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COP17の結果と今後の課題について

2011年11月28日から12月11日まで南アフリカのダーバンでCOP17(第17回 国連気候変動枠組み条約締約国会議)が行われました。2010年のカンクンで行われたCOP16での「カンクン合意」(詳しくはこのブログの2010年12月~2011年11月にあります)に基づいて懸案事項が討議されたのです。最大の課題であった米中の2大排出国をも参加させる「新たな法的枠組み」の構築は、今回も失敗に終わりました。しかも既にその役割を終えたはずの「京都議定書」の延長を決定してしまったのです。
以下に「ダーバン合意」の内容とその問題点、さらに日本の対応と今後の課題について学習したいと思います。

「ダーバン合意」の内容:
①先進国(離脱した米国を除く)に温暖化ガス削減義務を課す「京都議定書」は、2012年末に第1約束期間(2008年~2012年)を終えますが、これを第2約束期間(2013年~)へ延長することで合意しました。
②京都議定書の延長期間(第2約束期間)としては、2013~2017年の「5年間」と2013~2020年の「8年間」の2通りが提案され、結局、結論は2012年カタールのドーハで開催されるCOP18に先送りされました。
③COP18において第2約束期間の期間や削減目標を盛り込んだ「改定京都議定書」を採択することとなりました。
④2020年に発効させることとした「新たな法的枠組み」には、京都議定書で削減義務を負っていない2大排出国の中国と米国を含むすべての国が参加することで合意されました。
⑤「新たな法的枠組み」を議論するために作業部会を設け、2015年までの出来るだけ早い時期に「新枠組み」を採択し、2020年には発効させるとしました。

図-1 京都議定書の延長と新枠組みの行方(朝日新聞より)
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「ダーバン合意」の問題点:
「京都議定書の延長」と将来の「新たな法的枠組み」のどちらとも具体的な内容については、2012年以降に先送りし、ダーバン枠組みの「法的位置づけ」についても、議定書や協定などと言った複数の案を示したにすぎません。
さらに各国が「改定京都議定書」を批准するには1~3年必要とみられ、2013年初めの時点では法的な拘束力をもたない空白状態が生じるのではないかとも言われています。
また京都議定書の第2約束期間の長さによっては、ダーバン枠組み発効までの間に空白の期間が生じる可能性がありますが、こうした期間に不都合が生じないような措置も課題のひとつと言われています。
さらに今回は「新枠組み」に参加を表明したとされる2大排出国の米中が、「新枠組み」の具体化の過程においては必ずしも積極的な貢献をしないのではないかとの懸念もあります。
したがって「新たな法的枠組み」が具体化するまでに、相当の困難と紆余曲折があるものと考えられます。2011年12月13日、カナダが現行の「京都議定書」から脱退することを表明し、また一部の情報では米国の大統領選挙後の動きとして、「新枠組み」への参加に疑問符が付き始めているとのことです。また日本においては、特に財界の評価として今回「新枠組み」の構築に失敗し、京都議定書が延長されたことに賛意を表していると言った態度などは、好ましいこととは言えないでしょう。

日本の対応:
「ダーバン合意」により2013年から第2約束期間を設ける京都議定書の「延長」が決まり、欧州連合(EU)や途上国などが参加します。しかし、日本はロシア、カナダとともに、京都議定書の第2約束期間の設定には反対はしませんでしたが、延長には参加しないことに決定しました。その理由としては、温暖化ガスの排出国が中国を始めとする途上国にシフトし、いわゆる先進国の排出寄与率が減少してきた状況のもとでは、「京都議定書の役割」は既に終わったとの考えからと思われます。その意味で日本は、「新たな法的枠組み」の構築を強く主張してきた訳です。

日本は2013年以降、「新たな法的枠組み」が発効するまでの間、温暖化ガスの排出について法的規制を受けない状態となります。しかし、日本は第2約束期間には参加しないけれども、京都議定書から脱退するわけではなく、批准国であることには変わりないことになります。さらに日本は、第1約束期間(2008年~2012年)で平均6%の削減義務を負っています。しかし、2013年以降は削減義務を負わなくなりますが、数値目標を掲げて自主的に削減に取り組むことにしています。

現在、日本は温暖化ガスの排出量を2020年までに1990年比25%減らすと国際的に公約しています(すべての主要排出国が参加する法的枠組みの構築などが前提ですが)。この排出削減目標は、今後、福島原発事故の影響をを受けたエネルギー政策の抜本的な見直しが求められるため不確実な面のあることは否定できませんが、さしあたっては「25%削減目標」に基づいて、自主的に排出削減への努力をすることになります。しかし、現実問題としてはこの削減数値の改訂は必要になることが既に予想されています。

また、「クリーン開発メカニズム(CDM)(途上国の温暖化対策支援によって排出枠を取得できるシステム)」については、途上国の中からは「第2約束期間に参加しない国にはCDMを利用させない」との主張もありました。しかし、今回の「ダーバン合意」では、日本のCDM利用の拒否決定はなされておらず、従来どおり利用可能と考えられています。ですから、日本はCDMを活用してこれまでどおり地球温暖化防止の取り組みに寄与していく方針です。


今後の課題:
本来ならば2009年のCOP15・コペンハーゲン会議において「新たな法的枠組み」を決定し、第2約束期間が開始される2013年から「新枠組み」が発効に移されるべきだったのです。しかし、米国が参加せず中国や途上国が反対する構図が、2010年のCOP16での「カンクン合意」においても継続しました。その結果として「京都議定書の延長」という、地球温暖化防止の観点からはまったく不合理な決定へと流れしまったのです。

その背景には経済的メリットを優先させるといった旧態依然たる体質が、まだ世界を支配していることが挙げられます。裏を返すと地球環境問題に名を借りた経済闘争であり外交戦略に重点が置かれていると言うことが考えられます。従来から環境対策には極めて熱心で積極的だった欧州連合(EU)が、条件付きであるとしても「京都議定書の延長」に傾いた背景には、排出権取引の金融上のメリットを失いたくないと言う理由が指摘されています。さらに途上国は、環境対策支援にかかわる経済援助を今後とも継続して受けることを目的に行動しているとも指摘されています。しかし、一方で途上国のうち島嶼諸国やアフリカ中央部の諸国は、著しく地球温暖化の影響を受けているといった事実から米中およびインドなどの排出削減義務を負うことを強く主張した経緯もありました。

図-2 温暖化ガス国別排出割合(2009年)(朝日新聞より)
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図-3 2030年温暖化ガス排出予測(garbagenews.comより)
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今回のダーバン会議は、12月9日の期限を延長して進められ決裂寸前の状態から急転直下で合意に至った背景には、第1に中国が温暖化ガス排出率で世界第1位になったことにより態度を軟化してきたことがあげられます。さらにインドも中国にならったようですが、こうした動きに米国がしぶしぶながら態度を軟化してきたようです。第2には欧州連合(EU)が、条件付きながら「延長」を表明して途上国側を取り込んだことが大きな要因と考えられています。とくに欧州連合(EU)は、今回のとりまとめに積極的に動きおおいに貢献したかのように、わが国では報道されていますが、内情は必ずしもそうではなく、欧州連合(EU)がかなり自己中心的に行動した結果とも受け止められているようです。

これに対して日本は、本来あるべき姿である「米中や途上国も削減義務を負う新枠組みの構築」を主張して譲らず、結局「京都議定書の延長」には不参加としました。その結果、今回の「ダーバン合意」には何らの役割も果たせず、日本なしでの合意をさせてしまった、と報道されていますが、実は日本こそが正しい主張をとおし、また「新枠組み」構築のための「作業部会」の設置など大いに貢献したとの評価も聞かれます。

「米中や途上国も削減義務を負う新枠組みの構築」をすると言った主張それ自体は、本質論であり正しい方向ですが、交渉をまとめ今後の日本の主張を発展させていくためには、不本意ではあってもやはり「延長」には参加すべきではなかったかと思われますがどうでしょうか。
各国の地球温暖化に対する危機感を高めるように説得していくことも、環境先進国として進もうとするわが国にとって重要なことと思います。今後は法的な排出義務を負う第1約束期間の6%削減を確実に果たし、さらに法的な排出義務を負わない期間についても、2020年に向けて1990年比で25%削減のためのビジョンを示し、関連する技術開発を進めて国際的な信頼度の構築に全力を傾けるべきではないでしょうか。
またさらに日本としては、米中の2大排出国が本気で「新枠組み」に取り組んで行く方向で、積極的にイニシアティブを取っていくべきでしょう。
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by wister-tk | 2011-12-14 16:52 | 環境学習など