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COP16とは?その結果と課題(5)

前回まで4回にわたってCOP16について学習してきました。今回は5回目(最終回)として2011年、南アフリカ・ダーバンで開催されるCOP17へ向けた動向と課題解決の枠組み、さらにわが国の寄与などについて学習したいと思います。

問題解決のためのわが国の役割
「京都議定書の延長」は、一部の先進国のみが義務を負い、その結果、世界全体の温室効果ガスの排出削減は進まないとの理由から、わが国は京都議定書の「延長反対」を主張してきました。したがって「どう言う理由で日本が反対なのか」について各国の理解が得られるよう説得力のあるメッセージを発信する必要があると思います。さらに、海水面の上昇などで温暖化の影響を最も受け易い太平洋の島国などと提携し、わが国の主張を途上国に支持・拡大させると言った戦略も必要でしょう。
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<ツバルは水没するか?:http://4travel.jp/overseas/area/oceania_micronesia/tuvalu/travelogue/10234152/より>

また、全地球的な温室効果ガスの排出量を大幅に削減するためには、途上国における排出削減が不可欠です。現行の京都メカニズムのうち、途上国の温暖化対策や必要な環境整備に対し資金と技術、そして人材交流などあらゆる面で積極的に支援する「クリーン開発メカニズム(CDM)」は、審査の長期化やプロジェクトの一部の国への集中化などの問題が生じています。このためこれを補完する新たなメカニズムが必要とされています。そこでわが国は、個々の途上国に対して有効な削減プロジェクトを提案・推進するための新しい「二国間メカニズム」を発案して、これを新たな枠組合意に反映されようCOP17において協議することが期待されています。新しい「二国間メカニズム」の実現のためにわが国としては、途上国の求めるメリットにも合致する排出削減事業を具体的かつ着実に推し進めると同時に、新しい「二国間メカニズム」が備えるべき途上国への支援条件や利益還元に係るルールについて提案し、国際的な理解を得ることが必要なのです。
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<地熱発電所:・森・北海道:http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/energy/fire_power/mori_ps.htmlより>

福島原子力発電所事故の影響
ところで、福島原子力発電所事故により1年間石油火力発電で代替するために増加する温室効果ガスの排出量は、わが国の年間総排出量の約1.8%に相当すると言われています。さらに運転を停止・見合わせている原子力発電所は他にもあります。このため「京都議定書」の第一約束期間(2008~2012年)におけるわが国の温室効果ガスの削減目標は1990年比で6%減ですが、そのうち5.4%はすでに達成し残りの必要削減率は0.6%となり、目標達成は目前となっていました。しかし、原発事故による温室効果ガスの排出増のため削減目標の達成が危ぶまれています。こうした状況から京都議定書の延長の可能性を考慮した現実的な対応も必要とされています。

さらにCOP16では、先進国の排出削減の数値目標はコペンハーゲン合意(COP15)に基づくとされていますが、先にも見たとおりわが国の削減目標値は、2020年において1990年比で25%削減を表明しています。しかし、福島原子力発電所事故によって25%削減目標の達成が難しくなっています。わが国の「エネルギー基本計画」によれば、2020年までに原子力発電所を9基新設および増設し、また、稼働率を85%(2009年度実績:65.7%)に上げることを目指していました。今回の事故により原子力発電所の新設あるいは増設は、現時点では極めて困難と考えられているため、25%の削減目標を達成できるかどうか懸念されています。このため政府内からも25%削減目標について見直しを示唆する意見が出ているとのことです。
<詳しくは下記の資料をご覧ください>
白戸千啓:COP16の概要及びCOP17に向けての我が国の課題、立法と調査、No.316」、
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2011pdf/20110501077.pdf
澤 昭裕:COP17へ、日本がなすべきこと、ECO JAPAN, 2011.1.17.公開
http://eco.nikkeibp.co.jp/em/column/sawa/21/index.shtml
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<大規模な太陽光発電施設:ネバダ州・米国http://square.umin.ac.jp/isamu-k/north%20america.htmlより>

国際社会におけるわが国の立場
これまで見てきたようにCOP17では、条約締約国会議(COP)の下での「新たな枠組みの構築」と「京都議定書の延長」の可能性が考えられています。しかし、一方、わが国では原子力発電所の事故などにより温室効果ガスに関しては排出削減どころか排出増加にさえなりかねない状況にあり、京都議定書第一約束期間の目標達成も不確実であることなどから、COP17での交渉におけるわが国の主導力の発揮は極めて難しい状況になると考えられています。また、COP17が地球温暖化防止協議の最終的な場となること、さらにCOP16では京都議定書の延長に反対した国は、日本の他2か国のみだったことなどを考慮すると、京都議定書延長の可能性が高いと言われています。

こうした状況の下にあって地球温暖化対策に関して、今後、わが国が国際的な流れの変化にどのように対応して行くべきかについては、種々の意見があると思いますが、以下に示す寺島実郎氏の提案は示唆に富んでいると思います。

①京都議定書の第1約束期間の削減義務(6%)をきちんと果たすこと
②「京都議定書の方法論」では限界だという認識を明確にして、トップダウン方式から手法を変え、日本的個性を生かした「プレッジ&レビュー」(※)のルールを確立して世界に主張すること
(※)国や組織が実現可能な目標を主体的に設定し(プレッジ)、その結果を第三者機関など何らかの形で審査(レビュー)する方式
③国境を越えて動くヒト、モノ、カネに広く薄く課税し途上国の援助支援に充てる「国際連帯税」という考え方も必要なこと(「グリーン気候基金」と関連して注目される)
④アジアと東南アジア諸国連合をにらみフィリピン、インドネシアなどと共同で日本の技術を使い、日本の排出量削減につながる「2国間CDM(クリーン開発メカニズム)」のような枠組みを模索すること
⑤中国の影が背後にちらつく途上国の意志は、日本や先進国がいくら大きな削減目標を掲げようが、数値は途上国との間の共通のスキームにはならずに、途上国と先進国との間には厚い壁が立ちはだかっていることを認識すること
⑥これからの地球温暖化対策にとって、「国際連帯税」や「2国間CDM」など、途上国と先進国の間の政策論的リンケージが大変重要なポイントであり、そうでなければ実体的に意味がないというのが現況であること
⑦これがCOP16以降の大きな変化であり、日本はこの節目で途上国と先進国を結ぶ架け橋となるために、一歩前に出なければならないというところにきていること
<詳しくは下記の資料をご覧ください>
寺島実郎:京都議定書の方法論は限界、日本式ルールの確立を、日経エコロジー、2011.1.21.」、
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110117/105674/

寺島実郎:グリーンファンドで合意のCOP16,国際的な潮流の変化見極めた対応を、ECO JAPAN、
2011.1.31

http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/terashima/18/index.shtml

以上
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by wister-tk | 2011-07-21 11:20 | 環境学習など