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安全な原発:トリウム溶融塩炉ってなーに?(1)

1.はじめに
発電用原子炉には、現在、第1世代から第3世代までの形式があり、いずれも「軽水炉」と呼ばれる形式です。原理的には、水を満たした圧力容器の中でウランの核分裂を起こして生じるエネルギーによって蒸気を作り、この蒸気で発電機を回して発電する方法です。

福島第1原子力発電所の原子炉は、第2世代の中でも旧式な軽水炉だそうです。2011年3月11日に発生した福島の原発事故では、甚大な被害を生じたことはよく知られています。なかでも放射性物質の飛散・流出による被害は計り知れない損失を与え、過去に例を見ない環境破壊ともなりました。その背景にはこれまで用いられてきた第2世代の「軽水炉」の持つ原理的な欠陥が指摘されています。これを踏まえて現在稼働している第2世代の軽水炉に、給水ポンプや外部電源などの装置を多重化したり、その他の改良を加えたりして、「第3世代の軽水炉」へと向かっている状況にあります。

しかし、第3世代の原子炉であっても基本的に「軽水炉」である以上、原理的には福島原発事故による被害や環境破壊と同様の事態を発生する可能性は、否定できないと思います。
ところがこの「軽水炉」とは全く異なった原理に基づく、より安全な原子炉があると言うのです。それは一般に「第4世代の原子炉」と呼ばれる原子炉のひとつで、「溶融塩炉(ようゆうえんろ)」と言うものだそうです。
以下においては、まず「軽水炉」と「溶融塩炉」について学習し、次いで両者を安全性の面から比較してみようと思います。さらに最初の原子力発電方式の採用に当たって、より安全と言われる「溶融塩炉」ではなく、「軽水炉」が何故採用されたのでしょうか? このあたりの疑問についても、少し勉強してみたいと思います。

2.現在の原子炉
現在、世界的に使われている大部分の発電用原子炉は、第2世代の軽水炉と呼ばれる形式であることは、さきにも述べました。「軽水」と言うのは、私たちが日常使っている水道水などの普通の水のことです。圧力容器内の水中でウランなどの核燃料に核分裂を起こさせて発生するエネルギーを、水を媒体として取り出して、このエネルギーを電気に変換するのが軽水炉による発電方法です。

軽水炉には2種類の形式があり、ひとつは「沸騰水型軽水炉(Boiling Water Reactor:BWR)」で、もうひとつは「加圧水型軽水炉(Pressurized Water Reactor:PWR)」です(図-1)。
沸騰水型軽水炉では、燃料が入っている圧力容器の中に満たされている水が、燃料の核分裂によって沸騰して蒸気になります。この蒸気を直接タービンに送って発電機を回して発電します。福島第1原子力発電所は、この沸騰水型軽水炉を用いた原発です。福島第1原子力発電所の事故は、外部からの送電が停止して給水ポンプが止まり、圧力容器内の水の補給ができなくなったため核燃料が過熱し、結果として固体の燃料棒が溶けてしまい、いわゆる「メルトダウン」を起こしたのです。

 一方、加圧水型軽水炉も基本的な仕組みは沸騰水型軽水炉と同じですが、圧力容器内の水を蒸気にはしないで高温高圧の状態にして、発生した熱を熱交換器をとおして「2次系」と呼ばれる、圧力容器内の水とは別の容器の水を沸騰させ蒸気にし、これをタービンに送って発電機を回し発電します。

図-1 軽水炉(ウラン原発)の仕組み [1]
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出典:http://financegreenwatch.org/jp/?p=7614

3.第4世代の原子炉:溶融塩炉
第4世代の原子炉である「溶融塩炉(Molten Salt Reactor : MSR)」は、軽水炉とは考え方や構造がまったく異なっています。例えば、燃料にトリウム[*参考事項参照]を使う「トリウム溶融塩炉」では、冷却材として水は使わず、「溶融塩」[*参考事項参照]と呼ばれる液体に燃料のトリウムやプルトニウムを混ぜた液体燃料を使います(図-2)。

つまり溶融塩炉は、フリーベと呼ばれるフッ化リチウム・フッ化ベリリウム2元系の溶融塩(LiF-BeF2)に、トリウムをフッ化トリウム(ThF4)の形で混入したフッ化物の混合溶融塩(LiF-BeF2-ThF4、約500℃以上で液体)に、さらに核分裂性物質として重量で約1%程度のフッ化ウラン(UF4)またはフッ化プルトニウム(PuF3)を混合した液体燃料を使用する原子炉です。炉心部分は、この燃料塩と黒鉛減速材および数本の黒鉛製の制御棒で構成されています。
つまり溶融塩炉では、液体の溶融塩が燃料であり同時に熱循環の媒体でもあり、軽水炉における核燃料と冷却水の役割を同時にはたしていると言うわけです。

図-2 溶融塩炉(トリウム原発)の仕組み [1]
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出典:http://financegreenwatch.org/jp/?p=7614

通常は燃料塩自体を炉心の外部に循環させ、炉外の熱交換器をとおしてNaBF4-NaF溶融塩(ホウフッ化ナトリウム・フッ化ナトリウム)からなる二次冷却材に熱を伝えます。さらにこれを熱源として蒸気発生器で発電用水蒸気を作ります。この熱交換器は中間熱交換器と呼ばれ、高温の水蒸気(538℃位)が得られ、熱効率が約44%程度と高いことが知られています。
次回は軽水炉と溶融塩炉の安全性について比較して学習したいと思います。(次回へ続く)

<参考文献>
[1]日経ビジネス(電子版) 2012年2月6日号、山根 小雪:未来の事故を防げるか・次世代原発
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20120202/226800/?mlp&ST=pc
http://financegreenwatch.org/jp/?p=7614
[2]NPO「トリウム熔融塩国際フォーラム」 http://msr21.fc2web.com/  

[参考事項]
*トリウムとは?
トリウム (英: thorium) は原子番号90の元素で、元素記号は Th である。銀白色の金属。モナザイト砂に多く含まれ、多いもので10 %に達する。モナザイト砂は希土類元素(セリウム、ランタン、ネオジム)資源[いわゆるレアメタル*]であり、その副生産物として得られる。主な産地はオーストラリア、インド、ブラジル、マレーシア、タイ、[中国*]。*筆者注記
トリウム232が中性子を吸収するとトリウム233となり、これがベータ崩壊して、プロトアクチニウム233となる。これが更にベータ崩壊してウラン233となる。ウラン233は核燃料であるため、その原料となるトリウムも核燃料として扱われる。
危険性
燃焼性:粉末状態のトリウムは自然発火性で、注意して扱うべき金属である。
放射性:トリウムは半減期の長いアルファ線源であり、外部被曝より内部被曝のリスクが高い。 (「Wikipedia」より引用)


*溶融塩とは?
溶融塩(ようゆうえん、英:molten salt)、食塩などの陽イオンと陰イオンからなる塩で溶融状態にあるものを溶融塩という。 溶融塩の中で100-150°C以下の温度で液体状態にあるものは常温溶融塩またはイオン液体と呼ぶ。
性 質
溶融塩中のイオンは、水溶液中のイオンはと異なりイオンの周りに中性の水分子が配位しないため、陽イオンと陰イオン間の距離が近く、イオン間のクーロン力が強い。このため、水溶液中のイオンとは異なる性質を示すことが多い。これにより次のような特徴が生じる。
○主な特徴
・イオン導電率が高い、・電位窓が広い、・密度、粘性率、表面張力が水に近い、・高温で低蒸気圧、・他の塩類の溶解度が大、・塩類の組み合わせで溶融温度や溶媒特性の調節可能、・有機溶媒と混和しない、・化学的に安定、不燃または難燃性大、・高放射線耐性、・固体から液体への融解熱が大
用 途
・金属製錬、・溶融電気分解法よる化学物質製造、・太陽熱発電用蓄熱材、・太陽熱発電用熱媒体、・抽出分離用溶媒、
・レドックス・フロー電池用溶媒、・溶融炭酸塩型燃料電池、・溶融塩電池、・キャパシタ用溶融塩電解液、・電磁ポンプ、
・溶融塩原子炉用冷却剤
第4世代原子炉の一つの概念である溶融塩原子炉(MSR)では、フッ素系の溶融塩を一時冷却剤として用いると共に、その中に核燃料であるUF4を溶解して使用する。この型の原子炉はアメリカのオークリッジ国立研究所で1965年に実験炉が作られた。そこではLiF-BeF2(フリーベ)を溶媒とし、ThF4-UF4を溶解した溶融塩が用いられた。 第4世代原子炉では、Lif-BeF2-ThF4-UF4系以外にLif-Bef2-ThF4-UF3.9系、NaF-ZrF2-超ウラン元素系の溶融塩などの使用が検討されている。(「Wikipedia」より引用)
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by wister-tk | 2013-02-22 20:36 | 環境学習など