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COP20はどうなったか?

はじめに
地球温暖化対策を検討するCOP20(国連の気候変動枠組条約第20回締約国会議)が、2014年12月1日から14日までの日程で、ペルーのリマで開催されました。COP20では、京都議定書に代わる2020年以降の新たな国際的なルールづくりについて協議が行われたのです。結果はどうなったのでしょうか?COP19からの経緯を踏まえて学習したいと思います。

1.COP19での合意とその課題
(1)新たな国際枠組みの構築
2013年11月にポーランドのワルシャワで行われたCOP19(このブログの2013年12月30日号を参照してください)では、最大の課題である「新たな国際枠組みの構築」に関して、焦点だった「自主的削減目標」については、当初、EUが2014年、日本および米国が2015年、途上国が2015年以降と言った提案をしていましたが、結局、COP19では「削減目標の基準年」や「達成の時期」については議論されず、COP20に先送りされました。
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(2)支援資金に関する決定
 COP19では、途上国が、温室効果ガス削減の目標を達成するために必要となる資金の支援要請に対して、先進国は2014年の早い時期に途上国に目標設定のための資金を支援することを約束しました。途上国への資金の支援については、既にコペンハーゲン合意(2009年、COP15、デンマーク)・カンクン合意(2010年、COP16、メキシコ)で、2020年までに支援資金を拠出すると言う合意に基づいて、作業計画を策定することがCOP19での焦点のひとつでした。しかし、途上国の求める目標設定に対して先進国の多くはこれに強く反対したため、問題はCOP20へ持ち越されました。

(3)気候変動による損失と損害
気候変動による「損失と損害(Loss and Damage)」に対する対策は、貧困国や気候変動の影響を著しく受ける脆弱な国々(島嶼諸国など)が、以前から強く促進を求めている課題であり、2012年のCOP18の「ドーハ合意」において新たな制度的メカニズムを創設することが決定されていました。COP19ではそれを受け、温暖化に伴う自然災害による「損失と被害」に対処する「ワルシャワ・メカニズム」と呼ばれる新たな専門組織を新設し、そしてその執行委員会を創設することに合意しました。しかし、損失と損害を著しく受ける国々の要求に対する具体策は先送りされました。
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           <出典:COP20ホームページ>

2.COP20での合意事項
(1)新たな国際枠組みの構築
(a) 2015年合意文書案:
2015年のCOP21で議論し採択するための新枠組みの「2015年合意文書案」(「新たな枠組みの交渉テキスト案の要素」)を2015年5月以前に作成すること
(b) 排出削減目標:
各国は、温室効果ガスの排出削減目標を「COP21までの十分早い時期に、出来れば3月までに」提出すること、また2020年以降の各国の排出削減目標を提示する際に提供する情報の内容等を定めたCOP決定を、「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for Climate Action)として採択
(c) 排出削減目標の引き上げ:
2020年までの各国の排出削減目標の引き上げについて、「専門家会合」による後押しの制度化等を目指し検討したが合意出来ず
(d) 報告書の公表:
事務局は2015年10月1日までに提出された排出削減目標を分析し、11月1日までに報告書を公表すること
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(2)支援資金に関する決定
先進国から途上国への資金支援の見通しを明らかにすることが検討され、途上国への資金支援として緑の気候基金の拠出額が100億ドルを超え、これを歓迎する旨のCOP決定を採択
(3)気候変動による損失と損害
「気候変動による損失と損害」については、COP19 で設立に合意した「ワルシャワ国際メカニズム」の執行委員会の2カ年作業計画、委員構成および手続きについて合意

3.日本の立場
COP20で会議をリードした米国や中国などとは対照的に、日本はほとんどその存在感を示すことが出来なかったと報じられています。COP20の主要な議題は、排出削減目標の策定にかかわるものでしたから、福島第一原発の事故以来、わが国の新たなエネルギー政策の策定が放置された状態のなかで削減目標など策定できるはずもなく、EU等の閣僚から2015年3月までに目標を示すよう催促されるなどの醜態をさらす結果となったようです。

これは明らかにわが国のエネルギー政策、とくに原発政策や再生可能エネルギーを含めたエネルギー構成が確立されていないことに起因していることは明らかです。この事態は既にCOP19において顕在化していて、将来への向けたエネルギー政策の早期の確立が求められていたことでした。COP20の合意においては、削減目標をCOP21までの十分早い時期に提出すること」とし、また「事務局は2015年10月1日までに提出された排出削減目標を分析し、11月1日までに報告書を公表すること」としています。さらに先進7か国(G7)首脳会議が6月に予定されていますので、遅くとも6月までには削減目標を提出しなければならないことが指摘されています。

わが国は世界における主な排出国の一員であり、しかも排出ガス削減の技術においても世界に貢献しなければならず、京都議定書の場合のように新たな枠組みの構築においても、リーダーシップを取らなければなりません。そのためには削減目標を早期にしかも高い目標レベルで提示し、今後の交渉を有利に進めることが必要と思われます。

おわりに
COP19の合意事項を復習し、またその残された課題がCOP20でどうなったかを学習しました。さらに日本が排出削減目標の提出に遅れをとっており、国際社会における存在感が一段と薄れている状況も理解できました。かって「京都議定書」を提示して世界をリードし、25%削減を宣言した当時の勢いは今はありません。

他の国の温室効果ガスの排出削減目標案としては、米国が26~28%(2025年に2005年比で)、EUは40%(2030年に1990年比で)、ロシアは25~30%(2030年に1990年比で)、その他、スイス50%、ノルウェー40%、メキシコ22%などとなっています。COP19以降の日本が提示している当面の目標値は、3.8%(2020年に2005年比で)としていますが、当然のことながらまったく問題にならないことは明らかです。環境省部内では米国並みの26~28%程度でなければ、他国の納得は得られないのではとの懸念が示されているとのことです。ちなみに他国が日本に求めている削減目標の数値は、2030年に2010年比で30%程度と言われています。

日本が実際にどれだけ排出削減目標を設定できるかの試算では、エネルギー構成比率や省エネ推進の程度によって結果は異なり、2030年に1990年比で10~70%と大きな開きのあることが知られています。気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に抑えると言う国際目標の達成に貢献できるよう、わが国もエネルギー政策を早期に確立し削減目標を確定することを期待したいものです。

<参考文献>
1.COP20ホームページ:<http://www.cop20.pe/en/>
2.環境省:国連気候変動枠組条約第20 回締約国会議(COP20)京都議定書第10 回締約国会合(CMP10)等の概要と評価、2014年12月14日 <https://www.env.go.jp/press/files/jp/25615.pdf>
3.環境省地球環境局:COP20の結果及び日本政府の対応、2015年1月 
<http://www.o-cdm.net/network/activity/occf/occ2014/occ2014-2.pdf>
4.国立環境研究所ホームページ:<http://www.nies.go.jp/event/cop/cop20/20141214.html>
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by wister-tk | 2015-01-25 20:52 | 海外の情報