している。】

*注:「CAFE基準」とは? 米国で販売される車に適用される燃費基準で、「CAFE(Corporate Average Fuel Economy:企業平均燃費)基準」と呼ばれています。この「CAFE基準」の特徴は、実際に販売したクルマ全体の平均燃費を算出し、それに規制をかけると言うやり方です。企業は、燃費のいいクルマをより多く販売するように生産・販売計画をたてなければなりません。


州政府とコロンビア特別区(DC)
【 米国50州のうち少なくとも47州とコロンビア特別区(DC)は、HEV(ハイブリッド車)使用を促進するための、さまざまな規制を実施している。これらの州の圧倒的多数(47のうち40)は、HEV購入に対する税制上の優遇または払戻金(リベート)制度を実施している。さらに、13州とコロンビア特別区は、自動車メーカーが2016年までに車両の温室効果ガス排出量を30%削減することを要求するカリフォルニア州の「クリーンエアー基準」を採用しようとしている。

ハイブリッド電気自動車HEVのための米州でのインセンティブの状況(2010年)は、以下のとおりである。

・HOV(High-Occupancy Vehicles:多人数乗車車)、駐車場または登録への優遇(14州とDC)
・排出量特典(10州)
・税額控除、払戻し金または助成金(40州とDC)
・購入指令、促進指令または命令(41州とDC) 】

●インサイドEV(米国 Webサイト:電気自動車EVのニュース、レビュー、レポート)                                      http://insideevs.com

<J.P.モルガン[*]は、電気自動車を広範囲に影響する破壊者として見る>(2017/9/11)
<J.P.モーガン:電気自動車は多種の産業を破壊する>


【 これまでに、関心のある人々は、化石燃料車が電気自動車によって置き換えられつつあることを理解している。しかし、進展の経過に関する意見には大きな相違がある。
石油および自動車産業で生計を立てている人々は、孫の時代にその移行が起こると見る傾向があるが、一方、EVや再生可能エネルギー分野では、2030年までにすべてが終了すると予測している。】

*注:「J.P.モルガン」とは? JPモルガン・チェースは、米国ニューヨーク州に本社を置く銀行持株会社である。商   業銀行であるJPモルガン・チェース銀行や、投資銀行であるJPモルガンを子会社として有する。JPモルガン・チ   ェース銀行は米国外を含む商業銀行業務を、JPモルガンは米国外を含む投資銀行業務を分担している。ヘッジフ   ァンド部門は米国最大で、340億ドルを管理している。(ウィキペディア)


<図-4:170911_米国EVモデル毎販売台数2016最終>
      <fleetcarma_com:ev-sales-usa-2016-finalHP>


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<新2018年型日産リーフがシアトルに到着、米国ツアーを開始する>

【 9月9日土曜日は、2つのまれなイベント?の機会であった。 まずシアトルで雨が降ったこと! (ここしばらく米国の北西部に降雨がなかった)、第2に、2018年型日産リーフ(40kWh / 150マイル+ EV)が、シアトルのデニー公園にあるナショナル・ドライブ・エレクトリック・ウィークのフェスティバルの一部として、初めて一般に公開されたことである。
リーフの技術者が、リーフに興味を持っ来訪者に車の特徴を説明したため、日産の展示会場の周りの交通が混雑した。展示されたリーフは、9月5日に開催された日産ワールド・ワイドの公開ステージで展示されたと同じ フローティング・ルーフ・ペイント・スキームを持つ白いSVモデルであった。】


<3億ドルのカリフォルニアEV補助金計画がCARB[*]スタディによって置き換えられた>

*注:CARB(California Air Resources Board)カリフォルニア州大気資源局

【 カリフォルニア州が、新しいEV払戻金計画が確立されるかどうかを知るのに、今や数年を待たなければならない。数ヶ月前に、われわれは、カリフォルニア州の追加のEVインセンティブのために30億ドルの資金を要請する法案について報告した。この法案は、販売時点で払戻金を利用できるようにすることで、低所得者層の購入喚起を目的としていた。 付加的に、この法律は、EV充電に関する施設整備のための資金の一部を、除外するかも知れない。

その後、8月下旬に法案から30億ドルが削除され、他の金も追加されなかった。当初の法案には、現行のEV払戻金制度に対する金銭的調整も含まれていた。しかしこの条文案も削除された。 代わりに、カリフォルニア大気資源委員会(CARB)は、新しいEV払戻金法案を作成し実施するための最善策の調査を義務付けるよう改正した。】


●クリーン・テクニカ (米国 世界のクリーンに焦点を当てたニュースと分析のウェブサイト)                                        https://cleantechnica.com

<米国、2017年に完全電気自動車販売47%アップした>(2017年9月9日)

<図-5 米国の電気自動車販売台数 ( 2017年1月~8月) >
< 170911_USA_EV_Sale2017byAugust
      https://cleantechnica.com/2017/09/09/usa-fully-electric-car-sales-82-2017/

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【 米国の電気自動車市場は、 もちろん、カリフォルニア州の特に強力な電気自動車市場によって主導され、昨年(2016)1年間?で急速なペースで成長を続けた。1月から8月まで、全国で電気自動車8車種の販売台数は47%増加した。 6車種のプラグインハイブリッドカーの売上高は30%増だった。全体的に見ると、これらのプラグイン車の販売台数は40%増だった。

2017年8月対2016年8月は、それほど劇的でなかったが、依然として強い成長期だった。完全電気自動車の販売台数は19%増だった。 プラグインハイブリッドの売上高は4%増だった。 全体的に見ると、プラグインの販売台数が13%増加したことになる。】


● U.S. ニュース & ワールド・リポート(米国 自動車情報サイト)

      https://cars.usnews.com/cars-trucks/best-electric-cars


<ベスト11電気自動車 >

 *注:ヒュンダイのみ通常のハイブリッド車HBV、他はすべて完全(full)電気自動車EV

【・2017 Fiat 500e: Range(1回の充電による航続距離):84 mi(マイル),111 HP(馬力),

・2017 Nissan Leaf:the best-selling EV,Range:107mi, 107 HP,(新型車:250 mi= 400Km)

・2017 BMW i3: Range:81 mi, 170 HP,

・2017 Ford Focus Electric: Range:115 mi, 143 HP,

・◇2017 Hyundai Ioniq Electric: 通常のHBV,間もなくEVとPHV,118-139 HPを発売

・2017 Volkswagen e-Golf, Range: 125 mi 170-292 HP,

・2017 Chevrolet Bolt Range: 238 mi, 200 HP,

・2017 Kia Soul EV, Range: 93 mi, 109 HP,

・2017 Tesla Model X, Range: 237 - 295 mi, 417-518 HP,

・2017 Tesla Model S, Range: 249-335 mi, 382-691 HP,

・Tesla Model 3, Range: 215 mi,この7月に市場に投入 】

  <図-6:テスラ Model 3、 Range: 215 mi、$35,000.>
  <http://s.newsweek.com/sites/www.newsweek.com/files/styles/embed-lg/public/201 6/02/11/tesla-model-3-speed-price-rumors-elon-musk.jpg


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◆米国においては、連邦政府および州政府の燃費等に対する規制と電気自動車への転換を促す種々のインセンティブが法律として施行されており、想像以上にEVへのシフトが志向されて、その実現に向かって着実に進展しているように見えます。


特徴的なこととして、バッテリー式電気自動車専門の自動車メーカーである「テスラ」の存在があります。2003年に創業したこのベンチャー企業は、テスラの「モデルS」で一躍脚光を浴び、さらに最近では一気に低価格のEVである「モデル3」を発表しました。こうしたテスラの発展ぶりは、米国のEVシフトの動向を示す象徴的な事象ではないかと思います。

こうした米国のEVシフトの流れの中にあって、日産リーフの活躍は特筆すべきものがあります。日産リーフは、EVをメインとして志向していないわが国においては、あまり存在感はないようですが、欧米での評価は高く販売台数も伸びているようです。



5.中国の動向はどうでしょうか?
●マッキンゼー・クオータリー[*] (2017年7月)
  http://www.mckinsey.com/global-themes/china/chinas-electric-vehicle-market-plugs-in

<中国の電気自動車市場はプラグインする>
<中国は、電気自動車の需要と供給の両方のリーダーとして浮上>


【 2016年に中国のOEM(相手先商標による製品の生産者)によって約37万5千台の電気自動車(EV)が製造された。これは世界中のEV生産の43%に相当する。 それは偶然ではない。 中国のOEMは2015年に40%の世界シェアを達成した。世界中のOEM(その中の中国メーカー)も2016年に中国内で約332,000台のEVを生産した。中国は現在、初めて米国のEV数を追い抜いて、道路上に最も多くのEVを走らせている。】

*注:「マッキンゼー・クオータリー」とは? マッキンゼー・アンド・カンパニーは、1926年にシカゴ大学経営学部教授のジェームズ・O・マッキンゼーにより設立された、米国に本社を置くグローバルな戦略系コンサルティング会社。全世界の主要企業を対象に、年間1,600件以上のコンサルティング・プロジェクトを手掛ける。出版事業として、ビジネス季刊誌『マッキンゼー・クオータリー』を発行している。(ウィキペディア)


●オートカー: カー・ニュース&レビュー(2017/07/05)(英国:自動車のニュースと評価のウェブサイト)
https://www.autocar.co.uk/car-news/new-cars/insight-why-demand-china-spurring-growth-electric-car-sales

<なぜ中国の需要が電気自動車販売の成長を促進しているのか>

【 欧州と米国での電気自動車の受け入れ方は依然として微妙だが、中国の電気自動車化への動きは、今後数年間に新しいモデルの洪水を引き起こすように設定されている。
開発の背後にある真の原動力は、「中国で起こっている」と言うことと、電化ハイブリッド車や純粋な電気自動車の販売に対する巨大な可能性である。 このことはビジネスの良い面ばりではなく、 EVに対する中国の動きを無視し、また、技術戦に敗れることを恐れている既存の自動車メーカーが、この戦いに敗れた場合は、他の弱いマーケットに進出して生き残れるかも知れない。】


 <図-7:BYD Qin EV300>、300 km (186 miles) 、215HP、$47,821.>
   <https://www.topspeed.com/cars/byd/2016-byd-qin-ev300-ar172932.html

 

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  競争相手は、テスラ Model 3と日産リーフだと言う。

●ウィキペディア(英語版、ネット百科事典)                        https://en.wikipedia.org/wiki/New_energy_vehicles_in_China

<中国の電気自動車>
<中国政府の政策とインセンティブ>

【 中国政府は、2009年に現在の自動車技術を飛躍させる計画を採択し、完全電気自動車およびハイブリッド車の製造における世界のリーダーになるために、成長している新エネルギー車(NEV)市場を確保する。

電気自動車の採用に対する中国政府の政治的支援は、4つの目標を持っている。すなわち雇用と輸出を生み出し世界をリードする産業の創出、 中東からの石油依存を減らすためのエネルギー安全保障、 都市の大気汚染の軽減、そして炭素排出量の削減である。
中国政府は、プラグイン電気自動車(PEV:Plug-in Electric Vehicle)を表すのに新エネルギー車(NEV:New Energy Vehicle)という用語を使用している。

中国政府は、2008年の2,100台を超えて、2011年末までにプラグインハイブリッド車または完全電気自動車とバスの年間生産能力を50万台に増加させる目標をたてた。

2012年6月、中国国務院は、国内の省エネルギーおよび新エネルギー自動車産業の開発計画を発表した。この計画では、2015年までに50万台の新エネルギー車の販売目標を設定し、2020年までには500万台の販売目標を設定した。補助金は、中国の未解決問題である大気汚染に対処する政府の取り組みの一環である。】


●日経新聞(2017/09/05)

<EV、世界で200万台販売 中国がシェアトップに> (2017/6/8)

【 国際エネルギー機関(IEA)は7日、電気自動車(EV)などの世界累計販売台数が2016年に約200万台に達したと発表した。政府が環境規制を強化している中国の伸びが大きく、米国を抜いてEVの世界シェアトップに躍り出た。自動車全体の中でのEVのシェアは0.2%にすぎないが、20年には累計2000万台に増えるとの予想もあり急速に市場が拡大している。

<中国16年倍増、世界シェア3割>

IEAがEVの国際的な普及団体などと組み、世界のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の台数を集計した。16年の累計台数は前年比6割増えて過去最高を更新。世界の中でも中国は65万台と倍増し、米国の56万台を追い抜いた。中国の世界シェアは前年の25%から32%に上昇した。

中国政府は大気汚染への対応などからEVなどの普及に力を入れる。EVなどの「新エネルギー車」の販売義務付けも始める計画だ。日産自動車の中国合弁である東風日産乗用車が中国専用EVを発売するなど、各国のメーカーが販売競争にしのぎを削る。11年には中国のEV台数はわずか7000台だったが、14年以降急速に拡大。中国政府は20年までEV支援策を続ける方針で、普及の勢いは今後も続きそうだ。】


●日経新聞(2017/09/12)

<中国、ガソリン車禁止へ 英仏に追随、時期検討>

【 中国政府はガソリン車やディーゼル車の製造・販売を禁止する方針だ。英仏が7月に2040年までの禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入った。電気自動車EVを中心とする新エネルギー車(NEV)に自動車産業の軸足を移す。世界最大の自動車市場である中国の動きは、大手自動車メーカーの成長戦略や世界のEV市場に影響を与えるのが確実だ。】

<図-8:各国のEV・PHVの販売台数推移>
     <https://car.autoprove.net/2017/08/50563/


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◆中国では、主に大都市における大気汚染の防止と石油輸入の削減と言うエネルギー安全保障の観点から、EVへの転換を強力に推進しているように見えます。すでにEVの販売台数において世界のトップとなり、車種のバラエティも豊富なことから輸出台数も今後伸びるものと推測されます。

つい最近、中国もフランスや英国に続いて内燃エンジン車の製造・販売の禁止を検討を開始しました。EVの生産・販売台数で世界のトップを行く中国が、こうした積極的な政策を推進することにより、わが国の自動車メーカーを含めてこの潮流に逆向することは難しいと思われます。


6.インドの状況は?
●CNN tech (2017/6/3)
http://money.cnn.com/2017/06/03/technology/future/india-electric-cars/

<インドは2030年までに電気自動車だけを販売する>

【 米国は歴史的な「パリ協定」から離脱しようとしているが、インドは、2030年までに電気自動車だけの販売を開始する、という大胆な決断を下している。
インドは世界で最も汚染された国のひとつである。 エネルギー省は、空気をきれいするために、ガソリン動力車の販売を止めるための「野心的な」目標を掲げていると発表した。

インドのエネルギー大臣は、この国がここ数年間は補助金を提供して電気自動車の取り組みを促進することを、最近発表した。「その後は、電気自動車のコストは、補助金なしで採算が取れるようになる」と大臣は述べた。政府の電気自動車計画は、2020年までに電気自動車とハイブリッド車の年間販売台数が、600万~700万台になることを予定している。】

<図-9:世界販売台数国別シェアー>
      <日経Automotive2014_1月号>


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◆中国とインドの動向に関して最近大変興味あるニュースがありました。世界の自動車メーカーがこぞってEVへの転換を図っている背景には、中国やインドの影響があると言うのです。すなわち、英ジャガー・ランドローバー(JLR)とインドのタタ自動車が「英国・インド連合」を形成し、また、ボルボと中国・浙江吉利控股集団が「スウェーデン・中国連合」を組んで、EV市場を攻略する戦略が着々と進んでいると伝えています。以下にその記事を引用してみます。


●日本経済新聞 電子版(2017/9/8)

<中印が描く「一気にEV」 ジャガー、ボルボの背中押す>

【 世界の自動車大手の電動車シフトの流れが止まらない。英ジャガー・ランドローバー(JLR)は7日、2020年以降に販売する車はすべて電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)にすると発表。ボルボ・カー(スウェーデン)もJLRと同じ計画を持つ。年間販売台数が100万台に満たないJLRとボルボがそろって戦略転換した背景には、親会社の中国、インド大手による名門ブランドを使った「一気に電動車戦略」もある。】
(詳しくはこちらをご覧ください:
 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08H81_Y7A900C1000000/?n_cid=NMAIL005

7.日本の動向はどうでしょうか?

●経済産業省の方針(2016,03/23 News Release)

【 電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の普及に向けて、「EV・PHVロードマップ」をとりまとめました。

幅広い関係者で構成される「EV・PHVロードマップ検討会」では、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)の普及に向けて必要な車両と充電インフラ等が連携した戦略を検討してまいりました。今般、検討結果が「EV・PHVロードマップ」としてとりまとめられましたので、公表します。

1.開催の背景・目的
「日本再興戦略改訂2015」においては、「2030年までに新車販売に占める次世代自動車の割合を5から7割とすることを目指す」とされています。「EV・PHVロードマップ検討会」では、この目標の達成に向け、次世代自動車のうち、燃料電池車FCVとともにCO2排出削減効果が高く、災害対応等の新たな価値も期待できるEV・PHVについて、今後5年(~2020年)に必要となる戦略を検討しました。
経済産業省としては、「EV・PHVロードマップ」を、別途とりまとめられた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」のうちFCVに関連する部分とともに、今後の次世代自動車戦略の柱としてまいります。

2.「EV・PHVロードマップ」の概要
・2020年のEV・PHVの普及台数(保有ベース)を最大で100万台とすることを新たに目標として設定。( 2016年2月末のEV・PHVの累計販売台数は約14万台)】


●日経新聞(2017/09/05)

<EV、世界で200万台販売 中国がシェアトップに> (2017/6/8)
<20年に累計2000万台の予測も>

【 EVやPHVの開発を巡っては、三菱自動車が、世界初の量産電気自動車(EV)「アイ・ミーブ」を発売するなど、当初は日本勢が先導してきた。足元では海外勢が存在感を高めている。米EVメーカーのテスラが急成長し、ゼネラル・モーターズ(GM)の「ボルト」などの販売も伸びている。

EVで出遅れていたトヨタ自動車は、2020年までにEVの量産体制を整えて本格参入する方針を示した。フォルクスワーゲン(VW)、BMW、ダイムラーのドイツ勢は2025年時点で新車販売の最大25%をEVにする計画。自動車大手だけでなく、部品や電池大手を巻き込んだ競争は激しくなる。

IEAが調査会社の予測をまとめると、20年時点で累計900万~2,000万台まで増えるという。最も保守的な予測でも今の4倍以上と成長率は高い。

 大きな課題は急速充電設備の整備だ。先行するノルウェーではEVの台数が急拡大したのに、充電拠点が追い付いていない地域もある。電力は貯蔵が難しいのも難点だ。IT(情報技術)による需給予測や分散型の風力・太陽光発電を組み合わせ、効率的に電力を供給する体制を築くかも課題になる。EV開発の裏側で、EV向け電力供給を巡るビジネスも成長しそうだ。】


<図-10:世界でのEV、PHEV販売台数データ(2015年年間ランキング)>
     <https://www.hyogo-mitsubishi.com/news/data20160217153000.html


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◆わが国では、経済産業省が2020年までの戦略として、従来からの戦略車種としての水素・燃料電池車FCVに、電気自動車EVとプラグインハイブリッド自動車(PHV)を加えて、今後の次世代自動車戦略の柱とするとしています。FCVについてはすでに述べたように今後の主要な戦略車種にはなりえないと思われます。またPHVについてもあくまでにも基本的には内燃ガソリン車ICVですので、EVの競争相手ではないと考えられます。

一方、わが国の自動車産業では、ヨーロッパや中国等の動向を踏まえて内燃エンジン車ICVからEVへの転換を早期に図ろうと言う動きが急速になってきました。少々遅きに失した観はありますが、早期に追いつき追い越して欲しいものと期待しています。


8.今後の動向は?

「2017年電気自動車展望」(Bloomberg New Energy Finance:HP 2017/8/25)によると、今後のEVの動向が以下のように示されています。
https://about.bnef.com/electric-vehicle-outlook/

●【1.電気自動車が新車販売の大半を占める:EVは、2040年までに新車販売台数の、以前に予  測した35%ではなく、  54%を占めると考えている。

2.バッテリーの価格の低下がEVの伸びを加速:リチウムイオン電池の価格が急騰するために、電気自動車の実際の 生産活動は2020年代後半に起こり、リチウムイオン電池の価格は、2030年には70%以上も下がるようになる。

3.オイルの置換量が増加する:2040年までに、EVは1日あたり800万バレルの輸送用燃料を減少させるが、一方で世 界の電力消費量を5%増加する。】


<図-11:車種別乗用車販売台数予測2050年>
    <http://sgforum.impress.co.jp/sites/default/files/image/sgnl201512_04zu3.png

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<図-12:世界の乗用車販売予測>
   <Broomberg New Energy Finance (imacocollabo Website)
     https://imacocollabo.or.jp/wp-content/uploads/2017/07/795316b92fc766b0181f6fef074f03fa-1.png

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<図-13:EVとICVの価格比>
   <Broomberg New Energy Finance (imacocollabo Website)
       https://imacocollabo.or.jp/blog/2017/07/12/sdgs-case-0712/


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●日本経済新聞 電子版(2017/9/6)

<価格・距離・充電設備 EV普及占う新型リーフ >

【 日産自動車は6日、電気自動車(EV)「リーフ」の新型を、10月2日に日本で発売すると発表した。1回の充電で走れる距離は先代の4割増の400キロメートルに伸びた。価格は約315万円からで、補助金の分を引くと実質275万円から。環境への関心が特別に高くない「普通の人」でも、購入の選択肢にしそうな水準だ。リーフがEV普及の扉を開くのか。課題は何か。】

  <図-14:新型「日産リーフ G」>
  <https://newsroom.nissan-global.com/releases/release-5f454556692dea59782a3ffa3e05eabd-170906-01-j?lang=ja-JP


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●日本経済新聞 電子版(2017/9/8)

<中印が描く「一気にEV」 ジャガー、ボルボの背中押す>

【 世界の自動車大手の電動車シフトの流れが止まらない。英ジャガー・ランドローバー(JLR)は7日、2020年以降に販売する車はすべて電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)にすると発表。ボルボ・カー(スウェーデン)もJLRと同じ計画を持つ。年間販売台数が100万台に満たないJLRとボルボがそろって戦略転換した背景には、親会社の中国、インド大手による名門ブランドを使った「一気に電動車戦略」もある。
(中略)
7日にはSUBARU(スバル)も2020年度めどにディーゼル車から撤退する方針が明らかになった。販売台数100万台以下のメーカーは研究開発資金が限られ、EVなどに車種を絞り込む動きは続きそうだ。SUBARUはトヨタ自動車との資本提携で、日本勢同士で業界で生き残る手を打った。マツダも8月にトヨタとEV共同開発などで合意済み。これも「日本連合」だ。】


●日経ヴェリスタ (2017/09/17)

<新・クルマ革命の覇者 自動運転・EV…デバイスが導く>

【今、クルマ産業には4つの変革の波が押し寄せている。コネクテッド(つながるクルマ)、オートノマス(自動運転)、シェアリング、エレクトリシティー(電動化)で、頭文字をとり「CASE」という。CASEは構造転換をもたらす。電気自動車(EV)では米テスラなどが勢力を伸ばし、EV普及でクルマのコモディティー化[*]も進む。自動運転では人工知能(AI)をつくるIT企業が主導権を握り、シェアリング普及で車販売も落ちる。既存の車大手にとっては逆風となる半面、構造転換で存在感を増すのが電子部品や半導体などデバイスだ。株式市場では完成車株を売り、デバイス株を買う動きも出始めた。】

  *注:「コモディティー化」とは? 市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差のない状態のこと(ウィキペディア)

  <図-15:自動車産業を変える"CASE">
           <日経ヴェリスタ(2017/09/17)>


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◆海外の自動車業界が、急速にEVへシフトする趨勢のなかで、わが国の大手自動車メーカーもEVへの転換を始めたようです。ハイブリッド車(HBV)は、欧米ではすでにエコカーの指定から外されており、また国際基準を目指したと思われる燃料電池車(FCV)もEVの敵ではなくなりつつあります。

ノルウェーやオランダでは2025年までにガソリン車の販売が禁止される予定で、フランス、イギリスそしてドイツがそれに追随しています。アジアでは、インドで「30年までに販売する車をすべてEVにする」と担当大臣が発言しており、中国は世界で最も電気自動車の販売台数が多い国となっています。中国、アメリカ、ヨーロッパで自動車販売に占めるEVの比率は60%を超え、2030年以降もプラグインハイブリッド(PHEV)が一定割合販売されると考えられている市場は日本だけと言われています。

自動車業界を一変させると言われる「CASE」が、次世代の自動車産業の勢力図を占うと言うことで話題となっています。トレンドを示す4つのキーワード、すなわち「コネクテッド、C」、「オートノマス:A」、「シェアリング:S」、「エレクトリシティー:E」の頭文字を取ったものですが、重要なのはこれらが相互に関連していて、その要となるのが最後の「E」、つまりエレクトリシティー:電気だと言われています。


おわりに

最近、電気自動車EVの話題が多くなってきたので、改めて世界の状況を概観し欧米での対応や日本を含むアジアの国々の動きを、内外のネットや新聞等からナマの情報を集めて学習してみました。

従来の内燃車ICVに比べてEVの環境負荷が著しく低いことを理解すると同時に、技術面においても価格競争の点においても近い将来において、EVがガソリン車などの内燃車ICVを超えるのではないかと言うことが、容易に推測されました。

約1年前の予測では、2040年の世界の自動車販売に占めるEVの比率は35%でしたが、今年、2017年での予測数値は54%と19%も上昇しています。このことは、EVの普及が過去の予測を超えるスピードで進んでおり、技術革新、政策の動向によっては、今後そのスピードはさらに早まる可能性もあると思われます。

例えば、バッテリーの技術開発が進展して、1回の充電での航続距離が大幅に向上し、最近発表された日産リーフの新型車では、400kmとなっています。また販売価格の面でも補助金制度の有効活用等もあって低下の傾向にあります。

最近の動きとしてドイツのダイムラーが、米国でEV生産のための工場に10億ドルを投資し、2020年にはSUV型のEVを量産すると発表しました。さらにバッテリー生産の新工場を作り、ヨーロッパと中国それに米国の3地域を連携した体制を構築し、「EVシフト」を加速させようとしているとのことです。

また、フランスや英国が、2040年には内燃車ICVの販売を停止すると発表したのに対して、中国ではガソリン車が2030年には禁止になると予想されています。

このように最近の状況を学習した結果、世界におけるEVへのシフトが急速に進行していることが、改めて解かりました。「電気自動車EVの時代」が、予想よりもはるかに速く来そうな予感がします。
                      以上


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by wister-tk | 2017-09-24 17:10 | 海外の情報

COP20はどうなったか?

はじめに
地球温暖化対策を検討するCOP20(国連の気候変動枠組条約第20回締約国会議)が、2014年12月1日から14日までの日程で、ペルーのリマで開催されました。COP20では、京都議定書に代わる2020年以降の新たな国際的なルールづくりについて協議が行われたのです。結果はどうなったのでしょうか?COP19からの経緯を踏まえて学習したいと思います。

1.COP19での合意とその課題
(1)新たな国際枠組みの構築
2013年11月にポーランドのワルシャワで行われたCOP19(このブログの2013年12月30日号を参照してください)では、最大の課題である「新たな国際枠組みの構築」に関して、焦点だった「自主的削減目標」については、当初、EUが2014年、日本および米国が2015年、途上国が2015年以降と言った提案をしていましたが、結局、COP19では「削減目標の基準年」や「達成の時期」については議論されず、COP20に先送りされました。
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(2)支援資金に関する決定
 COP19では、途上国が、温室効果ガス削減の目標を達成するために必要となる資金の支援要請に対して、先進国は2014年の早い時期に途上国に目標設定のための資金を支援することを約束しました。途上国への資金の支援については、既にコペンハーゲン合意(2009年、COP15、デンマーク)・カンクン合意(2010年、COP16、メキシコ)で、2020年までに支援資金を拠出すると言う合意に基づいて、作業計画を策定することがCOP19での焦点のひとつでした。しかし、途上国の求める目標設定に対して先進国の多くはこれに強く反対したため、問題はCOP20へ持ち越されました。

(3)気候変動による損失と損害
気候変動による「損失と損害(Loss and Damage)」に対する対策は、貧困国や気候変動の影響を著しく受ける脆弱な国々(島嶼諸国など)が、以前から強く促進を求めている課題であり、2012年のCOP18の「ドーハ合意」において新たな制度的メカニズムを創設することが決定されていました。COP19ではそれを受け、温暖化に伴う自然災害による「損失と被害」に対処する「ワルシャワ・メカニズム」と呼ばれる新たな専門組織を新設し、そしてその執行委員会を創設することに合意しました。しかし、損失と損害を著しく受ける国々の要求に対する具体策は先送りされました。
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           <出典:COP20ホームページ>

2.COP20での合意事項
(1)新たな国際枠組みの構築
(a) 2015年合意文書案:
2015年のCOP21で議論し採択するための新枠組みの「2015年合意文書案」(「新たな枠組みの交渉テキスト案の要素」)を2015年5月以前に作成すること
(b) 排出削減目標:
各国は、温室効果ガスの排出削減目標を「COP21までの十分早い時期に、出来れば3月までに」提出すること、また2020年以降の各国の排出削減目標を提示する際に提供する情報の内容等を定めたCOP決定を、「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for Climate Action)として採択
(c) 排出削減目標の引き上げ:
2020年までの各国の排出削減目標の引き上げについて、「専門家会合」による後押しの制度化等を目指し検討したが合意出来ず
(d) 報告書の公表:
事務局は2015年10月1日までに提出された排出削減目標を分析し、11月1日までに報告書を公表すること
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(2)支援資金に関する決定
先進国から途上国への資金支援の見通しを明らかにすることが検討され、途上国への資金支援として緑の気候基金の拠出額が100億ドルを超え、これを歓迎する旨のCOP決定を採択
(3)気候変動による損失と損害
「気候変動による損失と損害」については、COP19 で設立に合意した「ワルシャワ国際メカニズム」の執行委員会の2カ年作業計画、委員構成および手続きについて合意

3.日本の立場
COP20で会議をリードした米国や中国などとは対照的に、日本はほとんどその存在感を示すことが出来なかったと報じられています。COP20の主要な議題は、排出削減目標の策定にかかわるものでしたから、福島第一原発の事故以来、わが国の新たなエネルギー政策の策定が放置された状態のなかで削減目標など策定できるはずもなく、EU等の閣僚から2015年3月までに目標を示すよう催促されるなどの醜態をさらす結果となったようです。

これは明らかにわが国のエネルギー政策、とくに原発政策や再生可能エネルギーを含めたエネルギー構成が確立されていないことに起因していることは明らかです。この事態は既にCOP19において顕在化していて、将来への向けたエネルギー政策の早期の確立が求められていたことでした。COP20の合意においては、削減目標をCOP21までの十分早い時期に提出すること」とし、また「事務局は2015年10月1日までに提出された排出削減目標を分析し、11月1日までに報告書を公表すること」としています。さらに先進7か国(G7)首脳会議が6月に予定されていますので、遅くとも6月までには削減目標を提出しなければならないことが指摘されています。

わが国は世界における主な排出国の一員であり、しかも排出ガス削減の技術においても世界に貢献しなければならず、京都議定書の場合のように新たな枠組みの構築においても、リーダーシップを取らなければなりません。そのためには削減目標を早期にしかも高い目標レベルで提示し、今後の交渉を有利に進めることが必要と思われます。

おわりに
COP19の合意事項を復習し、またその残された課題がCOP20でどうなったかを学習しました。さらに日本が排出削減目標の提出に遅れをとっており、国際社会における存在感が一段と薄れている状況も理解できました。かって「京都議定書」を提示して世界をリードし、25%削減を宣言した当時の勢いは今はありません。

他の国の温室効果ガスの排出削減目標案としては、米国が26~28%(2025年に2005年比で)、EUは40%(2030年に1990年比で)、ロシアは25~30%(2030年に1990年比で)、その他、スイス50%、ノルウェー40%、メキシコ22%などとなっています。COP19以降の日本が提示している当面の目標値は、3.8%(2020年に2005年比で)としていますが、当然のことながらまったく問題にならないことは明らかです。環境省部内では米国並みの26~28%程度でなければ、他国の納得は得られないのではとの懸念が示されているとのことです。ちなみに他国が日本に求めている削減目標の数値は、2030年に2010年比で30%程度と言われています。

日本が実際にどれだけ排出削減目標を設定できるかの試算では、エネルギー構成比率や省エネ推進の程度によって結果は異なり、2030年に1990年比で10~70%と大きな開きのあることが知られています。気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に抑えると言う国際目標の達成に貢献できるよう、わが国もエネルギー政策を早期に確立し削減目標を確定することを期待したいものです。

<参考文献>
1.COP20ホームページ:<http://www.cop20.pe/en/>
2.環境省:国連気候変動枠組条約第20 回締約国会議(COP20)京都議定書第10 回締約国会合(CMP10)等の概要と評価、2014年12月14日 <https://www.env.go.jp/press/files/jp/25615.pdf>
3.環境省地球環境局:COP20の結果及び日本政府の対応、2015年1月 
<http://www.o-cdm.net/network/activity/occf/occ2014/occ2014-2.pdf>
4.国立環境研究所ホームページ:<http://www.nies.go.jp/event/cop/cop20/20141214.html>
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by wister-tk | 2015-01-25 20:52 | 海外の情報

中欧を旅して思うこと(主に環境の観点から)[続き]

ホテルについて
海外旅行での楽しみのひとつにホテルの宿泊があります。旅行会社がランク付けしているグレードの呼び名は、一般にスタンダード、スーペリア、デラックスなどです。一方、ホテル自体が表示しているグレードは星の数です。三ツ星、四つ星、五つ星などがあり、最高グレードが五つ星です。この星の数がなかなか曲者です。四つ星以上のホテルでもバスタブがなかったり、お湯が錆色していたり、時にはお湯が出なかったり、天井から水が漏れてきたこともありました。ですからホテルではチェックインして部屋に入ったら、何よりもまず水回りをチェックすることを習慣にしています。

旅行の出発前にホテルが決まった時点で、早速ネットからそのホテルの情報を取得します。ホテル全体の施設と客室の設備やサービス品の内容です。かっては固形石鹸、シャンプー、リンス、ボディーソープ、シャワーキャップ、安全カミソリ、スキンローション、その他、いわゆるアメニティーと呼ばれるサービス品が豊富でした。しかし、最近はシャンプーとボディーソープ兼用の固定式のボトルが1本、と言うのが一般的となっています。

またタオルの使用については以前からそうなのですが、連泊の場合は交換しないことを原則とし、交換を希望するときはタオルをバスタブに入れておくと言うことになっています。部屋にはその旨のお知らせが貼ってあって、環境への負荷の低減が目的であることを説明しています。ただ面白いことに廃棄物の分別については、あまり徹底していないようでした。たまたま今回私たちが宿泊したホテルがそうだったのかも知れませんが、この点については北欧のホテルでは徹底した分別が行われていたのを思い出しました。

環境とは直接は関係ないのですが、今回の旅行で初めてタブレットを持参したので、その報告をしたいと思います。現地での天気予報や観光情報を得るためと、自由行動の時間に歩き回るときのナビ、それにメールの送受信がタブレットの主な使用目的でした。モバイルルーターはレンタルしました。予想以上に大変便利で当初の目的を完全に達成しました。バスで移動するときもナビを利用すると周りの地理がよく理解でき、ガイドさんの説明と併せて大変情報量が多く、快適な楽しい旅行となりました。

今回旅行した4か国のWi-Fi事情は、必ずしも良好とは言えないようですが、4つのホテルで一応無線LANが使える状態でした。しかし、ホテルによって対応が異なり、ブダペストのホテルではロビーで無料接続、客室では有料(1時間6ユーロ、24時間12ユーロ)、プラハとザルツブルクのホテルでは全館で無線LANが無料、ウィーンのホテルではロビーのみの無線LANが無料、しかし速度が大変遅いとの口こみでした。

とにかくプラハとザルツブルクでは、ホテル内での通信は大変快適でした。残念ながら市街地で無料Wi-Fiのトライアルは出来ませんでした。ホテル以外では、もっぱら持参したモバイルルーターを利用しました。レンタルしたルーターは接続上のトラブルもなく、またバッテリーの持ちも十分で予備の充電用バッテリーも大変役に立ちました。ただ私がレンタルした会社では出発日の前日に宅配してくれたのですが、日本国内での使用が出来ないことになっていたため、テストができず少々心配しての出発となり、現地ブダペスト到着後に初めて接続と言うことになりした。

都市について
ヨーロッパの都市を訪れたとき誰れでもすぐ気が付くのは、古い建物が多いこと、石造の建築が多いこと、建物の高さや色彩が統一されていること、電柱が見られないこと、などではないでしょうか。建築に関してはヨーロッパの石造文化と日本の木造文化の相違ですが、どちらが優れているかは容易に判断できません。それぞれ長所、短所があると思います。われわれがヨーロッパの都市に学ぶとすれば、私は第一に「都市景観」を挙げたいと思います。と言いますのも都市はやはり美しくありたいと願うからです。

                   プラハの街並み
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ところで環境の観点からヨーロッパの都市を眺めて見ますと、石造の建物は100年単位で長持ちするので、短期間の利用で壊して新しく建てかえるやり方に比べると、省資源や温暖化ガスの排出削減の面からは、はるかに環境負荷が少なく優れたインフラと言えると思います。一方、わが国のように木造建築ではどうかと言いますと、これもまた樹木が蓄えたCO2を建築として閉じ込めてしまうので、やはり環境負荷の低減に寄与することとなります。

ただ木造建築の使用を終えたときの処理方法が問題です。最悪の処理方法は、解体した木材を燃料などとして燃焼させることです。この場合は木材が成長するときに折角貯蔵したCO2を、排出してしまうことなります。ただこの場合でも燃料としてエネルギーを取り出して利用し、かつ新たに植林することによって再生エネルギー(バイオマス)と考えることができます。最も環境負荷の少ない建築解体材の利用方法は、部材そのもの再利用、あるいは集成材に加工して利用することでしょう。

レストランについて
 私が参加するようなパックツアーで選択されているレストランのグレードは、本当に低いものだと思います。ですから料理が口に合わず満足なものにお目にかかれなくても、それはそれなりに理由のあることと思います。もちろん時には予期しない美味しい料理に回り合うこともあります。今回の旅行では、ブダペストのレストランで食べた名物料理のグヤーシュ(野菜がたっぷり入ったスープ)は、美味しくいただきました。まやウィーンで昼食に食べたポーク・シュニッツェルの味付けがとても気に入りました。

 旅行中の自由時間などで、各自で食事をしなければならないときもありますが、そんな時は自分でレストランを探すのも大変ですし、また折角なら美味しい料理が食べたいので、私がいつもとる方法は、添乗員さんか現地のガイドさんのアドバイスを受けることです。まず間違いなくわれわれの口に合う料理に巡り合うことができます。もう一つの方法は、これは大変簡単な方法ですが、中華料理のレストランを見つけることです。ちょうど洋食にも飽きてきた頃ですと、少々まずい中華料理でも本当にホットして満足するものです。

 ヨーロッパで中華料理を食べたことでいつも思い出すのは、パリのオペラ座の近くの中華レストランへ入ったときのことです。フランス語だけのメニューしかなく、中国系の従業員もフランス語と中国語しか話せず、英語は通じません。せめて中国語のメニューがあれば、漢字から想像して料理の内容がだいたいわかるのですが・・・・・。そこで思いついたのが漢字で書いて理解してもらうことでした。餃子、炒飯、炒麺、青椒肉絲など漢字が思い出せる料理名を、友人たちとわいわいがやがややりながら書き出して、やっと食事にありつけたのでした。

 ヨーロッパで料理やお菓子など食べ物のこととなると、やはり気になるのが味の問題です。一般に言われているように、西洋人に比べてわれわれ日本人は、味覚に対するセンサーを余分に持っているような気がします。これまでにヨーロッパで食べた料理でもお菓子でも、一般に味が単純なように感じられました。複雑な「うま味」ではなくシンプルな味付け、特に塩味が結構多く、また濃い味付けの料理によくお目にかかりました。スウィーツにしても、甘味がきつく香りも西洋人好みと思いますが、われわれには少々厳しい感じのものも多くお目にかかりました。

すし屋さんについて
 ところで今回の旅行で立ち寄った都市では、すし屋さんを多く見かけました。最近は世界的な傾向のようですが、寿司が外国の人たちにも大変好まれているようです。日本の食文化が世界に浸透していくことは、それなりに喜ばしいことかも知れませんね。ただ翻って海洋資源の観点からみると好ましいとは言えないかも知れません。すでに日本人が世界のエビを一人占めしていると非難されてきましたが、」最近はクロマグロの規制が話題となっています。どう言う訳か日本人ばかりではなく外国の人もマグロが大変好きなようですね。昔からマグロを食べてきた日本人にとっては、少々迷惑なような気もしまが・・・。

 海洋資源と言えば最近の大きな話題はウナギですね。 世界のウナギの70%は日本人が食べていると言われています。1990年代から日本で大量に消費されたヨーロッパウナギは、2008年に絶滅危惧種に指定され、資源を回復させる試みは始まったばかりのニホンウナギが、ついにこれに続いてしまったのです。
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つまり2014年6月12日に国際自然保護連合(IUCN)が発表した「レッドリスト」の最新版に、ニホンウナギを絶滅危惧種として掲載しました。 IUCNのレッドリストは、「絶滅」から「軽度懸念」「情報不足」まで8段階に分類しています。そのうち「絶滅危惧」は3段階あり、ニホンウナギは中間の「絶滅危惧1B類」とされ、全体の中では、上から4段階目にあたり、「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」という評価となっています。

減少の原因としては、乱獲とか生息地の環境悪化、また海の回遊ルートの障害や海流の変化などが挙げられています。絶滅危惧種に指定されても、すぐに輸出入や食用としての禁止にはなりませんが、将来的に野生生物の国際取引に関するワシントン条約による規制の対象となる可能性があります。将来的には、稚魚やかば焼きの輸入が制限されることも予想されると言われています。

あとがき
 中欧4か国を巡る旅行で見聞きしたことをもとに、主に環境対応の観点から思いつくままに述べて見ました。必ずしも環境とは関係のなことも多々述べましたが、雑談のつもりで読み流してください。とにかく旅行は、特に海外旅行は異次元にタイムスリップしたような好奇心と冒険心がお旺盛になり、年齢が実際よりも若くなった気分になります(これは私だけのことかも知れませんが)。あれも見たいあそこへの行きたいなどと、旅行まえに自由時間のプランを練るのも旅の楽しみのひとつと思います。

 今回の旅行ではプラハで午後半日の自由時間があったので、モーツァルト・フアンの私は、モーツアルトゆかりの場所を訪ね歩くことにしました。モーツアルトはプラハに4回ほど来ていると言うことで、交響曲38番「プラハ」(1791年)を作曲するなど、プラハにはモーツアルトゆかりの場所が幾つかあります。プラハ市の依頼で作曲した歌劇「ドン・ジョバンニ」が初演(1787年10月)された「スタヴォスケー劇場」、滞在した別荘「ベルトラムカ(現在、モーツアルト記念館)」、またモーツァルトが即興演奏したオルガンがあることと図書館の素晴らしいことで知られる「ストラホフ修道院」、そしてモーツアルトが亡くなった時に市民が追悼ミサを行ったと言う「聖ミクラーシュ教会」などです。

 そうそうこれは必ず書いておかなければならないと思うことが3つほどあります。
その一つ目は、プラハの市民会館のカフェでのコーヒーブレイクです。市民会館と言ってもそこらの市民会館とは訳が違います。豪華なアールヌヴォー様式の建物です。1階が「プラハの春」音楽祭で有名なスメタナ・ホールがあり、1階の一部がレストラン・カフェになっていて、ここでコーヒーとケーキをいただいたと言う訳です。音楽の生演奏つきですが、このときはサキソフォンをメインとするバンド演奏でした。私たちが日本人だと知ると、早速、「ふるさと」など日本の曲を演奏してくれました。本当に感激でした。
 二つ目がウィーンのカフェ・デーメルでのティータイムです。あの有名な「ザッハー・トルテ」をいただき、また製作中の様子を見学することができました。「ザッハー・トルテ」そのものは、やはりチョット甘みが強くてチョコレート味で、しかもこってりした食感ですから、必ずしも日本人好みと言う訳にはいかないようです。
さて3つ目、実はこれが今回の旅行のお目当てのひとつだったのですが、憧れのウィーン国立歌劇場でのオペラ観賞です。演目はリヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」でした。私のような素人にはチョット難しいオペラでしたが、セリフがドイツ語なので事前にストーリを読み、また座席前のディスプレイ画面の英訳を読みながら2時間30分を大変楽しく過ごすことが出来ました。オペラそのものも素晴らしかったのですが、オペラ座内部の構造や観客の様子など興味深々でした。

 元気なうちにまた何処かへ旅できることを念願して、この辺で終わらせます。
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by wister-tk | 2014-07-30 21:25 | 海外の情報

中欧を旅して思うこと (主に環境の観点から)

まえがき
 2014年6月13日から22までオーストリア、チェコ、スロバキア、ハンガリーのいわゆる中欧4か国を旅してきました。旅行会社のパックツアーでしたから、どこへ行っても自分の好みのところを詳しく見たり、情報を得たりと言うことは難しかったのですが、環境面からもそれなりに有意義な旅でした。

 もちろん歴史ある国々ですので訪れた各地で美しい景色や歴史ある聖堂や宮殿などの建築物、そして何と言っても絵画・彫刻などの芸術品の鑑賞も素晴らしいものでした。中欧4か国を回ったと言っても主な都市や地域を訪れたに過ぎないので、一般論として論ずることは出来ません。

 訪れた主な都市や地域は巡った順に、ブダペスト、ブラチスラヴァ、プラハ、チェスキー・クロムロフ、ザルツカンマーグート、ザルツブルク、バッハウ渓谷、ウィーンでした。私にとっては、ザルツカンマーグート以外は2回目の訪問だったので、比較的心の余裕を持って歩き回ることができました。

サマータイムについて
 海外へ行くとまずは時刻の問題があります。今回旅行した地域は日本との時差が―8時間ですが、ヨーロッパでは夏時間(英:サマータイム、米:デイライト・セービング・タイムDST:昼間を節約する時間)を採用して時刻を1時間早めているため、夏季の時差は―7時間となります。日本の夕方19時がウィーンでは、まだお昼の12時と言うことになります。緯度の高いヨーロッパの国々では、特に6月はいわゆる白夜現象のため昼間の時間が長く、さらにサマータイムが重なって、夜の8時頃でも明るいのが特徴的です。かつて私はノルウェーのトロムソ(北緯70度に近いところ)の夏至を体験しました。「白夜」と言うのは、ほんのりと薄暗い程度を想像していましたが、太陽が24時間沈まず頭上を360度回転し暗くならず昼間が続く現象は、本当に驚きでした。

 現在の方式のサマータイムは英国で提唱され、第一次世界大戦中の1916年にドイツとイギリスで採用したのが始まりといわれています。日本でも第二次大戦後、サマータイムが実施されましたが、米占領軍の施政下にあった1948年〜1951年の期間だけでした。このサマータイムは私も経験しました。

サマータイムの実施で期待できる効果としては、

①明るい時間を有効に使えるので照明の節約になる
②交通事故や犯罪発生率の低下
③活動時間が増えることによる経済の活性化
④午後の日照時間が増えることによる余暇の充実
などのようなことが考えられています。
 このうち①の照明の節約が環境対応ということになりますが、日本で実施するための議案も国会で検討されたようですが、南北に長い日本では北の地域では効果がありますが、南の地域であまり効果は期待できないとの理由でまだ採用されていません。ただし、北海道では「北海道サマータイム」として一部で試行されているようです。しかし、サマータイムの実施は、省エネや環境対応への意識を向上させると言う点で極めて有効だという意見もあります。

空港と航空機について
 海外旅行でお世話になるのがまず空港ですが、今回利用した空港は成田、フランクフルト、ウィーンでした。成田に比べて他の2つの空港は、全体に粗雑と言うか清潔感がなく利便性にも欠けているような気がしました。ただ省エネと言う訳ではないのですが、成田空港あたりに比べて音声による案内的あるいは注意的なアナウンスは極端に少ないのが特徴です。特に面白いのは動く歩道などの対応ですが、日本では乗り始めと終わりには注意の音声案内がありますが、ヨーロッパの空港ではそれがまったくありません。
 また、出発ゲートの変更や遅延などの航空機運航に関する案内も掲示板を用いており、音声による案内は緊急時以外には聞かれません。こうした対応の相違は、省エネとか環境問題とは異なり長年の習慣でしょうね。

 空港でお世話になる施設にトイレがありますが、さすがに温風式の乾燥機はあまり見られなくなりました。トイレと言いますとヨーロッパでは日本と異なりほとんどが有料となっています。無料なのは空港と高速道路の一部のサービスエリアと利用したレストランやカフェのトイレくらいと思います。美術館や宮殿などの観光施設では基本的に有料です。番人がいて料金を徴収する場合と機械にコインを投入して入る場合がありました。今回はだいたいどこでも50セント(ユーロ)くらいでした。

 有料トイレの最大のメリットは、清潔であり安全であることです。省エネに関しては熱感知装置を使った照明の自動点滅がありました。また以前にはあった温風式乾燥機がほとんど姿を消していました。ただペーパータオルを設置してあるところが結構多かったように思います。

 飛行機での機内サービスは、以前よりも相当に変化していました。まず用意しているソフトドリンクの種類が少なくなり、機内食の内容も量質ともに落としていました。これは環境対応もありますが、主な目的はコストダウンでしょう。かつての海外旅行では機内食と飲み物も大きな楽しみのひとつでしたが、これも徐々に有料化されることでしょう。

高速道路について
 ヨーロッパの高速道路は、一般的には無料なので料金所はありません。しかし、一部では有料もあり、年間通行税のような形で前払いして通行証を所有している国もあります。今回旅した国では無料の高速道路が大部分でした。高速道路に料金所がないということは、一般道路から車が自由に乗り入れできると言うことです。日本のように2つのインターチェンジの中間から高速道路に乗り入れ出来ないのとは異なり、高速道路付近の住民がだれでも身近に利用できるため、流通面での効率性や省エネや環境面でもメリットが多いと考えられます。

           一般道路から進入できる高速道路(チェコ)
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 高速道路のサービスエリアには、ガソリンスタンドやおみやげ店、それにレストランやカフェがあります。しかし、トイレはありますが、日本のように大規模で清潔で快適なものはなく、数も少なく女性の場合は全員終わるのに長時間を要することとなるのが一般的です。ショップやレストラン内にあるトイレは、一般に無料で比較的清潔ですが、原則として店内での買い物や飲食が条件となっています。そのため店にはターンスタイルのバーを押して入り、出口は別になっています。省エネのためトイレの照明は大体が自動点滅となっていて、ところによっては一定時間が経過すると自動的に消灯する場合もあって、あまり長い人は真っ暗闇に驚かされることもありました。

 今回走行した高速道路にあったガソリンスタンドは、ほんとんどがまったく無人のセルフ給油方式でした。給油施設だけでなくレストラン・カフェ、ショップが併設されているのが一般的でした。われわれ旅行者にとっては、このショップがちょっとしたおみやげを見つけるチャンスです。結構その地方にしかない食品とか民芸品があって、とても楽しいひと時ですが、何せトイレタイムに立ち寄るので時間的には大変きつい状態となるのがいつものパターンです。特にトイレに長蛇の列となる女性にとっては、本当に時間が足りないこととなります。

 ショップの話題がでたついでに、クレジットカードについてチョット述べて見ようと思います。今回旅行した国では、ここで述べたショップでもたとえミネラルウォーター1本でも、クレジットカードが使えました。ですからツアー仲間の中には、あまり両替はしないで、もっぱらカードを使う人もいました。小さな店でもカードが使えると言う点では、日本よりも進んでいるのでしょうかね。現金よりもカードを使うことはエコ的でもありますが、どちらかと言うと省力化の方向でしょうか。ところで、4か国ともユーロに加盟していますが、通貨についてはオーストリアとスロバキアがユーロを使っていますが、チェコとハンガリーは、それぞれ以前からの自国の通貨であるコルナとフォリントを使っています。

風力発電について
 ブダペストからプラハに向かう高速道路の走行中には、なだらかな丘陵地帯に数多くの風力発電用の風車が見られました。世界の風力発電容量238,351MW(2011年末)の内、ヨーロッパ(世界トップ10)の容量は71,304MW(29.9%)となり、次いで中国の62,733MW(26.3%)、アメリカの46,919MW(19.7%)となっています。ヨーロッパ諸国で世界のトップ10に入っているのは、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、イギリス、ポルトガルの6か国ですが、ハンガリーやチェコは入っていません。しかし、こうした旧社会主義国においても着実に再生可能エネルギーへの転換が行われている様子が伺われました。

                  風力発電用の風車が沢山
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<つづく>
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by wister-tk | 2014-06-30 21:05 | 海外の情報

COP19の結果はどうなったの?


はじめに
 2013年11月11日から23日までポーランド・ワルシャワでCOP19(第19回 国連気候変動枠組み条約締約国会議)、CMP9(京都議定書第9回締約国会合)が行われました。2012年のカタール・ドーハで行われたCOP18での「ドーハ合意」(詳しくはこのブログの2012年12月号にあります)に基づいて懸案事項が討議されたのです。

今回のCOP19の主要な目的は、以下の二つでした。
(1)2020年以降の「新たな国際協力の枠組み」づくりにあたって、2015年、フランス・パリのCOP21での最 終的な合意に向けて各国の意見を集約すること
(2)2020年までの先進国の温暖化ガスの削減目標の上積みを設定すること(この目的はまったく議論され  なかったと言われます)

                     COP19 開会式
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    出典:http://commons.wikimedia.org/wiki/File:COP19_opening_(23).JPG

COP19での主な合意内容

★新たな国際枠組みの構築
 結果として「新しい枠組み」については、2015年(COP21、フランス・パリ)で合意して、2020年の発効に向うことを確認しました。
 米国、中国および途上国を含めたすべての国が、COP21よりも十分早い時期に、準備できる国は2015年の1月から3月までに温室効果ガス削減の自主的な削減目標(nationally determined contribution)を提出することとしました。(約束:comitmentsではなく貢献:contributionとすることで、拘束力を持たない単なる目標に過ぎないとの解釈が可能となると言われます)また、その目標が妥当なものかどうかを第三者機関が評価する仕組みとなっています。
 新しい枠組みの焦点だった「自主的削減目標」については、当初においてはEUが2014年、日本および米国が2015年、途上国が2015年以降と言った提案をしていましたが、結局、今回は「削減目標の基準年」や「達成の時期」については議論されませんでした。そのため2014年末にペルー・リマで開くCOP20に向けて交渉を加速する必要があると言われています。

★支援資金に関する決定
 途上国が、温室効果ガス削減の目標を達成するために、必要となる資金の支援を先進国に要請していますが、先進国は2014年の早い時期に途上国に目標設定のための資金を支援することを約束しました。
 途上国への資金の支援については、既にコペンハーゲン合意(2009年、COP15、デンマーク)・カンクン合意(2010年、COP16、メキシコ)で、2020年までに支援資金を拠出すると言う合意に基づいて、作業計画を策定することがCOP19での焦点のひとつでした。
 2020年までに1000億ドルの拠出が着実に確保されるよう、途上国は、途中段階の2016年までに「700億ドルなど中間目標」を定めるよう求めました。しかし先進国の多くはこれに強く反対したため、結果的には先進国に対し、2014年から2020年の間に2年に1度の頻度で、気候資金の規模増加に関する戦略や方法について報告をすることを求められました。

★気候変動による損失と被害
 気候変動による「損失と損害(Loss and Damage)」は、貧困国や気候変動の影響を著しく受ける脆弱な国々(島嶼諸国など)が、以前から強く促進を求めている課題であり、2012年のCOP18の「ドーハ合意」において新たな制度的メカニズムを創設することが決定されていました。今回はそれを受け、温暖化に伴う自然災害による「損失と被害」に対処する「ワルシャワ・メカニズム」と呼ばれる新たな専門組織を新設し、そしてその執行委員会を創設することに合意しました。
 同メカニズムでは、条約の下で、損失と損害の問題への対応の実施を促進する役割を担い、損失と損害に関する知見の収集や調整、支援の促進などの機能を果たすことになると言われています。
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                                           2013 FUJII Tak

 以上、COP19の合意内容のち主な3つの項目についてまとめてみまました。この結果を以下に示す、2012年のCOP18での「ドーハ合意」と比べてみますと、ほんのわずかの進展しか見られないことが判ります。

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「ドーハ合意」の内容詳しくはこのブログの2012年12月号をご覧ください

〇新たな国際枠組みの構築
・2021年からの新たな国際規約を、2015年までに構築することを参加各国が再確認しました。
・中国と米国を含むすべての国が参加することで合意されました。
・「新たな法的枠組み」の原案を、2014年末のCOP20以前に準備する。
・これによって検討素案を2015年5月までに作成することを目指す。

〇支援資金に関する決定
・途上国を支援するため、先進国に対して2020年までに支援資金を、年間1,000億ドルにまで拡大するよう求めています。
・提出期限は、2013年のCOP19(ポーランド・ワルシャワ)までとなっています。
・なお、長期資金に関する検討作業は、1年間延長することとなりました。

〇気候変動による損失と被害
・気候変動による損失と被害に関しては、貧困国や気候変動の影響を著しく受ける国々(島嶼諸国など)からの訴えに応えて、先進国はCOP19において「気候変動による損失と被害の軽減に取り組むための国際的な機構制度」を設立することになりました。
*******************************************************


 つまり「新たな国際枠組みの構築」については、あらためて「2020年の発効に向うことを確認」し、2015年に合意するための手順がかなり具体的になったと言えるでしょう。しかし、その内容が「約束」ではなく「貢献」と言う努力目標となっている点が気がかりです。特に中国やインドなどの新興国や途上国は、温室効果ガス削減の「自主的な削減目標の設定」自体に反対しているので、実際に2015年のCOP21(フランス・パリ)で合意がなされるかどうか、大変心配なところです。

 途上国への「支援資金に関する決定」については、前回と同様に長年の懸案事項にもかかわらず、支援資金に関して多くの先進国の反対のため、今回も具体化はされませんでした。結果的には先進国に対し、2014年から2020年の期間において2年に1回、支援資金の増加方法や計画について報告をすることを決めたに過ぎません。

 また、「気候変動による損失と被害」については、COP18においてすでに「気候変動による損失と被害の軽減に取り組むための国際的な機構制度」を、COP19で設立することに合意していました。したがって、これを受けて今回は、「ワルシャワ・メカニズム」と呼ばれる新たな専門組織を新設し、その執行委員会を創設することに合意したわけです。前回よりは若干進展したと言えるでしょうか。


〇日本の新目標への非難
 ところで日本は、今回のCOP19でどのような役割を果たしたのでしょうか?日本は今回の会議において、「2020年の温室効果ガスの排出量を2005年比で3.8%削減する」と言う目標を発表しました。この3.8%削減と言う数字は、京都議定書で基準年とする1990年比に換算すると、3.1%の「増加」に相当すると言われていますので、削減目標ではなく逆に「排出増加目標」と言うことになります。この目標水準は、25%削減するというこれまでの削減目標を覆すものでり、京都議定書の第1約束期間(2008年~2012年)での削減目標である6%削減からも大きく離れる極めて異常な値と言えると思います。

 この日本の新しい目標は、途上国はもちろんのことEUなどの先進国も、名指しで非難したと報じられています。オーストラリアもCOP19で削減目標の引き下げを発表しましたが、日本はオーストラリアともども、途上国が責任追及の対象とする先進国の中の悪の代表格のように攻撃されました。そして国際環境NGOの「気候行動ネットワーク」からは、COP19参加国の中で「交渉の推進に最も後ろ向きな国」として「特別化石賞」が贈られました。大変不名誉なことです。

 こうした状況に対して会議に出席した石原環境大臣は、次のように述べて日本の環境技術面での貢献を、アピールして理解を求めています。「これから数字を上乗せし、優れた環境技術で世界の削減に貢献する準備がある。しっかり説明していくことが最大の仕事」と。


おわりに
 日本は京都議定書の第1約束期間(2008年~2012年)での削減目標とした6%削減については、2012年にその義務を達成しています。この実績は大変重要であり、他の国々に対して日本の地球温暖化防止への取り組む姿勢ならびに高度の環境技術の保有を明確に示しています。
 一方、今回のCOP19で発表した「2005年比で2020年に3.8%削減(1990年比で3.1%増加)」と言う数値は、原子力発電所が稼働しない状況では、ある程度やむを得ないと言うこともありますが、「3.8%」の算出根拠を示していないこともあって、あまりにも国際的な状況にそぐわない決定と思います。

 こうした状況の根底には、わが国の将来にわたるエネルギー基本計画が確定さてれていない点にあるのではないかと思われます。原発の再稼働をどうするのか、将来的に原発による発電の比率をどうするのか、省エネをどのように進めるのか、再生可能エネルギーの比率をどこまで上げられるのか、等々を十分に検討しなければならないと思います。
 そのうえで、京都議定書を世界に送り出した国として、また削減義務を果たした実績ある国として、地球規模の環境問題である温暖化防止対策に対して、日本が負うべき国際的な責任を十分に踏まえたうえで、わが国の将来にわたる社会・経済の動向を明確に示し、いま国としてなすべき努力がどの程度なのかなど、明確に問題の設定を行ったうえで、重要な「目標の設定」を行うべきではないでしょうか。今後の目標の改善に心から期待したいと思います。
                                                   以上
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by wister-tk | 2013-12-30 23:10 | 海外の情報

海外のHPを見てみよう(7)-ノルウェー気候・環境省MCE-

ノルウェーの環境省にあたる国の機関は、「Ministry of Climate and the Environment」と呼ばれています。直訳すると「気候・環境省」となります。もちろんノルウェーの国語は、ノルウェー語なのでホームページも基本的にはノルウェー語ですが、ここでは英語版に基づいて説明しています。

ノルウェーは、北欧4か国のひとつで、スウェーデンやデンマークとともにスカンジナビア半島にあります。北欧のもう一つの国は、もちろんフィンランドですね。ノルウェーは、「森と湖の国」としてよく知られているように、世界で最も自然に恵まれた国のひとつであり、また自然をとても大切にする国です。

環境に対する関心は極めて高く、国民の環境への意識は深く生活に根付いていると感じられます。環境省のホームページにもそうした環境を重視する積極的な施策が見受けられます。

ノルウェー環境省のホームページのトップページ(Home)は、下に示すように他の国の場合に比べて大変シンプルなレイアウトとなっています。特にこの版(2013/10/23)では、写真も少なく色彩もあっさりしています。このことは「海外のHP(6)」で紹介したオランダ環境省のHPに似ていますが、さらにシンプルと言った感じがします。しかし、各項目のリンク先では項目内容を相当に詳しく扱っており、情報量の多い大変に濃い中身となっています。

     <ノルウェー環境省のホームページ;2013/10/23版>
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出典:http://www.regjeringen.no/en/dep/md.html?id=668#

トップページの最上段には、ニュースに関連する写真を掲載しています。この版では最近就任した環境大臣を紹介しています。トップページの項目としては、
①ニュース、
②2014年の国の予算、
③ショートカット(リンク先項目)、
④関連文書
の4つの項目で構成されています。

さらにページの下部には、6つの項目があり「最近の出来事」、「報道センター」、「刊行物」、「文書アーカイブ」、「音声と映像」さらに「環境省お勧めの話題について」となっています。

①ニュース欄:10月16日付でSundtoft氏が環境大臣に、またLunde氏が国務大臣に就任したことを報じています。

②2014年の予算欄:10月14日に予算案が議会に提出されたこと、国の予算がノルウェー経済のための経済政策と企画を実施するための政府の施策を示したものであることなどを述べており、さらにリンクによって別ページで詳しくその内容を説明しています。

③ショートカット欄:次のような項目が並んでいます。
●環境ホームページ:
別のホームページで環境状態と開発の最近の状況として、以下の項目などについて説明しています。
・大気汚染、・廃棄物、・危険な化学物質、・放射線、・水圏、・海域、・極地方、・気候、・生物種の多様性、・騒音、・野外リェクレーション、・文化遺産、など

●ノルウェーの気候変動対応計画:
気候変動に関する基礎的な知識から最近の話題まで興味深い内容となっています。特に「緑の屋根(Green loof)」の構想は、大変興味があります。屋根に植物を植えて雨水の流出量を制御しようとする構想です。わが国の「屋上緑化構想」に似ています。既に大規模な実験も行われていることが紹介されています。ノルウェーでは伝統的に屋根に植物を植えることが行われてきましたので、こうした発想も生まれるのでしょう。かつて北緯70度のトロムソまで行ったことがありますが、あちこちで「緑の屋根」を見ました。

     <ノルウェー生命科学大学における「緑の屋根」の実験場>
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セダムとハーブと草の組み合わせの軽い構造の大規模な「緑の屋根」、屋根の重量は、水の飽和状態で約130 kg/m2、高さは約120mmです。 (Photo:The Norwegian University of Life Sciences.)
出典:http://www.regjeringen.no/en/dep/md/kampanjer/engelsk-forside-for-klimatilpasning/library/publications/report-on-green-roof-knowledge.html?id=723742

●環境統計:
ここでは環境に関する統計資料の他に刊行物や定期刊行物の検索ができます。例えば統計資料としては、・温暖化ガスの排出量、・都市居住域における土地利用、・家庭からの廃棄物などです。

④関連文書 :次のようなテーマが示されています。
・ノルウェーの気候政策(国会へ提出された白書:2011-2012の報告書の要約)、
・世界遺産と共に生活する(会議報告書)、
・ノルウェーの環境目標―目的達成のための優先的分野と手法
・スヴァールバル環境保護法
スヴァールバル諸島:北極圏のバレンツ海にある群島、最大の島はスピッツベルゲン島、人口約2,600人

以上、見てきたようにこのホームページからだけでも、ノルウェーが環境対応に大きな関心を持っていることが理解できます。
よく知られているように、ノルウェーには原子力発電所はありません。総電力量のうち火力発電が4%、風力発電が1%と言われています。1人当たりの電力消費量は世界最高ですが、電力はヨーロッパ最大の水力発電によって供給されています。ノルウェーは、ヨーロッパの石油埋蔵量の60%、ガス埋蔵量の50%を保有する資源大国と言われていますが、これらのエネルギー資源は輸出用としています。また、電力供給に不足が生じた場合は、近隣の国やロシアから輸入して不足分を補っているとのことです。
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by wister-tk | 2013-10-25 22:04 | 海外の情報

IPCC(アイピーシーシー)ってなあーに?

はじめに
IPCCとは、国連の「気候変動に関する政府間パネル」Intergovernmental Panel on Climate Changeのことです。IPCCは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が設立した国際機関です。2007年にノーベル平和賞を受賞したことで有名になったと言われています。ここでは地球温暖化に関する世界の科学者の研究成果を評価し、政治に反映させることが目的となっています。3つの作業部会があり、「気候変動の自然科学的根拠」、「影響・適応・脆弱性」、「気候変動の緩和」のそれぞれの部会から報告書が提出され、最終的には「統合報告書」として公表されています。
IPCCの作業部会が、2013年9月23日からスウェーデンのストックホルムで開始され、9月27日には、6年ぶりとなる「第5次評価報告書」の第1回分が公表されました。

                IPCC第5次評価報告書の表紙
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                          出典:IPCCホームページ

1.IPCCの役割の経緯
 IPCCは、195か国が加盟し各政府が指名する科学者と行政官とで構成される「政府間パネル」と呼ばれる国連の組織です。1988年発足以来、地球温暖化に関わる世界中の最新の科学研究成果を収集し評価し、その結果を世界各国の政治に反映させてきました。よく研究機関と間違われることがありますが、研究機関ではなく研究成果を取りまとめて公表し、地球温暖化の抑制に寄与することを目的とする機関となっています。

IPCCの設立から最近までの経緯は以下のようです。

1988:IPCC設立
1990:IPCC第1次評価報告書の公表
1992:ブラジル・リオデジャネイロでの地球サミットにおいて国連気候変動枠組条約の採択
1995:IPCC第2次評価報告書の公表
1997:COP3(第3回国連気候変動枠組み条約締約国会議)京都議定書の採択
2001:IPCC第3次評価報告書の公表
2005:京都議定書発効
2007:IPCC第4次評価報告書の公表、ノーベル平和賞受賞
2009:COP15(コペンハーゲン)・米国や新興国を含む国際的な温暖化対策の新枠組み合意出来ず
2012:京都議定書の第1約束期間が終了
2013-14:IPCC第5次評価報告書の公表(予定)
2015:2020年以降の新しい国際枠組の合意なるか?

IPCC発足以来の最大の課題は、「地球温暖化の要因は人間活動なのか、単なる自然変動なのか?」でした。1990年の第1次報告書では、「人為的な温暖化を生じさせるだろう」としています。しかし、2007年の第4次報告書では「人為的な温暖化の可能性が非常に高い(確率90%以上)」となりました。
第5次報告書ではどんな内容になったのか、大変関心が持たれるところです。

2.IPCCの仕組みと第5次報告書の日程
IPCCは、第1作業部会から第3作業部会まで3つの作業部会があり、それぞれ①気候変動の自然科学的根拠、②影響・適応・脆弱性、③気候変動の緩和の分野を担当しています。それぞれの作業部会から提出された「報告書」をIPCC総会において取りまとめ、「統合報告書」として公表されます。なお第5次報告書に関する作業日程は、次のようになっています。

2013年9月・スウェーデン:第1作業部会「気候変動の自然科学的根拠」報告書提出(9月27日に公表済)
2014年3月・横浜:第2作業部会「影響・適応・脆弱性」報告書提出
2014年4月・ドイツ:第3作業部会「気候変動の緩和」報告書提出
2014年10月・デンマーク:IPCC総会「統合報告書」作成

3.第5次評価報告書の概要
 スウェーデンのストックホルムで開催されたIPCCは、2013年9月27日、第1作業部会がまとめた「第5次報告書」を公表しました。将来の地球温暖化の進行などを分析したこの報告書では、今世紀末には温暖化の影響により「海面は最大82cm上昇し」、「気温は最大4.8℃上昇する」と予測しています。また、この分析結果に基づいて、「気候変動を抑えるためには、温室効果ガスの排出を継続的かつ徹底的に削減することが必要である」とし、これまで以上の努力を国際社会に求めています。

最近(1986-2005)と21世紀末(2081-2100)を比較した気温(a)と降水量(b)の変化(1986-2005年を0とした増減)
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RCP 2.6シナリオ(温暖化を最も抑えた場合):2100年までにピークを迎えその後減少する「低位安定化シナリオ」
RCP 8.5シナリオ(温暖化が最も進んだ場合):2100年以降も温暖化効果の上昇が続く「高位参照シナリオ」
                                     出典:IPCC第5次報告書


     世界の平均気温の変化(1986~2005年の平均値を0とした場合)
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黒線[historical]:これまでに観測された気温、紫線[RCP2.6]:温暖化を最も抑えた場合、赤線[RCP8.5]:温暖化が最も進んだ場合
                                     出典: IPCC第5次報告書


 第5次報告書では、「気候変動への人間の影響は明らかである」として、人間活動と温暖化現象を明確に関連づけています。特に1900年代後半からの気温上昇は、人類の生産活動など「人為的な温暖化の可能性が極めて高い」(確率95%以上)とし、前回の第4次報告書の確率90%以上から引き上げました。
また、世界各地で頻発している熱波、豪雨、竜巻などの「極端な気象」は、この人為的な要因による温暖化が原因であると警告しています。(詳しくはこちらを参照してください.オリジナルの英文報告書はこちらです

おわりに
第18回 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)、京都議定書第8回締約国会合(CMP8)が、2012年11月、カタールのドーハで行われました。COP18では、京都議定書に代わる2021年からの新たな国際規約を、2015年までに構築することを参加各国が再確認しました。また「新たな法的枠組み」の原案の骨組みについて、2014年末のCOP20以前に準備することによって、検討素案(たたき台)の2015年5月までの作成を目指すことが決定されました。(詳しくはこのブログの「COP18の結果はどうなったか?」2012年12月26日をご覧ください)
次回のCOP19は、2013年末にポーランドが議長国を務め、ワルシャワで開催されることになっていますが、今回のIPCCの第5次報告書は、温室効果ガスの排出を抑制する京都議定書後の新たな国際的枠組みの2020年の発効に向けて、2015年の合意を目指している交渉に大きく影響することとなります。そしてこの「第5次報告書」が、「新たな国際的枠組み」の構築に重要な科学的根拠を与えることとなることでしょう。                  以上
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by wister-tk | 2013-09-28 22:02 | 海外の情報

COP11を知ってますか?

1.COP11とは
「COP」とは、国際条約を結んだ国が集まる会議(締約国会議:Conference Of the Parties)の略語です。単に「COP11」と言うと、①2005年11月、カナダ・モントリオールの気候変動枠組条約締約国会議、②2012年7月、ルーマニアのラムサール条約締約国会議、そして③2012年10月、インド・ハイデラバードの生物多様性条約締約国会議などがあります。ここでは③の生物多様性条約締約国会議について述べたいと思います。

さざまな生き物やそれらが生息している環境を守り、その恩恵を将来にわたって持続させるために、1992年6月、リオデジャネイロの環境サミットで提案されたのが「生物多様性条約」です。この条約の前回の締約国会議「COP10」(10回目)が、2010年10月、愛知・名古屋で開催されました。
(「生物多様性」については、このブログの2010年2月投稿「生物多様性とは? COP10とは?」をご覧ください)

ここで言う「COP11」とは、2012年10月8日~20日までインドのハイデラバードで開催された生物多様性条約第11回締約国会議のことです。

2.COP10名古屋での結果について(復習)
COP10名古屋会議での結果を簡単に復習すると以下のようになります。
本来は「生物種の保存」と言う純然たる環境問題として生態系の保全が議論の中心であったはずですが、COP10ではもはや純然たる環境問題を超えて「経済問題」の領域へ進んでしまいました。さらに問題は、先進国対途上国と言った「南北問題」へと変貌し、さらに「政治問題」へと発展してしまったのです。

議論の焦点は、「生物遺伝資源」をどう扱うかにあてられました。医薬品などの原料となる有用な植物や微生物である「生物遺伝資源」の多くは、途上国が供給源になることが多いので、「生物多様性条約」では原産国の主権を認め、持ち出しには事前同意が必要であると規定しています。しかし、生物資源の範囲などがあいまいなため、途上国側はこうした規定を明確化するよう求めてきました。

★生物遺伝資源の利益配分ルール「名古屋議定書」関係の主な結論:
(1)植民地時代までさかのぼって利益配分することは認めず、議定書の発効以降に対象を限定する。
(2)製品の収益の一部を支払い、研究や技術面などでも協力する。
(3)生物遺伝資源の不正取得の防止措置については、利用国が監視部署を一つ以上設置する。
(4)企業が製品を特許申請するさいの遺伝資源の情報開示は行わない。

★生態系保全のための世界共通目標「愛知ターゲット」の主な結論:
(1)2020年までに生態系保全を確保する目的で、生物多様性の損失を止めるための行動をおこす。
(2)森林を含む動植物の生息域の損失速度を可能なだけゼロに近づけ、少なくとも半減させる。
(3)「保護区」の目標については、少なくとも陸域で17%、海洋では10%を効果的に保護する。
(4)「愛知ターゲット」を実施するための資金を現在よりも大幅に増やす。
(「COP10名古屋」の結果については、このブログの2010年10月投稿「COP10は環境問題の「多様性」を示した!!」をご覧ください)

3.COP11ハイデラバードでの結果について
COP10名古屋では、各国が現状以上の種の絶滅や貴重な自然の減少を防ぐことに合意し、「愛知ターゲット」が採択されました。
COP11では、「愛知ターゲット」の(4)に沿って援助資金の増額が議論されました。財政事情が厳しい先進国、特に日本は数値目標に難色を示し、目標数値を「2倍」ではなくすでに合意されている「実質的な増加」にとどめるべきだと主張しました。しかし、途上国側は数値目標の設定を強く求め、先進国側がこれに妥協した結果となりました。

つまり生物多様性の保全目標「愛知ターゲット」を実現するため、2015年までに途上国への資金援助を倍増させることなどを決定したのです。日本を含む先進国側と中国を含む途上国側との間で意見が対立しましたが、結局、援助資金の増加額は途上国側の要求に従った結果となりました。

一方、中国やインド、ブラジルなどの新興国を支援国に組み入れるべきとの日本の主張に対して、中国やブラジルは「途上国」に義務を課すべきではないとして強硬に反対しましたが、最終的には妥協する結果となりました。

[COP11 ハイデラバードのロゴ]
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資金調達に関する合意
(1)「愛知ターゲット」の達成に向けた途上国の努力を支援するために、先進国は資金を増加させることを合意した。
(2)先進国は2015年までに生物多様性に関連する途上国への資金援助を暫定的な数値目標として倍増し、国際的に合意された生物多様性目標および2011年から2020年の生物多様性のための戦略的計画の主な目標達成に向けた途上国の努力を支援するため、2020年まで少なくともその額を維持することを合意した。
(3)最終的な数値目標は、2014年に韓国で行われる予定のCOP12において、目標に向けての進捗状況の見直しを行ってから決定することになった。
(4)中国やインド、ブラジルなどの新興国も、後発の途上国を援助するいわゆる「南南協力」によって、支援国として援助資金倍増の対象国に含めることを決定した。
(5)インドおよびアフリカの数か国を含む途上国は、生物多様性条約の事業に対する彼らの従来の基本資金を超えた追加資金を供出することを、COP 11において初めて誓約した。

海洋の生物多様性に対する特別な配慮
(1)生物多様性条約の193の締約国は、生態学的あるいは生物学的に重要であるとの理由から、植物界や動物界の「隠された宝物」を含むことで知られる海域を、「海域の多様性リスト」に格付けすることで合意した。
(2)サルガッソ海*、トンガ諸島およびブラジル海岸沖の主要なサンゴ礁は、世界の海洋を持続的に管理する新たな取り組みの一環として、政府による特別な配慮を受ける海域範囲に含めることを合意した。
(これらの地域の多くは、国家の法的な管理外にあり、現状ではほとんど、あるいはまったく保護を受けていないような状況にあります)

<*サルガッソ海:西インド諸島からアゾレス諸島までの北大西洋の広大な海域、北大西洋の亜熱帯循環の内側の、ほとんど流れのない海域(およそ20〜-40°N, 30〜-80°Wの範囲)を言う。ホンダワラ類(Sargassum)が多く漂っていることからこの名が付けられており、藻海あるいは大藻海と訳されます>

(3)その他の重要な決定事項のひとつとして、 海洋および沿岸地域のインフラ整備やその他の開発プロジェクトに係わる「環境影響評価」においては、生物多様性を考慮するための新たな措置を設定することに合意した。


以上、COP11ハイデラバードの結果について概略を述べましたが、生物多様性に関わる課題は、地球温暖化の課題と同様にわれわれ人類にとって極めて重要な問題であるにも関わらず、各国間の合意が難しい状況にあります。

特に先進国と途上国との間の対立が激しく、全面的な合意に至ることは困難なように思われます。これがいわゆる「南北問題」ですが、さらに近年においては中国、インド、ブラジルなどの新興国が台頭し先進国と途上国の3つのグループが、それぞれ三者三様の異なる主張を展開して、生物多様性条約の目標達成を困難にしているように思います。

今回のCOP11において、支援資金の倍増を求められたことによって、最大の支援国である日本は厳しい立場に立たされました。しかし、中国やインド、ブラジルなどの新興国も、後発の途上国を援助するいわゆる「南南協力」として、支援国側に組み込むことに成功しました。これによって途上国への資金援助の総額を増大させる効果をもたらす結果となったことは、極めて大きな成果と言われています。

今後の課題としては、COP10の重要な成果である「名古屋議定書」の発効に係わる批准です。発効には50カ国の批准が必要なのですが、名古屋での採択から既に2年が経過しているにもかかわらず、現在までに批准したのはガボン、ヨルダン、ルワンダ、セーシェル、メキシコ、ラオスの6カ国だけと言われています。肝心の日本もまだ批准していません。
批准が遅れている理由としては、各国において国内制度を議定書に対応するよう整備する必要があること、さらに自国が出来るだけ有利になるよう様子をうかがっていること、などがあると言われています。

また、COP10名古屋の成果である「愛知ターゲット」では、生態系保全へ向けて20項目の国際目標を掲げ数値目標を初めて設定しました。これらの数値目標に対して、各国は国家戦略をつくり、保全すべき陸域や海域の割合などの目標を設定しなければなりませんが、こちらの方の取り組みも遅れているのが実情です。日本は2012年9月末に、新たな「生物多様性国家戦略」を閣議決定したことをCOP11において報告し、他国へ「国家戦略」への早期の取り組みを促しました。

「名古屋議定書」および「愛知ターゲット」ともに日本で起案された国際規約であることからも、今後ともわが国がイニシアチブをとって国際貢献に寄与するよう、大いに期待したいものです。
<参考資料>:国連環境計画(UNEP)・生物多様性条約(CBD)のホームページCOP11 (http://www.cbd.int/cop11/)を参照
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by wister-tk | 2012-10-28 16:49 | 海外の情報

オランダの環境対応に学ぶ

前回は「海外のHPを見てみよう(6)」としてオランダ環境省のホームページを紹介しました。今回は、前回と関連して世界的にも古くから環境調和に取り組んできたオランダの対応の一端を紹介いたします。

ここでは人の生活環境と自然環境との関わり合いが最も重要となる、社会資本整備に関わる施設構造物(橋、高架橋、道路、地下鉄、鉄道、トンネル、ダム、港湾施設、堤防、防波堤、防潮堤、灌漑排水路、等々)の建設の観点から、問題を概観してみようと思います。

1.自然工学の考え方
施設構造物を造るときは、野生動植物など生態系に対して十分に配慮しなければなりません。この場合に、生態系への配慮の基本となる考え方として、オランダで行われてきた「Nature Engineering」1)(ここでは仮に“自然工学”と訳します)と呼ばれる考え方が参考になります。自然工学は、「固有の植物相や動物相とそれらの相互関係である生態的共同体のために生存条件を創出し、それを向上させ、あるいは保全するための全ての行為をいう(Proost & van der Hoek、 1985)」と説明されています。

       自然工学の考え方と目的
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自然工学の具体的な目的は大きく2つあり、
(1)生き物の「生息域の創出」あるいは「再創出」と
(2)「自然の管理」、すなわち自然をマネジメントする立場から望ましい状態に保全していくことです。
さらに、前者の(1)「生息域の創出あるいは再創出」は、2つの目的を持っており、
①そのひとつは生き物がより自然な生態的共同体をつくり、また自然な生活ができるように、岩石、土、水などの生物以外の材料を用いて生き物の生息域の出発点となりうるような適切な空間を工学的に創出することであり、
②もうひとつは既にそこにいる生き物の生息域の創出あるいは改善のために、それを可能とする生態的な条件整備と生き物の発展向上を図ることです。

施設構造物を造ることによって、われわれは、生息域を分断したり、移動路を遮断したり、さらに構造物の周囲にある生き物の生態機能に、また共同体やエコシステムに影響を与えることになります。ですから施設構造物を建設するとき、自然工学的手法としては、自然への配慮として、
①建設時においては土工工事などによって、まず生き物が生活を開始できるような場所を創出すること、
②生き物の生息域を創出するためにの手段を用いて実際の生息域の整備を行うこと、
③生態系への影響が大きいなど、場合によっては初期の開発計画を縮小あるいは中止するなど、開発の制限を基本とした自然を維持管理するための体制を採用すること、
などが特に重要です。

2.環境保全・保護・回復の考え方2)
人が自然に手を加える場合においては、様々な改変の度合いがあり、それに対応して種々の概念が用いられています。これらの概念は、人と自然環境との関わり合いを配慮するうえで大変重要となります。

改変の程度の大きい方から小さい方へ順に、
①創出(creation):何もない所に全く新しく生物のための生態的環境を造り出す、
②機能回復(rehabilitation):過去に失った自然の機能をもとに戻す、
③代替(substitution):元の場所とは違う所に同じ機能をもつ環境を造り出す、
④再生(regeneration):近い過去に消失した環境を再び人工的に造り出す、
⑤移入(introduction):近い過去に消失した環境を類似の環境から移してくる、
⑥回復(restoration):近い過去に消失した環境をその環境の持っている潜在的な力によって復元する、
⑦移設(replacement):現状を維持すために対象とする動植物を移す、
⑧保存(keeping reservation):周囲への人為的影響を許容するが、しかし対象物への影響は排除して生態系の現状を維持する、
⑨保護(protection):基本的に周囲を含めて人為的影響を排除し現状の生態系を管理維持する、
⑩厳密保護(restrict protection):人為的影響を完全に排除し管理も行わない、などがあります。

さらに
○保全(conservation)は、①~⑦までの人為的行為を表し、
○ミチゲーション(mitigation)は、影響軽減を意味し③~⑦までの行為のことを言います。
また、
○保存(reservation、 preservation)は、⑦~⑨の行為のことです。

施設構造物の建設を計画する場合、これらの環境条件のどれを採用するかは、極めて重要な判断であり、環境影響評価がその価値を発揮することとなります。

人間の生活環境との関連で見た自然環境への対応としては、前に述べた「環境倫理」(2012/1/12)の考え方と合わせてみると、非常に難しい問題であることが理解できます。こうしたことに関連して最近、問題となっている課題として、脱原発へ向けた代替エネルギーの開発の一環としての地熱発電があります。主な地熱発電の候補地が国立公園内にあることで「自然保護かエネルギー開発か」の論議がなされています。

脱原発を本当に推進するのか?その場合に地熱発電は本当に必要なのか?地熱発電を実施するとしたら自然保護をどの程度行えばいいのか? など極めて難しい判断が求められますが、皆さんはどのように考えますか?

<参考文献>
1) Aanen, P. et al.:Nature Engineering and Civil Engineering Works,
Pudoc, Wageningen, 1991
2) 竹林征三:建設環境技術、山海堂, p.32, 図-1.9, 1995
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by wister-tk | 2012-03-04 15:39 | 海外の情報

海外のHPを見てみよう(6):オランダ環境省

わが国の環境省にあたるオランダの機関は、「Ministry of Infrastructure and the Environment」と呼ばれています。敢えて翻訳すると「公共事業・環境省」とでも言えるでしょうか。
オランダは、よく知られているように海を干拓することによって国土を造成してきたため、歴史的にも環境対応との関わりが深く、欧米においても古くから環境との調和に関心をもってきました。

オランダ環境省のホームページのトップページ(Home)は、下に示すように他の国の場合に比べて大変シンプルなレイアウトとなっています。とくにこの版では写真も少なく、色彩もあっさりしていますね。

<オランダMIEのホームページ;2012/2/6版>
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トップページの項目としては、①ニュース、②スポットライト、③トピックス、④人気のページ の4つの項目で構成されています。さらにページの上部には、4つのタブがあり「ホーム」、「ニュース」、「トピックス」、「環境省および関連組織」となっています。

①ニュース欄:主なヘッドラインと最初の2、3行をを掲載し、詳しくはニュースタブをクリックして別ページへリンクするようにしています。上に示すトップページでは、ニュースのヘッドラインとして2つ掲載していますが、いずれも中国との関係を伝える内容となっています。
一つは不法で危険な花火をオランダ市場へ入れないための協定を中国と締結したこと、もう一つはオランダと中国が河川に関する技術協力をすることになったこと、を報じています。さらにニュースのページを見ると中国との関係を示す項目があり、オランダにおける中国の進出がめざましいように感じられます。

②スポットライト欄:2つの題目があり、一つは「デルタ・プログラム」について述べています。「デルタ・プログラム」は、よく知られているようにオランダの国家プロジェクトであり、干拓によって国土を造成すると同時に水資源の確保を目的としています。このスポットライト欄では、次のように述べています。「将来の世代のためにオランダを安全で住みやすい国にするために、さらに水資源の利用を最適にするために、デルタ・プログラムでは著しい努力が払われています」

もう一つのテーマは、「アルコール、ドラッグと自動車運転」と言うタイトルです。「あなたのアルコール血中濃度は、0.05%を超えてはいけません」
と述べているので、オランダでも酒気帯び運転が多いようですね。

③トピックス欄:次のような項目が並んでいます。
・航空、・建設と維持、・運転免許、・専門技術と革新、・航空輸送、・輸送手段、
・移動とアクセス容易性、・公共交通機関、・道路と交通安全、・地域計画、
・環境対応、・水資源

④人気のページ :次のようなテーマが示されています。
・国境地域の連携、・スキポール(アムステルダムの国際空港のことです)、
・道路交通信号と規則、・組織

以上、見てきたように環境調和を重視してきたオランダではありますが、このホームページでは環境問題をことさら重大視して扱ってはいないように思われます。環境問題に対する関心の低い他の国々に比べて、オランダでは国民の環境への関心のレベルが高く、あえて細かな事柄にふれる必要がないのではないかとも考えられます。
オランダの環境調和への対応に関しては、別の機会に詳しく述べてみたいと思います。
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by wister-tk | 2012-02-06 20:20 | 海外の情報