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COP11を知ってますか?

1.COP11とは
「COP」とは、国際条約を結んだ国が集まる会議(締約国会議:Conference Of the Parties)の略語です。単に「COP11」と言うと、①2005年11月、カナダ・モントリオールの気候変動枠組条約締約国会議、②2012年7月、ルーマニアのラムサール条約締約国会議、そして③2012年10月、インド・ハイデラバードの生物多様性条約締約国会議などがあります。ここでは③の生物多様性条約締約国会議について述べたいと思います。

さざまな生き物やそれらが生息している環境を守り、その恩恵を将来にわたって持続させるために、1992年6月、リオデジャネイロの環境サミットで提案されたのが「生物多様性条約」です。この条約の前回の締約国会議「COP10」(10回目)が、2010年10月、愛知・名古屋で開催されました。
(「生物多様性」については、このブログの2010年2月投稿「生物多様性とは? COP10とは?」をご覧ください)

ここで言う「COP11」とは、2012年10月8日~20日までインドのハイデラバードで開催された生物多様性条約第11回締約国会議のことです。

2.COP10名古屋での結果について(復習)
COP10名古屋会議での結果を簡単に復習すると以下のようになります。
本来は「生物種の保存」と言う純然たる環境問題として生態系の保全が議論の中心であったはずですが、COP10ではもはや純然たる環境問題を超えて「経済問題」の領域へ進んでしまいました。さらに問題は、先進国対途上国と言った「南北問題」へと変貌し、さらに「政治問題」へと発展してしまったのです。

議論の焦点は、「生物遺伝資源」をどう扱うかにあてられました。医薬品などの原料となる有用な植物や微生物である「生物遺伝資源」の多くは、途上国が供給源になることが多いので、「生物多様性条約」では原産国の主権を認め、持ち出しには事前同意が必要であると規定しています。しかし、生物資源の範囲などがあいまいなため、途上国側はこうした規定を明確化するよう求めてきました。

★生物遺伝資源の利益配分ルール「名古屋議定書」関係の主な結論:
(1)植民地時代までさかのぼって利益配分することは認めず、議定書の発効以降に対象を限定する。
(2)製品の収益の一部を支払い、研究や技術面などでも協力する。
(3)生物遺伝資源の不正取得の防止措置については、利用国が監視部署を一つ以上設置する。
(4)企業が製品を特許申請するさいの遺伝資源の情報開示は行わない。

★生態系保全のための世界共通目標「愛知ターゲット」の主な結論:
(1)2020年までに生態系保全を確保する目的で、生物多様性の損失を止めるための行動をおこす。
(2)森林を含む動植物の生息域の損失速度を可能なだけゼロに近づけ、少なくとも半減させる。
(3)「保護区」の目標については、少なくとも陸域で17%、海洋では10%を効果的に保護する。
(4)「愛知ターゲット」を実施するための資金を現在よりも大幅に増やす。
(「COP10名古屋」の結果については、このブログの2010年10月投稿「COP10は環境問題の「多様性」を示した!!」をご覧ください)

3.COP11ハイデラバードでの結果について
COP10名古屋では、各国が現状以上の種の絶滅や貴重な自然の減少を防ぐことに合意し、「愛知ターゲット」が採択されました。
COP11では、「愛知ターゲット」の(4)に沿って援助資金の増額が議論されました。財政事情が厳しい先進国、特に日本は数値目標に難色を示し、目標数値を「2倍」ではなくすでに合意されている「実質的な増加」にとどめるべきだと主張しました。しかし、途上国側は数値目標の設定を強く求め、先進国側がこれに妥協した結果となりました。

つまり生物多様性の保全目標「愛知ターゲット」を実現するため、2015年までに途上国への資金援助を倍増させることなどを決定したのです。日本を含む先進国側と中国を含む途上国側との間で意見が対立しましたが、結局、援助資金の増加額は途上国側の要求に従った結果となりました。

一方、中国やインド、ブラジルなどの新興国を支援国に組み入れるべきとの日本の主張に対して、中国やブラジルは「途上国」に義務を課すべきではないとして強硬に反対しましたが、最終的には妥協する結果となりました。

[COP11 ハイデラバードのロゴ]
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資金調達に関する合意
(1)「愛知ターゲット」の達成に向けた途上国の努力を支援するために、先進国は資金を増加させることを合意した。
(2)先進国は2015年までに生物多様性に関連する途上国への資金援助を暫定的な数値目標として倍増し、国際的に合意された生物多様性目標および2011年から2020年の生物多様性のための戦略的計画の主な目標達成に向けた途上国の努力を支援するため、2020年まで少なくともその額を維持することを合意した。
(3)最終的な数値目標は、2014年に韓国で行われる予定のCOP12において、目標に向けての進捗状況の見直しを行ってから決定することになった。
(4)中国やインド、ブラジルなどの新興国も、後発の途上国を援助するいわゆる「南南協力」によって、支援国として援助資金倍増の対象国に含めることを決定した。
(5)インドおよびアフリカの数か国を含む途上国は、生物多様性条約の事業に対する彼らの従来の基本資金を超えた追加資金を供出することを、COP 11において初めて誓約した。

海洋の生物多様性に対する特別な配慮
(1)生物多様性条約の193の締約国は、生態学的あるいは生物学的に重要であるとの理由から、植物界や動物界の「隠された宝物」を含むことで知られる海域を、「海域の多様性リスト」に格付けすることで合意した。
(2)サルガッソ海*、トンガ諸島およびブラジル海岸沖の主要なサンゴ礁は、世界の海洋を持続的に管理する新たな取り組みの一環として、政府による特別な配慮を受ける海域範囲に含めることを合意した。
(これらの地域の多くは、国家の法的な管理外にあり、現状ではほとんど、あるいはまったく保護を受けていないような状況にあります)

<*サルガッソ海:西インド諸島からアゾレス諸島までの北大西洋の広大な海域、北大西洋の亜熱帯循環の内側の、ほとんど流れのない海域(およそ20〜-40°N, 30〜-80°Wの範囲)を言う。ホンダワラ類(Sargassum)が多く漂っていることからこの名が付けられており、藻海あるいは大藻海と訳されます>

(3)その他の重要な決定事項のひとつとして、 海洋および沿岸地域のインフラ整備やその他の開発プロジェクトに係わる「環境影響評価」においては、生物多様性を考慮するための新たな措置を設定することに合意した。


以上、COP11ハイデラバードの結果について概略を述べましたが、生物多様性に関わる課題は、地球温暖化の課題と同様にわれわれ人類にとって極めて重要な問題であるにも関わらず、各国間の合意が難しい状況にあります。

特に先進国と途上国との間の対立が激しく、全面的な合意に至ることは困難なように思われます。これがいわゆる「南北問題」ですが、さらに近年においては中国、インド、ブラジルなどの新興国が台頭し先進国と途上国の3つのグループが、それぞれ三者三様の異なる主張を展開して、生物多様性条約の目標達成を困難にしているように思います。

今回のCOP11において、支援資金の倍増を求められたことによって、最大の支援国である日本は厳しい立場に立たされました。しかし、中国やインド、ブラジルなどの新興国も、後発の途上国を援助するいわゆる「南南協力」として、支援国側に組み込むことに成功しました。これによって途上国への資金援助の総額を増大させる効果をもたらす結果となったことは、極めて大きな成果と言われています。

今後の課題としては、COP10の重要な成果である「名古屋議定書」の発効に係わる批准です。発効には50カ国の批准が必要なのですが、名古屋での採択から既に2年が経過しているにもかかわらず、現在までに批准したのはガボン、ヨルダン、ルワンダ、セーシェル、メキシコ、ラオスの6カ国だけと言われています。肝心の日本もまだ批准していません。
批准が遅れている理由としては、各国において国内制度を議定書に対応するよう整備する必要があること、さらに自国が出来るだけ有利になるよう様子をうかがっていること、などがあると言われています。

また、COP10名古屋の成果である「愛知ターゲット」では、生態系保全へ向けて20項目の国際目標を掲げ数値目標を初めて設定しました。これらの数値目標に対して、各国は国家戦略をつくり、保全すべき陸域や海域の割合などの目標を設定しなければなりませんが、こちらの方の取り組みも遅れているのが実情です。日本は2012年9月末に、新たな「生物多様性国家戦略」を閣議決定したことをCOP11において報告し、他国へ「国家戦略」への早期の取り組みを促しました。

「名古屋議定書」および「愛知ターゲット」ともに日本で起案された国際規約であることからも、今後ともわが国がイニシアチブをとって国際貢献に寄与するよう、大いに期待したいものです。
<参考資料>:国連環境計画(UNEP)・生物多様性条約(CBD)のホームページCOP11 (http://www.cbd.int/cop11/)を参照
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by wister-tk | 2012-10-28 16:49 | 海外の情報