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「環境倫理」とは?

 われわれが対象とする環境には、主に生き物にかかわる自然環境、食糧生産に係わる生産環境、さらに人の生活の場としての生活環境などがあります。これらの環境は、それ自体および相互に生態系システムとして関連し、ローカルからグローバルまで地域的な広がりをもっています。環境を保全するうえで従来から前提としてきたのは、「環境保全の目的はあくまでも人間が主体である」と言う「人間中心主義」の考え方でした。

 しかし、近年、欧米においては「地球全体主義」を基礎とした考え方が中心となっています。つまり「この地球では人間だけでなく生物種や生態系などにも生存の権利があるので勝手にそれを否定してはならない、また現在の世代は未来世代の生存の可能性に対して責任を持たなければならない、さらに地球の生態系は閉鎖系の世界であり、また資源とエネルギーは有限なので現在の世代がこれらを使い果たさずに次の世代も利用できるよう保証しなくてはならない」と言う考え方です。
 つまり、①自然の生存権、②世代間の平等性、③地球全体主義、の「三つの基本原則」を守ることが必要なのです。これが「環境倫理」の基礎的な考え方です。

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  [図はmizunosato.exblog.jpより引用]

 このうち「自然の生存権」については、われわれ人間には「種の破壊」(自然生物の利用)がどこまで許されるのか、と言った問題があります。すなわち、

[第1の場合]:人間個体の生存のためだけでなく、個人の快楽のためにも「種の破壊」(自然生物の利用)が 許されるのか? 
[第2の場合]:人間個体の生存のためなら許されるが、個人の快楽のためには許されないのか?
さらに
[第3の場合]:第1 、第2のいずれの場合も許されないが、人間の種の生存のためには止むをえないので許されるのか? 
などの選択の問題です。

 これをさらに具体的に個々の利用形態に分けてみますと、
① 趣味や贅沢のための利用、
② 生活のための利用、
③ 個人の生存のための利用、
④ 人類の存続のための利用、
など4つの場合です。

 この中で無条件で許されるのは、④の場合のみであり、世界の世論の方向は、①の場合を否定し、②~③の場合の中間の考え方となっています。
 種の存続は不可逆的であり欧米の考え方としては、保護の対象を「種」におく思想が中心となっていて、「絶滅の恐れのある自然生物を、趣味や贅沢に利用してはならない」と言うのが、野生生物保護の基本的な考え方であり、自然と人間の共存の思想の基礎となっています。この「環境倫理」の考え方は、現在では「生物種の多様性の保全」と言う面で生かされています。

 環境保全のために上に述べた「三つの基本原則」のうち、「自然の生存権」をどこまで守るかはわれわれにとって重要な課題です。実際的な自然環境の保全は、自然をそのままの状態に放置することではありません。また環境への対応は単なる調査や測定・分析にとどまるものではなく、これらを基礎にあくまでも人間が自然と共生するための環境の整備が中心になります。

 つまり環境保全には、人間と自然との共生を図りながらも自然環境を所要の状態に維持管理していくことが必要であり、そのためにはまず災害の防除など安全を第一にして、結果的に自然に手を加える必要が生じます。つまり種々の構造物や施設などの構築が必要となり、そのために地形の改変、水圏の損傷、さらに生態系の損傷、ひいては野生生物を絶滅へと追いやることにもなりかねません。ですから各種の地域環境の整備においては、環境保全をあくまでも人間と自然との共生の観点から、これをいかに生態システムに調和させるかが中心的な課題となるのです。
<参考文献>:加藤尚武:環境倫理学のすすめ、丸善、1991
          藤井 卓:環境にやさしいコンクリート、鹿島出版、2001
by wister-tk | 2012-01-12 17:53 | 環境学習など