<   2014年 09月 ( 1 )   > この月の画像一覧

「高温ガス炉」ってなあーに?

はじめに
現行の軽水炉に代わるより安全な原子炉として「高温ガス炉」が話題となっています。冷却材として軽水炉が水を使うのに対して、高温ガス炉では不活性なヘリウムガスを使います。ここでは主に安全性の観点から、高温ガス炉について、軽水炉と熔融塩炉と比較しながら学習したいと思います。


 軽水炉、高温ガス炉、熔融塩炉の比較


          軽水炉           高温ガス炉              熔融塩炉
核燃料:    濃縮ウラン         二酸化ウラン            トリウムフッ化物
燃料被覆材: 金属被覆管(燃料棒)  セラミック4重被覆燃料粒子   熔融塩に溶解
冷却材:      軽水           ヘリウムガス            熔融塩
冷却材温度:  300-350℃       900-1,000℃          700℃
減速材:      軽水            黒鉛(炉心構造材)       黒鉛(炉心構造材)
出力規模: 150万kWe程度大型化 15-30万kWe小型モジュール化、1万-30万kWe
発電方式:   水蒸気発生タービン駆動 ガスタービン発電        水蒸気発生タービン駆動
発電効率:    30%程度         50%以上 44%程度
熱の利用:     なし            工業的利用可能         工業的利用可能
炉心溶融:     可能性あり        生じない             生じない
大量放射能放出: 生じる           生じない             生じない
水素・水蒸気爆発:可能性あり        非常に起こりにくい      生じない
機器の腐食:    問題ない         問題ない            問題あり
高レベル廃棄物: 大量に生成する     殆ど生成しない        殆ど生成しない
放射性廃棄物処理機能:なし         なし               あり

「高温ガス炉」とは
「軽水炉」は、金属被覆管を使用し、冷却材には水(軽水)を用いていることから、原子炉から取り出せる温度は300℃程度に制限され、蒸気タービンによる発電効率は30%程度に過ぎません。

一方、「高温ガス炉」は、炉心の主な構成材に黒鉛を中心としたセラミック材料を用い、核分裂で生じた熱を外に取り出すための冷却材にヘリウムガスを用いた原子炉です。このため「高温ガス炉」は、耐熱性に優れたセラミック材料の使用により1000℃程度の熱を取り出すことができます。また「ガスタービン発電方式」が採用でき、45%以上の発電効率を得ることができます。さらに、発電以外にも化学工業等のさまざまな分野で高温の熱を利用できます。

高温ガス炉の燃料に用いられている4重被覆のセラミック燃料粒子はきわめて耐熱性が高く、1600℃と非常に高温でも破損しないと言われています。炉心を構成している黒鉛材料の熱容量が大きく、異常が起きても炉心の温度変化が緩慢であることから、配管が破損して冷却材のヘリウムガスがなくなるような事故が起きても、炉心で発生する熱は原子炉の容器表面から放熱されることにより自然に除去され、燃料が破損する心配はないと言うことです。すなわち、どんな場合でも、炉心溶融や大量の放射能放出事故が起きる恐れのない、きわめて安全な原子炉と言われています。
出典:(独法)日本原子力研究開発機構 資料「高温ガス炉とは」より
http://www.jaea.go.jp/04/o-arai/nhc/jp/data/htgr_what/data_htgr_what.htm

高温ガス炉のしくみ
a0120033_2228942.jpg

出典:朝日新聞デジタル2014.11.28.;http://togetter.com/li/750821

「高温ガス炉」への疑問
これに対して「高温ガス炉」の安全性に疑問を呈する論調も見られます。
      出典:http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-74c4.html

①ヘリウムを原子炉核燃料の冷却材に使っているからといって、「核分裂反応が自動的に止まり」というのは「なんじゃらほい」である。そんな虫のいい話があるのかよ、ということだ。

②原子炉及びその配管から大量に漏れ出して「冷却材喪失事故」ということはありうるだろう。あるいは核燃料が何らかの理由で「暴走事故」(勝手に核反応が爆発的に増大すること)を引き起こすかもしれないが、そんなときでも「核分裂反応が自動的に止まり」などということなのか。

③「核燃料を空気で自然に冷却できる」についても、ヘリウムガスを1000度まで温度上昇させる膨大な核燃料の熱量をどうやってかわしながら、空気でもって原子炉炉心を自然に冷却できる」などと言えるのだろうか

④高温ガス炉の原子炉炉心で発生する中性子によって、このヘリウムガスが放射化ないしは原子核反応を起こして、危険な物質に物理的に変化することはないのか。もしありうるとするのなら、とてもじゃないが、安全などとは言えそうにない。 

⑤従って、高温ガス炉が軽水炉(沸騰水型、加圧水型)よりも安全性が高いなどとは、現段階ではとても納得のできることではない。

⑥「一方、扱う温度が高く原子炉内の材料の耐久性など技術的に難しい点も多い。」 この点は高温ガス炉のポイントの一つである。

などです。


おわりに
産経ニュース(http://www.sankei.com/life/news/140825/lif1408250026-n1.html)によると、
 「東京電力福島第1原発事故の教訓を受け、過酷事故のリスクが低い次世代の原子炉「高温ガス炉」が脚光を浴びている。放射性物質の放出や炉心溶融などが起きないとされ、2030年の実用化を目指して実験が進んでおり、国は研究開発を積極的に推進していく方針だ。」

とのことです。

しかし、「高温ガス炉」の安全性と経済性については、「トリウム熔融塩炉」」との比較検討は見られません。「初めに高温ガス炉ありき」の感がぬぐえないのは私だけでしょうか?
軽水炉の場合と同様に複雑な構造とすることにより、さらに高額な器材の交換や高コストのメンテナンスを必要とするような構造システムとすることで、受注企業の利潤を上げるための仕組みではないか、と疑いたくなりますが皆さんは如何ですか?(米国において軽水炉から熔融塩炉に変換しようとする政府の方針に対して、熔融塩炉では利益が上がらなことを理由に、原子力関連企業が議会で猛反対したことは、よく知られている事実です)
[PR]
by wister-tk | 2014-09-28 20:15 | 環境学習など