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安全な原発:トリウム溶融塩炉ってなあーに?(5)[続き]

3.指摘されている熔融塩炉の問題点・課題
(1)米国オークリッジ国立研究所の熔融塩炉での問題点([11]ATOMICAより引用)
米国オークリッジ国立研究所ORNLが研究開発した熱出力7.4MWの熔融塩炉MSREが、1967年から2年半にわたり649℃の燃料温度で運転された。このうち最後の約1年はウラン233を燃料として運転された。この成果に基づき1973年にEbasco社を中心とするグループから電気出力1,000MWのMSBRの設計が発表された。

当時の技術では、
①700℃以上の高温液体である溶融塩を使った発電システムに十分に耐える材料の実用化に見通しがなかったこと
②アイナー-8(ハステロイ-N)という材料が有望であったが、実用化には多くの課題が残されていたこと
③アルファ線に加え強いガンマ線が発生するトリウム溶融塩を冷却材として使用するため、厳重な遮へいと遠隔操作が必要なことなど、
実用化には多くの開発課題があった

★上記の問題点に対する意見
上記のうち熔融塩実験炉MSREの運転期間については、 「1965年6月に臨界に達した後、2年6か月間の運転を実施し、1969年12月に終了した」実績があります[15]。
また、①②については、既に熔融塩炉MSREにおいて2%チタン-ハステロイ-Nにニオブを1%添加することで解決しています[16]。
また、③については、トリウム熔融塩炉では核燃料は液体であり、固体燃料と異なり遠隔操作で濃度調節・輸送などを行うため、ガンマ線の遮蔽には全く困難がないと言われています。ORNLの熔融塩炉MSREでは、ウラン233を用いた実験で成功しています[15]。

以上のように指摘された問題点は、事実と若干異なるネガティブな点があるように思われます。第4世代国際フォ-ラムGIFで採用された6種の「第4世代原子炉」においても、「熔融塩炉」に関する記述は、ややネガティブな表現となっています[10]。

(2)材料の腐食の問題
(1)文献[12]ブログ Lequiosphere より引用
「腐食に対してはハステロイ-Nが有望とのことですが、その強度の限界が930℃、通常の運転温度が700℃では余裕がありません。福島原発では冷却が不十分になり、炉心温度は一時1600℃を突破しました。トリウム溶融塩炉も商業規模になれば、何らかの事故で冷却が不十分になれば簡単に1,000℃を突破するでしょう。そうなると炉心や配管が崩落して即廃炉、です。ハステロイ-Nの融点は1,370℃しかなく、危なっかしくて使えません。」

(2)文献[13]ウエブサイトTogetter より引用「トリウム溶融塩炉の溶融塩は、非常に腐食性が強いはずなのだが。私は色々な溶融塩を使ってきたが、大概、強酸化性を持ち、316ステンレスもやられたが。基本的に白金か磁製のるつぼで使っていた。だから、トリウム溶融塩炉が安全という話はとても信じられない。」
「トリウムサイクルでしたら、溶融塩をつかっている限り、これも今世紀中は無理ですよ。僕は、溶融塩を随分使いましたが、白金以外はどの様な金属でも激しく腐食させてしまいます。」

★上記の問題点に対する意見
オークリッジ研究所ORNLにおける熔融塩実験炉MSREの容器や配管の材料である、ニオブ1%添加のハステロイ-Nの704℃での熔融塩に対する実験の結果、耐腐食性に問題のないこと、および熔融塩実験炉MSREでの650℃運転におけるハステロイ材料およびグラファイトへの耐腐食性が十分あることが報告されています[15]。

また、ハステロイ-NについてHAYNESの技術情報[17]によりますと、ハステロイ-NがORNLで発明されたこと、704℃から871℃における熔融塩での耐腐食性試験において、その腐食率が1年間で1/1,000インチ(0.0245mm)以下であること、融点は1,300℃から1,400℃であること、などが記載されています。
なお、わが国においてもハステロイ系合金で、1200℃に達する高温中でも優れた強度と耐酸化性を持つ材料が開発されています(MA-X:三菱マテリアル)。

熔融塩炉(FUJI-Ⅱ)では、炉本体から中間熱交換器に送られる燃料塩の温度が700℃となっています。この温度は全体のシステムの中で最も高い温度です。ORNLの熔融塩実験炉MSREの運転で行われたように、制御装置によって温度は安定に保たれるので、強度限界が930℃でも問題はないと言われています[14]。

しかし、ハステロイ-Nの構造材料としての機能が発揮できる限界温度の最高値がどれ位か、また熔融塩炉の温度制御が失われた場合の余裕の温度幅はどれ位が妥当か、などの条件によりこの問題への解答は異なるのではないかと思われます。

(3)強いガンマ線の問題 文献[12]ブログ Lequiosphere より引用
(1)テロリストにより狙われやすい
トリウム熔融塩炉では、トリウム232に高速中性子(1.6MeV)を吸収させてウラン233をつくり、このウラン233の核分裂によってエネルギーを得ます。この過程で生成する核種が強力なガンマ線を放出するという特徴があります。自爆テロを行うようなテロリストが放射線を恐れるとは思えませんし、強い放射線により、少量でもばら撒いた際の社会へのダメージを大きくできることから、むしろテロリストにより狙われやすいという見方もできるのです。

(2)メンテナンス性の悪化
強いガンマ線は、むしろ通常運転時のメンテナンスを困難にするという欠点が大きくなります。液体燃料を循環させるトリウム溶融塩炉では炉心や配管中にわずかでも溶融塩が残っていれば強い放射線を出します。配管には曲がりがあり、炉心の構造も、燃料をきれいに抜くことはほぼ不可能に見えます。配管や炉心から強い放射線が出ていると、点検が困難になります。溶融塩の腐食の問題から、炉心や配管は30年も持つはずがなく、途中で更新しなければなりませんが、その作業も、ガンマ線の問題から人は近づけません。また、配管の減肉やひびを検査する測定器も同じように放射線によるノイズで正しい評価が困難になると予想されます。
それは人が入れないというだけの問題に留まりません。ロボットを入れるにしても、目となるカメラから得られる映像は放射線のノイズで不鮮明になりますし、センサー自体が損傷する可能性もあります。ロボットによるメンテナンスすら困難になる可能性があるのです。

(3)軽い事故でも即廃炉
トリウム溶融塩炉を推す人たちは燃料漏れの事故に対する見通しが信じられないほど甘いです。トリウム溶融塩炉の燃料漏れの深刻さを、軽水炉の冷却水漏れと同じか、それ以下と捉えているようにすら見えます。実際には、トリウム溶融塩炉の燃料漏れ事故は、燃料の腐食性と材料強度の限界から、軽水炉の冷却水漏れ以上に発生しやすい"事象"です。漏れた燃料は炉心や配管の下に設置した受け皿で受けることになっていますが、燃料は落ちたところで冷え、固体になります。その場で強い放射線を放出し続けるので人もロボットも近づけません。処理も補修もままならないまま、原子炉は停止、そのまま廃炉になります

★(1)「テロリストにより狙われやすい」に対する意見
核不拡散・核テロリズムについて
文献[18] NPOトリウム熔融塩国際フォーラム「トリウム熔融塩原子炉”FUJI”」より引用
「ガンマ線が弱く監視困難なプルトニウムなどがほとんど生成しないので、この問題を大きく改善できます。運転中の燃料塩から233Pa(プロトアクチニウム233、半減期27日)のみを手早く化学分離し、純粋な233U(ウラン233)を造る事は原理的に可能ですが、高放射能で極めて実行困難です。我々の溶融塩炉内で造られるU(ウラン)には必ず232U(ウラン232)が随伴します。232Uからは核壊変の結果、2.6 MeVという異例に高いエネルギーの極めて強いガンマ線を出す208Tl(タリウム)が生まれます。このガンマ線は、鉛25cm、コンクリート1mをも貫通し、容易に致死量となります。
 燃料サイクル内のUは、常に232Uで充分に汚染されています。また、必要であれば天然のU(238U)で20%以下に稀釈変性し、核爆発不能にもできますから、軍事的・テロ的利用に不向きで、監視・検知などにも決定的に有利です。」

数時間で死に至るガンマ線を放出するウラン233を、テロリストが盗み出して利用しようとするかどうか容易に判断できません。しかし、少なくとも危険物質の流出が、監視・検知しやすいと言うことは明確だと思います。プルトニウムが放射するアルファ線は、紙1枚で遮蔽できるため運搬は容易であり、しかも検出され難いと言った点から見ると、やはり強力なガンマ線を放射するウラン233の方が、プルトニウムより管理しやすいと言えるのではないでしょうか。

★ (2)「メンテナンス性の悪化」に対する意見
トリウムを核燃料として利用する場合、生成するウラン233にはウラン232を副産物質として生じ、これがアルファ崩壊してタリウム208を生成し、強力なガンマ線を放射します。この現象は、トリウムを「固体核燃料」として利用する場合は大変な困難となります。製造時のガンマ線の遮蔽が大変になり、化学処理費、再加工費および輸送費が、極めて高額となるからです。このことがネックとなって、トリウム利用は広まらなかったと言われています。しかし、「液体燃料」である熔融塩核燃料では、遠隔操作で濃度調節、輸送などが行えるので、遮蔽には全く困難がないとのことです[4]。

また熔融塩炉では、「液体一相で核反応・熱輸送・化学処理媒体の全機能を発揮」するため、超高度で複雑な諸機能を一液相で行えるので「原子炉構造が単純化」され「理想原発」となっています。このように炉構造が単純なため、運転・保守管理・修理等が極めて容易となります[20]。

さらに、提案されているトリウム熔融塩炉FUJI-Ⅱの炉システムの主要な特徴としては[4]、

(1)炉本体容器は開閉しない単純なタンクで、内部の黒鉛減速材は取り替えない。
(2)FUJI系列では増殖を必要としないため連続化学処理装置がないので、炉の付属施設は単純なものとなる。
(3(燃料塩が循環する一次系全体は、塩の融点の500度以上に保たれた高温格納室に収められる。

したがって、余熱用のヒータ、保温材、熱電対温度計などは不要となります。こうして装置の表面が、余分な機器が付属しない「裸」の状態なので、高温・高放射性であっても遠隔操作・ロボットによる保守点検や修理に不便がなくなります。

実際にORNLでは、ウラン233を用いた熔融塩炉の実験MSREを行い、長時間の運転でも保守管理・修理等のメンテナンス面において特段の不都合はなく成功していること[15]からも文献[4]の説明が理解できます。

★(3)「軽い事故でも即廃炉」に対する意見
材料の耐腐食性で学習したようにハステロイ-N(1%ニオブ添加)は、熔融塩に対して十分な耐食抵抗性を有しているので、問題点として指摘されているような燃料漏れの確率は少ないと判断されます。また、万が一燃料塩が漏れたり、あるいは燃料塩が付着しても安定したガラス状に固化した状態では、放射性物質のエアロゾル放散が少ないと言う大きな利点があります。当然、修理等はロボットによる遠隔操作となりますが、これは放射性機器体系では当然の要請であり、熔融塩炉では構造が「単純」なのでロボット技術を有効に活用できます[20]。
したがって、「軽い事故でも即廃炉」という事態にはならない判断されます。

(4)その他の課題
トリウム熔融塩炉の材料の耐腐食性や強力なガンマ線の処理に関する問題点の他に、さらに重要な課題として軽水炉よりもより安全性に優れている「トリウム熔融塩炉発電」を、如何にして実現に漕ぎつけるか、と言っ
課題があります。ここではそうした観点からの問題提起についてまとめてみました。

(1) 放射性廃棄物の処理(文献[3]より引用)
「軽水炉発電の代わりをトリウム熔融塩炉が担うと仮定すると、トリウム熔融塩炉のすぐれた長所は認めるにしても、低レベル放射性廃棄物は発生します。軽水炉で発生したプルトニウム他を消滅させても、軽水炉の放射性廃棄物とトリウム熔融塩炉から発生する放射性廃棄物の両方の処分に目途をつけておかなくてはなりません。でないと、トリウム熔融塩炉でも 「トイレなきマンション」 になりましたでは許されません。」

(2)夢の高速増殖炉と同じか(文献[5] より引用)
「その多胡氏は「---古川には失礼だが、熔融塩炉は実現されていない故に良く見えると言う面が無いわけではない、例えば高速増殖炉だつて机上の議論だけなら、夢の様な話であった。しかし実際動かしてみると、現実は厳しい物だつた」とのべ、(29.トリウム熔融塩炉の問題点)を提起している。」[8]

(3)実験炉・原型炉での実施の必要性(文献[5] より引用)
「この熔融塩炉の行き詰まりを打開するには、その一つとして、やってみなければ分からないと言う技術的問題がないかどうか、確かめる必要がある。先ず、その為の実験炉・原型炉を立ち上げることだ。・・・・・・・・・・・致命的な問題は起こらないと思うが、もし起きれば再起不能・後戻りは出来ないと言う。・・・・・・・
勿論古川博士はそれぞれについて技術的な所見を持っておられるが、FUJI等の実際のプラントを動かして評価する必要があることは言うまでもない。」

(4)「本質安全:inherent safety」の設計思想が必要(文献[21] より引用)
「熔融塩炉原発は、欠点のない技術のように書かれている。現時点ではそうなのかもしれないが、多分、開発が進めばこれまでに見えなかった様々な困難に直面する事になるだろう。そしてその時は、本質安全(inherent safety)という設計思想の元で学者とエンジニアが力を合わせて解決していく必要があるだろう。
見極めの時間と資金が欲しい。今、国内での原発建設は非常に難しい。実験炉が海外になるのも止むを得ない。」


おわりに
これまで5回にわたって「トリウム熔融塩炉」について学習し、それが極めて優れた原子炉であることを理解しました。しかし、それと同時にそれほど優れた「トリウム熔融塩炉」が、何故、実際に稼働していないのだろうか? また、何故、話題にも上らないのだろうか? などの疑問がありました。前回の4回まででこれらの疑問にある程度の解答が得られたように思います。
最終回の第5回では、「熔融塩炉の現状と今後の課題」について検討し、熔融塩炉の材料の耐腐食性や運転によって生成する強いガンマ線の対策等について学習しました。また今後、トリウム熔融塩炉の実現のための方策についても学びました。
これまでの学習から得られた結論として、核拡散防止、核兵器の完全廃絶およびプルトニウムの使用禁止の観点から、まずはトリウム熔融塩炉の実現のための第1段階として、古川氏が提案[4]する「フッ素化熔融塩化学処理法」を用いた使用済み核燃料の消滅処理およびプルトニウムの燃焼消滅を目的とした、「熔融塩炉FUJI-Pu」の完成を目指すのが、最も現実的と思います。さらに第2段階として熔融塩炉FUJI-Puの完成後に、順次、ウラン233を増やして次第にトリウム熔融塩核燃料サイクルに移行し、最終段階として「熔融塩炉FUJI-U233」による発電へ移行するのが、最良のプロセスと考えますが如何でしょうか?

これまでの学習によってもなお晴れない疑問は、「やはり熔融塩炉を排除する見えない力があるのではないか?」と言うことですが、最近の「原子力委員会資料」によりますと、電力会社の公募研究により大学と共同して、熔融塩炉の安全性基礎研究が行われるとのことです[19]。これが呼び水となって新しい流れが大きくなることを期待しています。

このシリーズを終えるにあたり、「トリウム熔融塩実験炉」の一日も早い実現を心から願います。
                                                    以上


<参考文献>
[1] 吉岡律夫:熔融塩炉の安全性について、2011.3.4.
http://msr21.fc2web.com/safety.htm
[2] 亀井敬史:トリウム溶融塩炉 -安全、安価で小型
軽水炉と太陽光の弱点補うトリウム原子炉(2)
WEDGE Infinity(メールマガジン)、2011.9.27.
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1509#infinity-servicetool
[3] 小森三郎:大転換すべき原子力政策、ブクログのパブー(電子書籍)
http://p.booklog.jp/book/26473/read
[4] 古川和男:原発安全革命、文春新書、2011
[5] 鈴木 篁:原子力の核燃料サイクル問題を問う(長期講座)
2.第四世代原子力候補のトリウム熔融塩炉が何故取り残されているのか(2005.03.23) http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/info00b2.htm
[6] 谷口正次:さよならウラン、こんにちはトリウム、
米中印が続々参入…福島原発事故で浮上した未来の原発
日経ビジネスオンライン、2011年4月7日(木)
[7] 谷口正次:中国が独占意欲「トリウム原発」とは、
米国はしたたかに“潜行”、日本の出遅れ感は大きい
日経ビジネスオンライン、2011年3月3日(木)
[8] 多胡敬彦:日本発次世代エネルギー 挑戦する技術者たち、学習研究社、2002
[9] Wikipedia(日本語版、英語版)
[10] 原子力百科事典ATOMICA : 第4世代原子炉の概念 (07-02-01-11)
http://www.rist.or.jp/atomica/index.html
[11] 原子力百科事典ATOMICA : トリウムを用いた原子炉 (03-04-11-01)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?
Title_Key=03-04-11-01
[12] Lequiosphere:「トリウム熔融塩炉について」、2012.10.31.
http://lequiosphere.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html
[13] Togetter: http://togetter.com/li/256264、
[14] イケメン評論家の大学生新聞:「トリウム熔融塩炉に対する批判」に対する批判
http://ikeron.blog.fc2.com/blog-date-201301-1.html
[15] OAK RIDGE NATIONAL LABORATORY :Molten-Salt Reactor Program
Semiannual Progress Report, August, 1976
http://www.energyfromthorium.com/pdf/ORNL-5132.pdf
[16] OAK RIDGE NATIONAL LABORATORY :Molten-Salt Reactor Program
Semiannual Progress Report, August, 1976
p.45, 6.1.2 Semiproduction Heats of 2% Titanium-Modified Hastelloy N
That Contain Niobium.
[17] HAYNES International : Technical Information 2002,
http://www.haynesintl.com/pdf/h2052.pdf
[18] NPOトリウム熔融塩国際フォーラム「トリウム熔融塩原子炉”FUJI”」
http://msr21.fc2web.com/index.html
[19] 吉岡律夫・木下幹康:トリウム熔融塩炉の開発の現状について、
第17回原子力委員会資料 第2-2号,2013.5.9.
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2013/
siryo17/siryo2-2.pdf
[20] 古川和男:エネルギー技術革新を求めて50年
―核拡散のない液体燃料トリウム熔融塩炉―
東海大学紀要工学部、Vol.49, N0.2, 2009, pp.1-10
http://www.miraikoso.org/before/32miraikoso/youyuuenro/Yuuenro_
toukaidai.pdf
[21] 上智大学・濱出武治ホームページ、http://www.me.sophia.ac.jp/~hamade/index.htm, 2011.7.26.
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by wister-tk | 2013-06-30 16:47 | 環境学習など

安全な原発:トリウム溶融塩炉ってなあーに?(5)

はじめに
第1回から第3回までの学習により「トリウム熔融塩炉」が、現行の「軽水炉」に比較して安全性、経済性、環境適合性、核不拡散等々の点において優れていることを知りました。また、さらにこれほどの素晴らしい「トリウム熔融塩炉」が、「注目されない」と言うよりはむしろ「無視あるいは拒絶されてきた」と言う事実を知りました。そこで前回第4回では、
(1)「熔融塩炉」は、何故、現在使われていないのでしょうか?
(2)当初から発電用原子炉として「熔融塩炉」の選択肢はなかったのでしょうか?
(3)何故、「軽水炉型」が採用されたのでしょうか?
の3つの疑問について学習しました。

その結果を要約すると、「熔融塩炉」は、
  ①核兵器の生産に適していない、
  ②企業にとって利益がない、さらに
  ③熔融塩炉に対する理解不足や政策的な意図があった、
などとなります。

しかし、ここまで学習してきて、さらに大きな疑問が生じてきました。それは「トリウム熔融塩炉」が、言われているように本当に優れた原子炉であるならば、何故これほどまでに無視・拒絶されるのだろうか?と言う疑問です。

●核兵器生産のためであればプルトニウム生産専用の原子炉を、発電用とは別に作ればいいのではないでしょうか?あえて発電とプルトニウム生産を同じ原子炉で行なわなくてもよいと思いますが・・・
●また企業が儲けのために「トリウム熔融塩炉」を嫌ったというのも納得できないような気がします。企業が国の施策に利潤追求のみの目的で、そこまで深く立ち入ることはできるのでしょうか?
●さらに「トリウム熔融塩炉」は、本当に優れた原子炉なのでしょうか?本当にそれ自体に問題はないのでしょうか?
新たな疑問が止めどなく湧いてきます。
今回の第5回(最終回)では、こうした点についてできるだけ詳しく学習したいと思います。
と言うことで前回第4回の残り「(4)熔融塩炉の現状と今後の課題はどうなっているのでしょうか?」
について学習します。


(4)熔融塩炉の現状と今後の課題はどうなっているのでしょうか?

1.次世代原子炉としての熔融塩炉の位置づけ
現在稼働中の最新の原子炉は、いわゆる第3世代の原子炉です。さらに次世代の原子炉として第4世代原子炉の研究開発が行われています。
第4世代国際フォ-ラムGIF*が目指す「第4世代原子炉」とは、「第1世代」(初期の原型炉的な炉)、「第2世代」(現行の軽水炉等)、「第3世代」(改良型軽水炉、東電柏崎刈羽の改良型沸騰水型軽水炉[ABWR]等)に続いて、米国エネルギー省が2030年頃の実用化を目指して、2000年に提唱した次世代原子炉の考え方です。

第4世代国際フォ-ラム(GIF:Generation IV International Forum):第4世代原子炉の選定作業を国際的な枠組みで進めるため、2001年7月に結成された、日本、米国、英国、韓国、南アフリカ、フランス、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、スイスの10か国で構成される国際的協議会。2030年までの実用化を目指す。

「第4世代原子炉」は、燃料の効率的な利用、核廃棄物の最小化、核拡散防止の確保などエネルギー源としての持続可能性を有し、さらに炉心の損傷確率を極限まで低減し、緊急時においても原子炉の敷地外へはまったく影響しないなど、安全性・信頼性の向上と他のエネルギー源とも競争できる高い経済性を満足する原子炉とされています
[10]。

GIFで採用された6種の「第4世代原子炉」は以下のとおりですが[10]、この6種のなかに「熔融塩炉」も含まれています。

(1)超臨界圧軽水冷却炉
東大、東芝を中心にわが国が研究を主導している形式です。現行実用中の軽水炉より高圧の超臨界圧 22.1Pa以上では蒸気と水の分離が必要ないので、原子炉で加熱した冷却水で直接タービンを駆動して発電できます。

(2)ナトリウム冷却高速炉
酸化物燃料と先進湿式再処理方式を組み合わせた形式と、金属燃料と乾式再処理を組み合わせた形式があります。いずれもわが国が高速増殖炉(FBR)サイクル実用化戦略調査研究で検討している形式です。特に前者の代表的な概念としては、「もんじゅ」開発を踏まえてJNC(核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構))が検討中の大型ループ型炉があり、原子炉構造のコンパクト化、ループ数削減、一次系機器の合体等による経済性向上を特徴としています。

(3)鉛合金冷却高速炉
冷却材として液体の鉛や鉛とビスマスの合金を使う減速材のない高速炉です。このカテゴリーには、鉛冷却大型炉、鉛ビスマス冷却小型炉、および鉛ビスマス冷却バッテリー炉の3種類の形式があります。

(4)超高温ガス炉
900℃以上の原子炉出口温度で運転できる超高温ガス炉で、高効率発電とともに熱化学水素製造などの高温プロセス利用が可能です。わが国では、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)がHTTRの建設・運転をベースとして研究開発の推進を主導し、電気出力30万kWの高温ガス炉ガスタービン発電システムを設計検討しています。また、米国やフランスでも高温ガス炉技術の開発を進めており、これらの技術は以下のガス冷却高速炉にも活用できます。

(5)ガス冷却高速炉
提案されている概念は、電気出力288MWeのヘリウム冷却炉で、出口温度は850℃、熱効率48%です。炉心はピンまたは板状燃料を用いたブロック型をベースとしています。フランスを中心に検討が進められていますが、燃料形状、炉心構造など、概念の基本部分についてはまだ未決定で、燃料サイクル技術を含めて開発要素が多いです。

(6)溶融塩炉
液体のトリウムおよびウランのフッ化物を燃料として黒鉛炉心チャンネル内を流れる熱中性子炉です。炉心で発生した熱は中間熱交換器により外部に取り出します。核分裂生成物は液体燃料から連続的に除去され、アクチニドはリサイクルされます。この炉は、電気出力1000MWeの大型炉で、運転圧力は低圧(0.5MPa以下)ですが、液体燃料の温度は700℃であり、高い熱効率が達成できます。ただし、構造材料開発等の課題があり、第4世代原子炉の中では実用化は最も遅れる見通しです [10]。

このように「溶融塩炉」は一応「第4世代原子炉」の6種に含まれてはいますが、かなりネガティブな表現になっています。


2.各国における熔融塩炉あるいはトリウム利用の研究開発の推進状況
主に文献[7]と文献[19]から引用して、各国における「トリウム熔融塩炉」あるいは「トリウム利用」に関する研究開発推進の状況を概観してみたいと思います。

米国の状況:[7][19]
オークリッジ国立研究所ORNLの本格的な熔融塩実験炉MSRE が、1965年6月に臨界に達した後、1969年12月まで事故皆無の26,000時間の運転を達成した実績があります。したがって米国においては、トリウム熔融塩炉の技術基盤は、既に確立していることは明らかです。しかしその後、1976年に熔融塩炉に関する研究が全て中止されてからは、研究開発が停滞してしまったことはすでに学習しました。ところが、最近になって研究開発が行われていると言われています。

2002 年にGIF(第4 世代原子炉)の6候補の1 つとして選定され、米国はオブザーバーとして参加し、フッ化物塩冷却高温炉FHRを提案しています。フッ化物塩冷却高温炉FHR とは、高温ガス炉で開発された黒鉛被覆燃料を使用し、冷却にフリーベ(LiF-BeF2)熔融塩を使用する原子炉であり、2000 年代中頃からORNLの概念設計をもとにMIT 等の大学により個別要素研究(材料腐食、熱流動、燃料交換)が進められてきたものです[19]。

また、中国のトリウム熔融塩炉の開発計画に協力するという趣旨で、米国エネルギー省と中国科学院との間で協力協定が締結された、とのニュースがありました。ただ現時点では、協力範囲は、上記のフッ化物塩冷却高温炉FHR に限定されているようです[19]。

米国では、エネルギー保障および米国発の技術である熔融塩炉を活用したいという観点から、トリウム熔融塩炉を見直そうという風潮が見られ、トリウムエネルギー連合という民間団体が、トリウムエネルギー会議を2009年以降、毎年開催しています[19]。

さらに熔融塩炉開発に関連する事項として以下のような事実が知られています[7]。

(1)2009年「トリウム原子力の研究・開発を促進するための法案」が議会に提出された。
(2)2010年度の米国海軍国防予算の中に、トリウム原子炉の研究を進めるための費用として10億ドルが計上された。
(3)米国のトリウム資源は豊富で、高品質トリウムの大鉱床がアイダホ州とモンタナ州で見つかった。確認埋蔵量は、最新のトリウム鉱物年報によると92万5000トンと推定され、オーストラリアの30万トンを抜いて世界第1位である。この資源量は、全米のエネルギー需要をトリウム原子炉で数世紀の間まかなうのに十分な量であるという(REUTERS 2009/3/17の報道による)[7]。
(4)米国の核燃料企業のライトブリッジ社は、世界で広く使用されている軽水炉原子炉でのトリウム利用研究を行っている。同社は、2009年7月、世界最大の原子力エネルギー会社、仏アレバ社とウランを燃料とする軽水炉にトリウム燃料サイクルを利用する研究について協力協定を締結した[7]。

フランスの状況:[7][19]
1980 年代に仏原子力庁と仏電力会社とは熔融塩炉を検討し、1990 年代に、プルトニウムやマイナーアクチナイド(放射性廃棄物)の消滅処理の目的でAMSTER(Actinide Molten Salt Transmut ER)プロジェクトを実施しました。当初は米国の熔融塩増殖炉MSBRと同様に黒鉛減速で、フリーベ(LiF-BeF2)熔融塩を採用していました。
その後、2000 年代になって、高速炉型の熔融塩炉はプルトニウムやマイナーアクチナイド(放射性廃棄物)の消滅に向いているのではないかと言う期待から、減速材の黒鉛を用いない高速中性子型熔融塩炉(MSFR)を検討対象とし、主にアクチナイド消滅炉として国立研究所 が研究していると言うことです。今の所、概念設計の段階であり、一部、基礎的な実験を開始した模様と言われています[19]。
2009年7月、米ライトブリッジ社と仏アレバ社が、軽水炉向けトリウム燃料協定締結し、また、トリウム溶融塩炉の研究開発も推進中と言われています[7]。

カナダの状況:[7][9]
カナダは1962年に重水炉型のCANDU炉(カナダ型重水炉)を自主開発し、1968年に国内で営業運転を開始しました。1983年に韓国・月城発電所で、また2002年には中国・泰山発電所で営業運転を開始しています「9」。CANDU炉は、基本的には熔融塩炉ではありませんが、トリウムを燃料として利用するために研究が行われており、軽水炉型あるいはCANDU炉などにトリウムと低濃縮ウランを使用する研究開発が推進されています。2009年7月、中国企業連合とトリウム燃料協定に調印しました。なお2010年上海にある原子力発電所のカナダ製重水炉でトリウム実装試験を実施したと言われています[7]。

ノルウェーの状況:[7]
世界第3位のトリウム資源埋蔵量を持ち、軽水炉型あるいはCANDU炉(カナダ型重水炉)などにトリウムと低濃縮ウランを使用する研究開発を行っています。2006年にはトリウム・イニシアチブ(検討会)を発足させました。また、2008年にはエネルギーに関する国全体の大きな議論を行ったと言われています。そして、トール・エナジー社(Thor Energy)が設立され、同社は軽水炉でのトリウム燃料利用に向けた共同技術開発のための国際コンソーシアムを確立するため、2010年6月にパリで「軽水炉用トリウム・プルトニウム混合燃料に関する技術会合」を開催しました[7]。

ロシアの状況:[4][7][19]
ロシアは、1970 年代にフランスが開発を始めたフッ化物熔融塩による核燃料処理技術を引き取ってFREGAT 法と命名し、チェコと共同でFREGAT-2 として開発を進めました。また、1980 年代からは原子炉についても、プルトニウムやマイナーアクチナイド(放射性廃棄物)の消滅炉として研究しています[19]。
ロシアは熔融塩炉の研究開発に熱心であり、パイロツトプラントの建設を推進していると言われています。

1983年には、クルチャトフ研究所のアレクサンドロフ所長が、熔融塩炉の共同開発を古川氏に提案しました[4]。
1990年代からクルチャトフ研究所で、米トリウムパワー社と軽水炉向けトリウム燃料の開発実験を実施しています[7]。
1991年には理論実験物理研究所ITEPが、古川氏らのグル-プと加速器熔融塩増殖炉AMSBの共同研究を開始しました。また、1995年にはロシア技術物理研究所ITPが、mini FUJIの共同開発を提案しました。さらに1997年には日米ロ三国共同開発計画に合意し、ロシア技術物理研究所ITP内にmini FUJIの建設用敷地を内定しました[4]。

中国の状況:[4][7][19]
中国はウラン資源に恵まれていませんが、レアーメタル生産の過程でトリウムを生成するためトリウム資源が豊富であり、国を挙げて熔融塩炉の研究開発を推進しています。中国は2009年9月にトリウム利用に関する国際会議を内モンゴル自治区の包頭で開催しました[7]。また、2010 年3 月にトリウム熔融塩炉プロジェクト開始を政府決定し、その後、2011年1月に中国科学院が公式発表を行ないました[19]。

最初の実験炉はフッ化物熔融塩を冷却剤にのみ用い、球状で固体の黒鉛被覆粒子燃料による熔融塩冷却炉で、2017 年に臨界の予定と言われています。また、同時に開発を進めているトリウムフッ化物熔融塩を液体燃料として用いた実験炉(mini FUJI 相当の設計仕様)は、2020 年頃に臨界の予定とのことです。中国では、この液体燃料熔融塩炉をトリウム資源利用と廃棄物最小化の本命としていると言われています。
さらに2020 年以降には、電気出力10Mwe クラスの発電実験炉を建設し、2030 年頃に電気出力100Mweの発電実証炉を建設するとしているとのことです[19]。

中国における政府レベルのトリウム原子力計画に関する全体構想は明示されていませんが、日本の小型熔融塩炉FUJI計画と燃料サイクルの概念THORIMS-NES(トリウム熔融塩核エネルギー協働システム[4])と類似の計画と考えられています[19]。中国は、現時点で「熔融塩炉」の研究開発に最も熱心な国のひとつと言われています。

欧州原子力共同体・ユーラトムの状況:[19]
ユーラトムでも熔融塩炉に関して研究開発を推進しています。ユーラトムは、フランスとともにGIF-MSR の正式加盟国です。GIF-MSR は、GIF(第4世代国際フォ-ラム)の熔融塩炉(MSR)に関する運営委員会で、2005年から活動しています。なお、ロシアと米国はオブザーバーであり、日本(トリウム熔融塩国際フォーラムITMSF)も不定期ですがオブザーバーとして参加しています。
現在、GIF-MSRでは、下記の2つの案が提出されており、熔融塩技術のような共通要素については協力する可能性がありますが、炉型が異なるのため検討は別個に進められている模様とのことです。

①欧州の提案:燃料も冷却材も熔融塩の炉:MSFR (Molten-Salt Fast Reactor)
②米国の提案:固体燃料・熔融塩冷却炉:FHR (Fluoride-salt-cooled High-
temperature Reactor)

一方、欧州での国際協力に関しては、欧州各国はユーラトムの枠組で国際協力し、これにロシアも参加しています。
また、EU関係機関で作成された資料によりますと、2030年に20-50MWの実験炉を建設し、2040年に原型炉を建設すると言う、かなり長期の計画となっているようです[19]。

チェコの状況:[7][19]
チェコは、トリウム溶融塩炉の技術開発で世界をリードしている国のひとつと言われています。国立研究所において、主にフッ化物熔融塩による核燃料再処理技術(FREGAT)を研究しています。チェコは軽水炉の使用済み燃料をトリウム溶融塩炉用燃料に変換する装置を世界で唯一所有しています[7]。再処理したプルトニウム やマイナーアクチナイド(放射性廃棄物)を熔融塩炉で消滅処理することを最終目的としているので、燃料塩と同じフッ化物塩の方が都合がいいためと言われています。
また、2000年頃に、チェコの重工メーカー・スコダ社(SKODA)でフッ化物熔融塩ループ(循環回路)を建設しましたが、実験結果などは公表されていないとのことです[19]。その後、2008年に溶融塩炉メーカーであるスコダ社(SKODA)が、ロシアのガスプロムに買収されました[7]。

インドの状況:[7][19]
インドは、中国と同様にウラン資源はないのですがトリウム資源は豊富なので、エネルギー自給の目的でトリウム固体燃料炉の研究を永年続けてきたことで知られています[19]。
軽水炉型あるいはCANDU炉(カナダ型重水炉)などにトリウムと低濃縮ウランを使用する研究開発を行っています。また、圧力管型重水炉をベースに開発を進めていて、現在は既存の原子炉1基をトリウムによる燃料転換することに決るなど、トリウムを利用していると言われています[7]。

今後も、従来の固体トリウム燃料炉の路線は維持する模様ですが、2012 年に熔融塩炉研究計画を開始したとのことです。燃料も熔融塩とした熔融塩炉の方向に進む可能性は高いと言われています[19]。
2013 年の国際会議「トリウム熔融塩会議(CMSNT2013)」の論文集には、講演論文の他にインドにおける熔融塩炉や乾式再処理技術の過去の論文も収録されており、熔融塩炉についても以前から研究を行っていたことがうかがわれます[19]。

韓国の状況:[19]
2012年11月10日の中国新聞記事によりますと、韓国は、米韓原子力協定の改定に関連して、今後、乾式再処理の研究を米韓共同で進めるとのことです。これと関連するかは明確ではありませんが、韓国の蔚山科学技術大学が、2013 年1月に熔融塩炉国際ワークショップを開催し、今後、熔融塩炉の研究を進めると言われています[19]。

日本の状況:[4][19]
古川和男氏らのグループが、1980年に加速器熔融塩増殖炉AMSBを開発しています。また、古川氏らのグループは1985年にFUJI(燃料自給自足型小型原発)― 単純小型密閉式熔融塩炉を開発しました。提案された10~30 万kWe の小型熔融塩炉のFUJI は、オークリッジ研究所ORNLが提案した連続化学再処理用の設備を省略し、さらに黒鉛の交換を行わなずに30 年間の運転が可能であり、燃料も自給自足できる原子炉です。また、この小型熔融塩炉のプルトニウムの生成量は、軽水炉の1/1000 以下であり、超ウラン元素(放射性廃棄物)の生成も軽水炉の1/25 とのことです。

また、運転開始当初は、軽水炉から取り出されるプルトニウムを初期燃料として熔融塩炉を起動しますが、大規模な熔融塩炉導入が必要な場合は、今後開発する「陽子加速器による燃料増殖施設(ADS)」を用いて、トリウムから大量のウラン233 を製造します。これらを統合したシステムとして「トリウム熔融塩核エネルギー協働システム(THORIMS-NES)」を確立しました。

2008年に「NPO法人トリウム熔融塩国際フォーラムITMSF」が設立され、世界13 カ国の熔融塩炉研究者を結集し、教育・研究・広報活動を実施しています。また、ITMSF は、2005 年にGIF(第4世代国際フォ-ラム)の熔融塩炉(MSR)に関する運営委員会・GIF-MSR グループが設立されて以来の不定期オブザーバーとして、海外と情報交換を行なっています。さらに中国科学院・上海応用物理研究所(SINAP)とも交流し、上海ではワークショップも開催しています。また2011年には、チェコにおいてmini FUJIの共同開発事業を開始しました。その他、国内では電力会社の公募研究により、大学と共同して熔融塩炉の安全性基礎研究が行われるとのことです[19]。
(次ページへ続く)
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by wister-tk | 2013-06-30 16:30 | 環境学習など