<   2013年 12月 ( 1 )   > この月の画像一覧

COP19の結果はどうなったの?


はじめに
 2013年11月11日から23日までポーランド・ワルシャワでCOP19(第19回 国連気候変動枠組み条約締約国会議)、CMP9(京都議定書第9回締約国会合)が行われました。2012年のカタール・ドーハで行われたCOP18での「ドーハ合意」(詳しくはこのブログの2012年12月号にあります)に基づいて懸案事項が討議されたのです。

今回のCOP19の主要な目的は、以下の二つでした。
(1)2020年以降の「新たな国際協力の枠組み」づくりにあたって、2015年、フランス・パリのCOP21での最 終的な合意に向けて各国の意見を集約すること
(2)2020年までの先進国の温暖化ガスの削減目標の上積みを設定すること(この目的はまったく議論され  なかったと言われます)

                     COP19 開会式
a0120033_22493792.jpg

    出典:http://commons.wikimedia.org/wiki/File:COP19_opening_(23).JPG

COP19での主な合意内容

★新たな国際枠組みの構築
 結果として「新しい枠組み」については、2015年(COP21、フランス・パリ)で合意して、2020年の発効に向うことを確認しました。
 米国、中国および途上国を含めたすべての国が、COP21よりも十分早い時期に、準備できる国は2015年の1月から3月までに温室効果ガス削減の自主的な削減目標(nationally determined contribution)を提出することとしました。(約束:comitmentsではなく貢献:contributionとすることで、拘束力を持たない単なる目標に過ぎないとの解釈が可能となると言われます)また、その目標が妥当なものかどうかを第三者機関が評価する仕組みとなっています。
 新しい枠組みの焦点だった「自主的削減目標」については、当初においてはEUが2014年、日本および米国が2015年、途上国が2015年以降と言った提案をしていましたが、結局、今回は「削減目標の基準年」や「達成の時期」については議論されませんでした。そのため2014年末にペルー・リマで開くCOP20に向けて交渉を加速する必要があると言われています。

★支援資金に関する決定
 途上国が、温室効果ガス削減の目標を達成するために、必要となる資金の支援を先進国に要請していますが、先進国は2014年の早い時期に途上国に目標設定のための資金を支援することを約束しました。
 途上国への資金の支援については、既にコペンハーゲン合意(2009年、COP15、デンマーク)・カンクン合意(2010年、COP16、メキシコ)で、2020年までに支援資金を拠出すると言う合意に基づいて、作業計画を策定することがCOP19での焦点のひとつでした。
 2020年までに1000億ドルの拠出が着実に確保されるよう、途上国は、途中段階の2016年までに「700億ドルなど中間目標」を定めるよう求めました。しかし先進国の多くはこれに強く反対したため、結果的には先進国に対し、2014年から2020年の間に2年に1度の頻度で、気候資金の規模増加に関する戦略や方法について報告をすることを求められました。

★気候変動による損失と被害
 気候変動による「損失と損害(Loss and Damage)」は、貧困国や気候変動の影響を著しく受ける脆弱な国々(島嶼諸国など)が、以前から強く促進を求めている課題であり、2012年のCOP18の「ドーハ合意」において新たな制度的メカニズムを創設することが決定されていました。今回はそれを受け、温暖化に伴う自然災害による「損失と被害」に対処する「ワルシャワ・メカニズム」と呼ばれる新たな専門組織を新設し、そしてその執行委員会を創設することに合意しました。
 同メカニズムでは、条約の下で、損失と損害の問題への対応の実施を促進する役割を担い、損失と損害に関する知見の収集や調整、支援の促進などの機能を果たすことになると言われています。
a0120033_22515031.jpg

                                           2013 FUJII Tak

 以上、COP19の合意内容のち主な3つの項目についてまとめてみまました。この結果を以下に示す、2012年のCOP18での「ドーハ合意」と比べてみますと、ほんのわずかの進展しか見られないことが判ります。

*******************************************************
「ドーハ合意」の内容詳しくはこのブログの2012年12月号をご覧ください

〇新たな国際枠組みの構築
・2021年からの新たな国際規約を、2015年までに構築することを参加各国が再確認しました。
・中国と米国を含むすべての国が参加することで合意されました。
・「新たな法的枠組み」の原案を、2014年末のCOP20以前に準備する。
・これによって検討素案を2015年5月までに作成することを目指す。

〇支援資金に関する決定
・途上国を支援するため、先進国に対して2020年までに支援資金を、年間1,000億ドルにまで拡大するよう求めています。
・提出期限は、2013年のCOP19(ポーランド・ワルシャワ)までとなっています。
・なお、長期資金に関する検討作業は、1年間延長することとなりました。

〇気候変動による損失と被害
・気候変動による損失と被害に関しては、貧困国や気候変動の影響を著しく受ける国々(島嶼諸国など)からの訴えに応えて、先進国はCOP19において「気候変動による損失と被害の軽減に取り組むための国際的な機構制度」を設立することになりました。
*******************************************************


 つまり「新たな国際枠組みの構築」については、あらためて「2020年の発効に向うことを確認」し、2015年に合意するための手順がかなり具体的になったと言えるでしょう。しかし、その内容が「約束」ではなく「貢献」と言う努力目標となっている点が気がかりです。特に中国やインドなどの新興国や途上国は、温室効果ガス削減の「自主的な削減目標の設定」自体に反対しているので、実際に2015年のCOP21(フランス・パリ)で合意がなされるかどうか、大変心配なところです。

 途上国への「支援資金に関する決定」については、前回と同様に長年の懸案事項にもかかわらず、支援資金に関して多くの先進国の反対のため、今回も具体化はされませんでした。結果的には先進国に対し、2014年から2020年の期間において2年に1回、支援資金の増加方法や計画について報告をすることを決めたに過ぎません。

 また、「気候変動による損失と被害」については、COP18においてすでに「気候変動による損失と被害の軽減に取り組むための国際的な機構制度」を、COP19で設立することに合意していました。したがって、これを受けて今回は、「ワルシャワ・メカニズム」と呼ばれる新たな専門組織を新設し、その執行委員会を創設することに合意したわけです。前回よりは若干進展したと言えるでしょうか。


〇日本の新目標への非難
 ところで日本は、今回のCOP19でどのような役割を果たしたのでしょうか?日本は今回の会議において、「2020年の温室効果ガスの排出量を2005年比で3.8%削減する」と言う目標を発表しました。この3.8%削減と言う数字は、京都議定書で基準年とする1990年比に換算すると、3.1%の「増加」に相当すると言われていますので、削減目標ではなく逆に「排出増加目標」と言うことになります。この目標水準は、25%削減するというこれまでの削減目標を覆すものでり、京都議定書の第1約束期間(2008年~2012年)での削減目標である6%削減からも大きく離れる極めて異常な値と言えると思います。

 この日本の新しい目標は、途上国はもちろんのことEUなどの先進国も、名指しで非難したと報じられています。オーストラリアもCOP19で削減目標の引き下げを発表しましたが、日本はオーストラリアともども、途上国が責任追及の対象とする先進国の中の悪の代表格のように攻撃されました。そして国際環境NGOの「気候行動ネットワーク」からは、COP19参加国の中で「交渉の推進に最も後ろ向きな国」として「特別化石賞」が贈られました。大変不名誉なことです。

 こうした状況に対して会議に出席した石原環境大臣は、次のように述べて日本の環境技術面での貢献を、アピールして理解を求めています。「これから数字を上乗せし、優れた環境技術で世界の削減に貢献する準備がある。しっかり説明していくことが最大の仕事」と。


おわりに
 日本は京都議定書の第1約束期間(2008年~2012年)での削減目標とした6%削減については、2012年にその義務を達成しています。この実績は大変重要であり、他の国々に対して日本の地球温暖化防止への取り組む姿勢ならびに高度の環境技術の保有を明確に示しています。
 一方、今回のCOP19で発表した「2005年比で2020年に3.8%削減(1990年比で3.1%増加)」と言う数値は、原子力発電所が稼働しない状況では、ある程度やむを得ないと言うこともありますが、「3.8%」の算出根拠を示していないこともあって、あまりにも国際的な状況にそぐわない決定と思います。

 こうした状況の根底には、わが国の将来にわたるエネルギー基本計画が確定さてれていない点にあるのではないかと思われます。原発の再稼働をどうするのか、将来的に原発による発電の比率をどうするのか、省エネをどのように進めるのか、再生可能エネルギーの比率をどこまで上げられるのか、等々を十分に検討しなければならないと思います。
 そのうえで、京都議定書を世界に送り出した国として、また削減義務を果たした実績ある国として、地球規模の環境問題である温暖化防止対策に対して、日本が負うべき国際的な責任を十分に踏まえたうえで、わが国の将来にわたる社会・経済の動向を明確に示し、いま国としてなすべき努力がどの程度なのかなど、明確に問題の設定を行ったうえで、重要な「目標の設定」を行うべきではないでしょうか。今後の目標の改善に心から期待したいと思います。
                                                   以上
[PR]
by wister-tk | 2013-12-30 23:10 | 海外の情報