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地球温暖化はどうなっているの?(IPCC第5次報告書から)

はじめに
  国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の会議が、2014年3月25~29日、横浜市で行われました。その成果として、第2作業部会のテーマである地球温暖化の「影響と適応」に関する、新しい報告書が3月31日に公表されました。この報告書では、温暖化の影響は避けることができず、またその程度にしたがって自然災害などの大規模化や食糧危機、さらに生きものの大量絶滅につながる可能性が示されました。
 さらに4月13日には、ドイツのベルリンにおいて第3作業部会「気候変動の緩和」が、温室効果ガスの削減策に関する研究成果をまとめた報告書を公表しました。この報告書によると全世界の温室効果ガスの排出量を21世紀末までにゼロにする必要があること、また、エネルギーの転換などの大変革によって、これを達成することが可能であることを示しています。
 なお第1作業部会「温暖化の科学」の報告書は、すでに2013年9月に公表されています。

                図―1 IPCC第3作業部会報告書の表紙
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 今回は、IPCCの第5次評価報告書のうち、最近公表された2つの報告書についてその内容を学習しようと思います。

1.第2作業部会(影響と適応)報告書の概要
 報告書の要点は3つあります。[1]

①今後の温度上昇は避けられないため「適応」の準備をしなければならないこと、
②21世紀末の気温上昇が4℃になってしまう場合と、2℃に抑えられる場合では、予測される影響に大きな相違があること、
③「適応」を行えば影響を少なからず軽減することができるが、4℃までも気温が上昇する場合は、「適応」も不可能となるケースが多くなること、

         図―2 IPCCが予測する温暖化シナリオ
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    RCP8.5:気候変動対策(温室効果ガスの排出削減)をまったく行わなかった場合、
    RCP2.6:徹底的に行った場合、
    RCP4.5、RCP6.0:2つの中間の場合を含む4つのシナリオ
     出典:地球環境研究センターニュース 2014年4月号 [Vol.25 No.1]

 そして温暖化の影響はもはや仮定の話ではなく、水資源や農作物、生態系などすべての大陸と海洋で「影響が現われている」といいます。(前回の「影響をうけつつある」という表現よりも断定的になりました)

〇21世紀末に4℃になった場合に温暖化の影響を受ける主要なリスク分野として、8つの分野を挙げています。[2]

 ◆海面の上昇や高潮などによって沿岸部で大規模な被害を受けること
 ◆大都市部では洪水による被害が増大すること
 ◆電気や水道など社会インフラが異常気象によって機能を停止すること
 ◆特に都市部では熱波による死亡者が生じ健康被害が増大すること
 ◆高温や干ばつなどによって食料生産が減少しその供給が途絶すること
 ◆水不足に伴う農作物減産によって農村地域の経済的被害が増大すること
 ◆海洋生態系の損失によって漁業生産の減少が増大すること
 ◆陸域や内水生態系の損失によって自然の恵みの喪失をもたらすこと

〇さらに内戦などの暴力的衝突を増加させ、国家の安全保障政策にも影響を及ぼすといいます。

          図―3 地球温暖化、世界の最悪のシナリオ
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     出典:大阪エコライフ地球温暖化対策地域協議会 <http://o-ecolife.com/>

 詳しくは「第2作業部会報告書」[3]を参照してください。
<http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial
=24277&hou_id=17966>

2.第3作業部会(気候変動の緩和)報告書の概要[4][5]
 報告書によると全世界の排出量は現在も増加の傾向にあり、排出削減に本格的に取り組まなければ、21世紀末に気温は3.7℃~4.8℃上昇するとしています。地球環境の致命的な激変を避けるためには、産業革命前と比べた気温の上昇を2℃以内に抑える必要があるとされています。
 気温上昇を2℃以内に抑えるには、全世界の排出量を2050年には2010年比で40~70%削減し、2100年には「ほぼゼロかマイナス」にしなければならないとしています。

 以下に報告書のポイントを列挙します。

〇温室効果ガス排出量の約65%が、化石燃料と工業過程から排出されるCO2で占めている。
〇過去から現在までに排出した人為的CO2の累積排出量のうち、その約50%は最近の40年間で排出している。
〇温暖化対策を現在以上に行わない場合は排出量は増加し、21世紀末には約4℃前後まで上昇する可能性が高い。

〇2℃以内に抑えるためには、2050年には排出量を2010年比で40%~70%削減しなければならず、2100年には排出量をゼロかマイナスにしなければならい。
〇現在以上の温暖化対策を遅らせて2030年まで放置すると、2℃以内に抑えることが非常に困難になる。
〇電力の脱炭素化は経済性の高い削減方法なので、2050年までに電力に占める再生可能エネルギーなどの「低炭素エネルギー」の割合を30%~80%に引き上げることが必要である。

〇石炭の使用が世界の脱炭素化を妨げてきたので、石炭を最新鋭のガス火力やコジェネに代替していくことによって、排出量を大幅に削減可能である。また「二酸化炭素の貯留(CCS*)」の開発と実用化に大きな期待を持っている。
〇2℃以内に抑えるための対策に必要な経済的コストは、経済成長の伸び率を年0.04~0.06%%押し下げる程度である。
〇排出量を大幅に削減するためには投資の流れを変えなければならず、投資を化石燃料から再生可能エネルギー等へシフトすることが必要である。

 詳しくは「第3作業部会報告書」[5]を参照してください。<http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18040>

*CCS:二酸化炭素の回収・貯蔵 (Carbon dioxide Capture and Storage, CCS)、二酸化炭素の貯留とは、気体として大気中に放出された、あるいは放出される直前の二酸化炭素を人為的に集め、地中・水中などに封じ込めること、また、その技術のことである。
 回収方法として代表的なものの1つが、火力発電所や工場などで燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素を回収するもの、つまり排出源から効率よく回収を行いそれを貯蔵する方法である。[出典:Wikipedia]

         図―4 二酸化炭素の貯留(CCS)
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    出典:東洋エンジニアリング htpp://www.toyo-eng.co.jp

おわりに
 今回はIPCCの第5次評価報告書のうち、第2作業部会(影響と適応)と第3作業部会(気候変動の緩和)の2つの報告書について、その内容を学習しました。まとめとしては、

①地球温暖化現象が仮定のことではなく現実の問題として認識されたこと、
②地球環境を維持するために21世紀末で気温上昇を2℃以内に抑えなければならないが、現状の抑制対では極めて困難であること、
③気温上昇が21世紀末で4℃前後まで上昇した場合、地球環境は壊滅的な影響を受けること、
④地球温暖化の抑制策は、現行以上の対策を早期に実施すべきあり、新技術の開発としてとくにCCSの実用化が地球を救うと考えられること、

 ここで学習したIPCCの第5次評価報告書の結果は、COP20(2014年12月、ペルー・リマ)(第20回 国連気候変動枠組み条約締約国会議)およびCOP21(2015年12月、フランス・パリ)における「京都議定書」に代わる「新しい国際枠組」の構築に活かされることが期待されます。(COPの流れにつてはこのブログの2013年12月30日号をご覧ください

<参考文献>

[1]WWFジャパン:IPCC横浜会議:温暖化の影響と適応の報告書を発表、2014.3.31.
       http://www.wwf.or.jp/activities/2014/03/1194531.html
[2]朝日新聞:2014年4月1日、朝刊、p.3
[3]環境省:気候変動に関する政府間パネル(ICPP)第5次評価報告書・第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)の公表について、平成26年3月31日
        http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17966
[4]WWFジャパン:IPCCが「温暖化対策についての政策」の報告書を発表、2014.4.13.
       http://www.wwf.or.jp/activities/2014/04/1196913.html
[5]環境省:気候変動に関する政府間パネル(ICPP)第5次評価報告書・第3作業部会報告書(気候変動の緩和)の公表について、平成26年4月14日
       http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18040
                                                  以上
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by wister-tk | 2014-05-28 10:31 | 環境学習など